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凪が上田城に来て日が経った。最初は緊張していた凪だったが、上田城の女中さんと少しだけ打ち解けたというか、仲良くなった
あんなこんなの話をしては笑ったり怒ったり。会話に花がさくとはよく言ったものだ
今日は何の話しをしようかな、と思っていると、世話係の女中さんが、お髪を触らせて下さいまし!と櫛を持ち出して来た
女中さんは凪の後ろに立つと、その櫛で凪の髪を梳き始める
「少し傷んでおりますね。少々お待ちください」
と隣りの部屋に行ったかと思えば何やら小瓶を手にして居た
「それは?」
「ふふ」
と中の液体を手に垂らして、それを髪に馴染ませると髪がしっとりした
(何なんだろ)
「ふふ、気になります?これは椿のあぶらです」
「あぁ成程」
あちらの世界でも椿の成分を使った整髪用商品はある
確か髪にいいんだっけ
「毎日これをつけて梳けば今より綺麗な髪になりますよ!」
綺麗な髪は殿方も喜びますよ!
と嬉しそうに言った
殿方⋯かぁ
■■■■■■■■■■
ジャリ、ジャリッ
砂利の上をわざと大きな音を立てて歩く
たまに小石を蹴って、小さな放物線を描く小石を目で追う
「このままここにお世話になちゃおうかな…」
しゃがんで、石遊びをする
平らな石を手に取って、そこに石を積み上げるのだ
一段、二段、三段と順調に積み上げられて行く
不安定な積み上げ方では無くピラミッド式な形で積み上げようとしているみたいだ
「ひとつつんでは母のためぇ」
歌も歌ってみる
しかし凪の心中は、空の晴れ晴れとした感じとは真逆でどんよりとした曇り空のようだった
(なんか)
誰も、いない
成実さんも、政宗さんも、小十郎さんも、
いない
ここは確かに居心地はいい
でも、伊達にはあってここには無いものがある気がする
胸の底から競り上がる負の感情
もやもやしていて、だけどぽっかり穴が開いたみたいな。そんな感じ
伊達での日々を思い出すと寂しくて仕方がない
「さ、」
その一言を出してしまえば、きっと脆く崩れてしまう
でも
「なんで、誰も来ないの…?」
来ないのは分かってる
だって自分から飛び出したんだもの。愛想をつかしたに決まってる
佐助さんや幸村さんは、来ると断言したけれど。来てくれるにしても、自分はそこまで好かれているとは思えない
手の甲に、水が落ちた
雨かな?と思って、青空を見上げてもそらは全くの快晴。雨を振らせる雨雲なんて存在していなかった
ではこの水は何処から?と思い自分の顔に指先を運んで見れば…
「……」
自分の涙だった
それに気がつけば壁は脆く崩れるもので、ボロボロと止めど無く涙が溢れてきた
しゃがんで、背を丸めて、顔を埋めて
「うっ、ううっ…!」
泣いて居た
帰ろう、奥州へ
ごめんなさいって言えば許してくれるかな
それとも、もう絶対に家出はしませんって指切りかな
どちらにしても、帰らなきゃ出来ないけれど
「っく、グズッ、かえ、ら、なきゃっ…!ううっ…!」
だけどこんな顔をこの城にいる人に見せれない
きっと、酷くみにくい
泣きやむまでこうしていようかな
ジャリ
ジャリ ジャリ
ジャリ ジャリ
砂の音がした
その後
ゴツン!
頭に衝撃が走った
「~~~~~~ッ!!」
い、痛い!!
頭を多分、というか100%拳骨ではたかれたのが判った
顔を思わずあげてしまう
「誰ですかッ!!
…ッ!」
拳骨をした人に文句を言ってやろうと立ち上がって、振り向いたら
成実がそこに立っていた
かなり怒っている
仁王立ちで相当怖い
「…」
「…」
来て、くれた
でも何だか怒っている様子で
「何か言う事は?」
怖かった
だけどそれでも
「う、あ…」
「あるだろ。言わなきゃいけない事」
成実の姿を見るやいなや、凪は成実に抱き付いた
「いきなり出てってごめんなさい…!ごめんなさいッ…!ぅっ、グズッ」
自分の胸に飛び込んできた凪
盛大に叱ってやろうかと思ったが、泣いている凪を見てそれは萎えてしまった
泣きやまぬ凪の頭を撫でてやる
「ごめんなさい…」
「心配掛けたって判ったならいいさ。いい加減泣きやめ」
目線を合わせ、額をくっつける成実
優しい瞳に凪の涙も引く
「まじで心配したんだかんな」
「ごめん、なさい…」
「凪」
目を伏せて視線を下ろしていた凪の名前を呼んだ
「帰ろう、城に」
「っ…!!はい!!」
次回