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「はっ!これはカジキマグロ…!」
元親に近場の市場まで連れてきてもらった
そこは賑わっていて、あらゆる店の呼び込み声が止む事は無い
「ははッ。そりゃ漁村が近ぇからな。新鮮だぜ」
いつもの格好で元親は市場を歩いて居る
その隣りを凪は陣取り、奥州と違う市場。といっても凪が見た事があるのは城下町あの賑わいだけなので比べ様は無いのだが
「元親様」
「お!四月(しづき)じゃねぇか」
元親を呼び止められた声の方向へと振り向いていた
それをちらりと、凪は見たが目の前にある物が楽しくてしょうがないので気にして居ない様子だ
「オルゴールだぁ…!!」
はて、この時代にオルゴールなぞ世界に存在したかなと凪は思ったが、まぁ世界が違うので気にしない
「おじさん!あけてもいい?」
「どうぞ」
螺子を巻いて蓋を開ける
ポロン、ポロンと曲が流れて来た
「…知ってる」
この曲は
幼い頃母親が歌っていた曲
子守歌だ…
「こいつぁ、珍しい品物だな」
「お、元親様お目が高い!こいつぁ貰いもんなんですがね、不思議な絡繰りなんですよ」
「音が鳴る絡繰りか」
「絡繰りじゃなくて、これオルゴールっていうんですよ元親さん」
「おるごぉる?」
「(絶対今の発音平仮名だよね)
螺子を巻くと曲が聞こえる箱ですよ」
手にして居るオルゴールを、じぃと見つめる凪
やっぱり聞いた事が有るこの曲
「あの、幾らですか?」
なんだか買わなければいけない。そんな気がした
「え?こいつぁ貰いだがそこそこ価値はありそうだからなぁ…」
店主は頭を掻いた
こう言う所はやはり商人
足先から頭の先まで順繰りに見て客の品定めをしている
「1両」
「高っ!」
「げ、そんなにすんのか」
うーん
一応沢山お金は貰ってあるから買っちゃおうかな…
高いけど
「お待ちになって」
そう考えて居たら、四月と呼ばれていた女性がこちらへと歩いて来た
「少しばかり高いのでは?貰いものなのでしょう?」
「だが価値は変わらねぇ」
「…ふぅ、仕方ありませんね」
ぽそりと彼女は言ったのを誰も聞いては居なかった
「『貰ったもので、利益を得ようなんてしない事です。これでお譲りなさい。彼女に買われるべきものですからね』」
と言った瞬間、店主は頷いた
店主に銭を渡すと、彼女は振り向きニコリと笑う
「銭で話をつけました。お金頂けます?」
「あ、はい」
と凪はお金を渡した
「確かに。ふふ、可愛らしい方ね」
彼女は最後にぽそりと何かを呟いた
けれども聞こえなかった
「元親様もすみに置けませんね」
「行っておくがこいつぁ客人だ」
「存じてますよ。伊達の方でしょう?丘から帆船を見ましたから」
女は頭を少し垂れ、お辞儀をする
「私、四月と申します。お見知りおきを」
「はぁ」
「いつか、私は貴方と深い関わりを持つかも知れませんね」
「お、出た。予言かそりゃ
「先詠ではありませぬよ、元親様。これは私の希望が多少入った予感です」
女は、紫電の髪を揺らした
あちらの世界ではこんな色の地の髪色は無い
まぁゲームの世界なので、きっとなんでも有りなのだろうが
人が賑わう所から少し外れた所へ、三人は歩く
暫く歩くと小高い丘
そして、広がる空に
果てしない水平線が見えた
蒼と青の境界線
「うわぁ…!!」
「ふふ、あそこが元親様のお城になりますね。ほら、帆船が見えるでしょう?」
四月の指差す先には確かに伊達の帆船が居た
海原に浮かぶ帆船
なんだか絵にしてしまいたい
「相変わらず此所は変わらねぇな」
「変わらないようにしているのは元親様でございましょう?」
「まぁお前の親父殿との約束だからな。ここはこのままで良いんだよ」
腕を組み、元親は水平線を見据えた
確かにこの景色を壊してしまうのは勿体ない
まぁ景色云々関係ないのだろうが
「凪もそう思うだろ?壊してしまうのは勿体ないってさ」
「え、あ。はい」
「ふふ、あ。もう…!!あの子ったら」
四月は海を見て、駆け出した
四月が一歩一歩進む度、草がガサガサと音をたてる
「申し訳ありません、元親様、凪様。弟が海で泳いでいるみたいなので、此所で失礼いたします…!!」
振り向き、お辞儀をしたため紫電の髪がパサリと地面に向かい垂れた
「…不思議な方とお知り合いですね…、元親さん」
「おう、あいつぁこの丘にあったある家の娘でな。まぁ所謂神の血筋って奴だな」
「神の、血筋?」
「婆娑羅技とは違った不思議な力を持ってる家系なんだ」
「不思議な力、…ちから」
ふと不思議な力と言われ、自分をこの世界に飛ばした力の事を思い出した
「といってもそんな力見た事ねぇがな!ほんの先の事を、夢に見たりするだけらしいぜ?」
んであんまり当たらねぇんだけどよ!と元親が笑った
「そう、なんですか」
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「一夜、一夜!!」
「姉貴?」
岩の上を、弟の名前を呼びながら駆け抜けると海から弟を引き揚げる
「あれ?姉貴、その目…」
「あぁ、使うなって貴方には言ったのに使ってしまったわ。だって、彼女に必要な物を高値で売り付けようとしていたのだもの」
膝に肘を乗せて、手の平に顎を乗せる
四月は、びしょ濡れになっている弟をつつきながらクスクスと笑った
「でも、それだけよ?ふふ、可愛らしい子よ?私達がどうするかは決まったわね」
岩場に寝そべる一夜は空を仰ぎ見た
綺麗な空
今の姉の瞳と同じ色
手を伸ばす
「運命、か。まだ条件は揃って無いから俺が彼女にお目にかかれる日は、かなり遠いな」
「でも、いつかその日は来る」
だから
「私達は遠い国に居ても彼女を思い続けねばならないのよ」
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