2
あなたの名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「まぁまぁッこんなにお汚れになって!どんな道を通って来たんですか、佐助様!!」
「独自の道」
「貴方様だけならまだしも、女子も一緒なのですよ!!とにかく、幸村様の前に上がらせる前に身なりを整えましょう!!」
ささ、と上田城につくなり凪は湯浴みをさせられた
奥州を出て数日。新幹線、車、飛行機等無い時代の交通手段は徒歩か馬だ。佐助の馬に相乗りをし、ここまで来たモノの夜通し走った為色々と汚れたりしていた
「奥州の方はやはり肌が綺麗ですね」
佐助が凪の事を女中どう言ったかは分からないが態度からするに、奥州のどこぞの姫という扱いをされているのが分かる
「お髪もまぁこんなに絹のよう!奥州は、食べ物が違うのでしょうか。羨ましいですわ」
それは小十郎と政宗の献立のお陰だと思う
栄養士なぞいない時代だが、二人の考える献立は実に良く考えられて作られて居た
偏ることも無く、在る程度野菜も取れて居る
この時代・世界に来て凪は実際少し痩せたし(びっくり)、規則正しい生活をするようになったら前より肌も良くなった
「あのぅ、⋯、そんなに飾らなくても結構です⋯」
髪は下ろしたままなのだが、着物がこれまた上等な着物だった
上田城に姫がいるとは聞いた事もないし…
ま、まさか幸村の…!!
「この着物誰のなんですか?まさか真田さんの奥さんの…!?」
「正室の方の事ですか?幸村様に正室・側室はございません。この着物は姫様にと、猿飛様がご用意したものですわ」
幸村を思わせるような真紅の色が入った着物を着させられた凪
奥州の彼等もそうだが、いい生地使った着物を簡単に用意するその金銭感覚に凪は、クラリとくる
生まれは名家だが金銭感覚はどちらかと言えばセレブや金持ちより庶民に限り無く近い。凪はモノの善し悪しを幼い頃から匡二や兄、あまり好いては居ないだろう父親や居なくなった母親から教えられていた
それがまぁ、普通に生きて行くには雑学等と呼ばれるものに入るのだろうが
「さ、終わりました。佐助様?いらっしゃるのでしょう?」
カタ、と音がした次の瞬間佐助は部屋に姿を表した
「あ、似合うね。良かった」
「良かったじゃありません!!申し訳ないですよ!こんないい着物!」
「いいじゃん、細かい事は!!さ、旦那に会いにいこう凪ちゃん」
グイッと手を引かれながら凪は歩く
廊下を歩いて分かる事は政宗の城より草木が多いと言う事
それから…
「椿」
「え?あぁ、椿?」
椿の花がなんでここに…
匡二がこの間言っていた
それは、
椿は散らないから
なんですよ
椿はその形のままボトッと落ちるんです
その様が人の首が飛ぶ様にみえるから縁起が悪いといって、だから武士や侍は椿の木を庭には植えないんです
椿からは油が取れるのに、勿体ないですよね
「椿って武士にとっては縁起がわるいんじゃ…」
「うーん、縁起がわるいんじゃないかって言われればそうなんだけど。ほらうちの旦那アレだから」
と言われて思うのは熱血な彼の事
…あぁ。彼なら縁起がわるいものも撥ね除けてしまいそうだ
「美しいものは美しい、遠ざける事はなかろう!だってさ」
それは確かに彼らしい言葉だった
赤い花は在る意味彼を思わせる色をしている
彼には明るい花等が似合いそうだ
「旦那ー、入るよー?」
ある部屋の前で佐助は立ち止まると、一言言ってから襖を開けた
そこには着替えを今し方終えたのだろう幸村がいた
(身なりを整えてたから)
「お久し振りです、幸村さん」
「おぉ、凪殿!お久し振りですな!佐助から聞いておりましたが、よく我が城へ来られた!」
にこりと笑う幸村
ゲームで着ているあの赤いジャケットみたいな服では無く普通の着物で、だからだろうか幾許か幼く見える
「政宗殿が良く許してくれたものだ。一回断られていたからな」
「あ、半ば家出同然ですけど」
「そうですか、半ば家出同然…何ですとッ!!!!???佐助!?」
「佐助さん、一番重要な事言ってないんですか?」
「あー、忘れてた」
「忘れてたって…」
「い、家出はいけないですぞ!政宗殿や成実殿が心配するに…」
心配所か成実については文を見た後すぐに旅仕度して、匡二と只今甲斐へ進行中
それをここに居る彼らは知る由も無い
「大丈夫だよ、旦那。凪ちゃんがここに来たら絶対黙って無い奴いるから。そいつは絶対迎えに来るし」
だから騒ぐ事は無いよ、と佐助は自信満々にそう言った
「取り敢えず息抜きしたいって言ってるんだし、ね。それに旦那だって凪ちゃんがここに来るの楽しみにしてたじゃん」
「それは…」
「事情はどうあれ、今ちゃんとここに居るんだから。うだうだ言わない!」
くるりと佐助は振り向くと、凪に近付いた
目線を合わせるとにこりと笑う
「じゃ俺様、用事あるから行くね。それまで旦那と何か話しとか⋯、奥州とかの話しとかしながらとかさ」
そう言って凪の頭を撫でる
「旦那ぁー?俺行くから凪ちゃんの事宜しくねー?」
「う、うむ」
その次の瞬間佐助は消えた
暫く二人に沈黙が流れる
「…」
「…」
「この城って幸村さんの城なんですか」
「む、この城⋯というよりはこの周辺一帯、城や土地や民を御館様より預けられたゆえ守っているにしか過ぎませぬ」
守っているだけって…。言葉にすると簡単そうに言うけれどこの戦後乱世、それを通すのが難しいことを凪は知っている
幸村は所謂領主的な役目もやっているということだろう
「…城下町、行って見たいです」
「おぉ!町ですか、ここの民は気さくで良い民ばかり。ご案内致しましょう!」
幸村はそう言うと歩き出す
その後を凪は歩く
幸村の背を見て凪は思った
『迷子になると悪いから』
ほら、と成実はこんな場面の時自分の手を差し出して繋いでいた
(心配してるよ、ね。)
些細な事全てに成実の事が出て来る
馬に乗ってた時も
着物を女中に着させられた時も
(後で謝らなきゃ)
それらに彼が全ている
何をしてても彼を思い出せる
それは、
その気持ちを
何と人は呼ぶのだろう
「甲斐はまだですか」
「う、ウルセェ!!」