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びしょ濡れな着物を干して、農民に着物を借りた二人
かなり着心地は悪いが、農民達にとってはこれが普段着なのだ
着替えを完ぺきに終えた成実だが、着ている物が質素なものでも、立ち振る舞い、顔立ち、雰囲気からとても農民には見えない
凪の方は農民に見えなくも無いが、これが育ちの差か、と凪は思う
「どうせならむらの中探索するか」
「⋯!行きます!」
「ん」
と成実は手を差し出した
凪は、少し差し出された手に戸惑うけれど成実は退く気も無く、凪が自分の手を取るまで差し出したままだった
暫くして凪はおずおずとしながら、成実の手を取る
「よしよし」
「…(成実さんてこう言うの恥ずかしげも無く出来るよなぁ)」
「ほら行くぞ」
「う、あ!はいっ」
ギュッと握られた手を引いて、成実は道を歩く
穏やかな陽射
田んぼの畔道を歩く
遠くには森が見え、近くの木々には鳥が止まっている
朝の農作業をする農民がちらほらと見え、湧き水のせせらぎが聞こえる。そんな光景が、凪には新鮮だった
「ありゃ、お前さんら昨日の武士様達じゃ?」
青年が田んぼから顔を上げて、二人に話し掛けた
昨日の、と言う事はあの場所に居たのだろう
そういえば見覚えがある
健康的に日焼けした青年は、汗を腕で拭うと田んぼから上がり二人に近付く
「手ぇなんか繋いで。二人は夫婦なんかい?」
「め、おと?」
「な!なッ」
「メオトって…夫婦?」
「だってすごく…」
「やだなぁ!そんなんじゃないですよ!」
「え…」
凪に否定されて、少し、成実はショックを受けた
「でもそうしているのを見ると夫婦みたいだなぁお前さんら!」
凪が否定しても尚青年は夫婦みたいだと言った
その言葉に凪はきょとん、となる
「い、行くぞ!」
「あ、はい!」
ペコリと青年にお辞儀をして凪は成実に引っ張られ前に歩く
成実の顔は耳まで赤くなっていた
後ろで“お幸せに~”と言う青年の声
成実さんとは別に夫婦でも恋人でも無い
強いて言うなら友達以上恋人未満
そんな関係
そう、そんな関係なんだ
あちらの世界の彼等には“正妻”がいた
多分こちらの世界にもそんな存在が或る筈
当然成実さんにも将来…
「…お」
成実は立ち止まって、こちらに背を向けたまま呟いた
立って居るだけなのだけれど、何か空気が変わった気がした
その言葉に凪は息を呑む
「え…と」
手を頭にもって髪をくしゃりと握る
柔らかな風が二人の間に吹くが、そんな風とは反対な空気が流れる
「あた、しは」
成実は振り返る
その顔はなんとも表現しがたい顔をしていた
悲しいような、怒っているような
それらが複雑に混じりあった顔
「…凪」
繋いだ手を離して
成実は
「おれは、お前が、好きなんだけどな」
「あ、あたしも成実さんは好きですよ」
突然の告白に戸惑う凪
成実の表情は変わらぬままだ
成実は目を細めて苦しそうに笑った
「⋯お前の、その言い方だと、俺とは違う意味の好き、に思える」
違う好き⋯、それはきっと恋愛感情にはならない好きという意味なのだろうか
でも何故か違うんじゃないの?と言われた時胸が、ずきんと痛みを訴えた
私がこの世界の歴史を変えちゃう事になるじゃない
成実さんの正式な奥さんとか、子どもとか
だって私
この世界の人間じゃないんだよ?
何かに飛ばされて来ただけで、本来なら関わりを持たない世界の人間なのに
…でも
今物凄く心が痛い
成実さんに拒絶みたいな言葉を言われて
物凄く痛い…
痛くてしょうがない
成実さん
成実さん 成実さん
なるみさん
痛いよ、
あたしも成実さんが
好きだよ
だけど
答えていいのか分からない⋯
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