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「そういえば、成実さん、匡二何処ですか?」
ふと状況が落ち着いた時、居るはずの彼を思い出した
そういえばいない、と
「…怒らねぇ?」
「何かあったんですか?」
「…武田の領内にいる。あはは―、…上田城に連れてってくれるっつー忍びに遭って、……置いて来た」
「置いて来たぁ!?」
「しかも置いて来た事、その時忘れてて⋯」
「あああ、当たり前です!一人旅!?匡二…!!」
成実は懐を漁ると紙を取り出した
それは手紙のようだ
「あ、でも、心配いらねぇよ!猿飛から文が届いててさ、アイツ上田城まで自力でたどり着いたんだと。んで、暫くなんか上田城の近くの刀工の弟子になるって猿飛から」
「刀工に弟子入り…」
一体数日の間、匡二に何があったのだろうか
経緯を知りたい様な気もするし、知ってはいけないような気がする
「匡二とちゃんと向き合って話したかったのになぁ」
凪はそう言うと上を向いた
サラ、と髪が揺れる
「聞かなきゃいけない事とか、謝らなきゃいけない事とかあるから…」
「悪い…俺が忘れたばっかりに」
成実はしゅん…とした
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「刀工に弟子入りだぁ!?いやまて、それ何処の刀鍛冶だ」
(弟子入りというか、奥州までの路銀稼ぐ為なんだけどなぁ…。そんな事小十郎に言ったら、殺される)
匡二が暫く帰ってこないと言う報告を小十郎にする
畑の世話を手伝っていた匡二は密かに小十郎のお気に入りなのだ
「武田…上田城近くの《寅正》って言う刀匠らしい」
「寅正…聞いた事ねぇな」
「うん。なんかこれから刀を一杯作るから人手が云々書いてあるよ」
「たたら吹きでもやらせるのか…」
「じゃない?素人に水減しとか叩きとか無理じゃん?あとは水汲みとかさ」
刀を作る工程を多分二人は話して居るのだろうが、凪にはさっぱり分からなかった
刀の話しを終えると小十郎は溜め息をつく
眉を寄せて、眉間に皺を作る
「はぁ、まぁ取り敢えず暫くは帰って来られねぇんだな…」
野菜と花どうするか…と小十郎は呟いた
「武田との賊の討伐も近いってのに…」
「賊の討伐?なんだそりゃ」
「あ?なんだ成実。お前政宗様から何も聞いてないのか?」
何も聞いてはいない
小十郎は、事の次第を二人に分かる様に説明した
「数日…ってか一週間以上居なかった間にそんな事が」
「あぁ」
「でも私達武田から周り道も何もしないで、帰って来ましたけど…」
夜盗だったり何だったりは出て来なかった
…別のものに間違われはしたが
「そりゃお前、俺が居たからだろ」
成実はケロリとした顔で言った
「確かに。お前はここいらの武将には知られて居る上、恐れてる奴もごまんと居るからな」
百足の足立を身に着けて戦場を駆け、蒼竜の元《伊達三連傑》にも名を連ね、《武の成実》と恐れられて居る成実
「はぁ、成実さんて強いんですか?」
「お前⋯、俺弱そうに見えんの?」
成実は凪の額を小突くと苦笑した
「いや、幸村さんから成実さんは強いとは聞いてましたけど。恐れられて居る程だとは…。何か恐れられてる様には見えなくて」
「何か傷付く…」
がっくりうなだれると、顔を上げて小十郎と視線を合わせた
「とにかく近々討伐をしに武将何名かと、兵士何名かを武田の領地へと送る。成実お前多分呼ばれるぜ」
「わーってるよ」
成実は欠伸をする
胡座をかき、太股に肘を乗せ、手の平に顎を乗せる
「どういう事ですか?」
「梵はこの討伐には出ない。こんな事ごときに奥州筆頭を出すわけにはいかないから、討伐に向かう武将の一人には、地位的にも実力的にも申し分ない俺が最有力候補って事だよ」
それはつまり…
「成実さん、暫くいないんですね」
「う…」
討伐に行ったら、城を空ける事となる
そう言う事だ
「まぁ政宗様に呼ばれるまで、鍛練しながら待つんだな」
「けっ」
成実は凪と離れたくは無かったが、今回は仕方が無いと腹を括った
「じゃあまた政宗さんの部屋に夜、お世話になろうかなぁ」
凪は、突然そう言った
目が点になる成実
汗がだらだら吹き出して来る
凪の肩を掴み
「え、ちょ、ま。何、お前俺がいない間梵と何…」
「成実さんが実家に帰ってた時、政宗さんと一緒に寝てたんですよ。あ、でもヤラシー意味じゃなくて…あれ?」
成実は居なくなっていた
(こりゃまた思わぬ所からボロが出たな…)
小十郎は密かにそう思った