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長曽我部元親は匡二を連れて帰りたくて仕方が無かった
匡二は最初は丁寧に断っていたのだが、元親が明日四国に帰るという日に堪忍袋がキレた
「テメェ人が散々丁寧に断ってんだから退けよ。四国なんざ島国の中の島じゃねぇか。田舎じゃねぇか。しかも凪様がいないのに行く訳ねぇだろ。大体俺は海と南の地方が嫌いなんだ。日照時間は長いし、肌焼けるし、ヒリヒリするし、夏あっちーし、磯臭いし。それになぁ、野郎ばっかりのむさくるしい中なんざいられるか!!」
四国の人になんて失礼なことを言っているんだ、この人は!?と凪はびっくりした
流石にこんな匡二を凪は見た事が無い。記憶の中の彼は歳の割に落ち着いていたし、怒るとしても子供じみた怒り方ではなく優しさのある怒り方だった。ちょっとだけドン引きしてしまう
流石のこんな匡二を見て、元親は渋々連れ帰るのを諦めた様だった
いよいよ元親らが帰る日になる
荷物なら何やらで大所帯になっていたが、その中に元親は居た
挨拶のため今は抜けていたが
「じゃあな、伊達政宗」
「Ah、長曽我部」
世話になったと告げたあと、元親は凪の前に立つ
身長が高い元親を見上げる形になったが元親は目線をわざわざ合わせてくれた
「この間はありがとうな。答えてくれて」
「だって言わなきゃ引き下がらなかったでしょう?」
「まぁな。今度雪が溶けたら四国に来いや。夏あたりは熱いけどよ、なかなか良い所だからよ」
ニッと笑う元親
頭をクシャクシャと撫でてきた
「…あ。それから匡二」
元親は匡二の方を見た
「テメェと一緒に引き揚げたテメェの荷物、四国の俺の城にあんだが、どうする?捨ててもいいのか?」
腕を組んでいた匡二はそれを解き、凪の隣りに立った
「馬鹿な事言わないで下さい。送って下さい。あれには大事な道具が入ってますから」
大事な道具?と凪は頭を傾げた
凪の隣りに立っていた(左に成実、右に匡二)成実が凪の腕を小突く
「(こいつ何の仕事してんの)」
「(さぁ?知らないです)」
最後に会った時彼は学生をしていた筈だ
最後彼に会ったのは確か彼が22か21の時。
故に、現在彼がなんの仕事をしているか凪には分からないのだ
「まぁ大事な道具と言っても、趣味で持ち歩いてる種と楽器なんですけど」
「種?」
「楽器って…太鼓とか笛の楽器?」
「あぁ言いませんでしたっけ?私、花屋やってたんですよ。寂しい所に種を蒔いて花を咲かすのが趣味でして。楽器もまぁ⋯趣味ですね」
「って、確か匡二⋯大学は医学部にいたよね。何で⋯⋯」
思い出した
あの人と共に匡二は医学部に在籍していたはず
なのに何故医者じゃなく花屋!?
・
「彼が医者になりましたから。じゃあ、私は違うのになろうかなって。国家試験は受かってましたけどねぇ、辞めました。まぁ専門違うからいいじゃねぇかって言われましたけどそれでも、ね」
同じ職業じゃあつまらないでしょう?
そう言った匡二は穏やかに笑っていた
彼が言った《彼》、そのお凡その見当が凪にはついた
「壊れないとは思いますが丁寧に発送して下さいね?壊れて届いていたら…‥うーん。あ、黒百合を貴方の城近くに時間をかけてびっしり植えに行きますよ」
先程の穏やかな笑みから一転した黒い笑顔で元親に脅しを掛ける匡二
元親はただ頷くしか
なかった
そして別れがくる
「じゃあな、また」
「はい」
「あぁ」
「じゃあな」
南へと帰る彼ら
凪は、ふと思い出した
変える為 にはまだ
足 りな い
みな みへ
南に 人が いる
この後彼らが来た
匡二が来た
元親が来た
声の通りに、南から
「声、か」
あれはなんだったんだろう
声の事が現実になった
声はこう言った
運命を変えるにはまだ足りない
と。
彼等が来た事で何かが変わるのだろうか
「おい、城のなか入るぞ」
長曽我部一向が見えなくなっていた
もうそんな遠くに行ったのか
ぼうっとしていた凪に成実は話しかけた
「ほら、行こうぜ」
「はい」
「あいつら帰っちまったから静かになるなー。っつてもそれが普通なんだが」
何だかんだ言って騒がしかった長曽我部一向
楽しい騒がしさだった
凪は、考えるのを止めた
考えたってどうにもならない時はある
考えても先が見えない時もあるからだ
「今度、四国行きたいな」
武田でも良い
「一人ならだーめーだーぞ。行くなら俺も一緒に行ける時な」
「分かってますよ」
「随分楽しそうに話してますね?凪様から離れて頂けます?」
匡二が二人に割り込んだ
その顔は元親に見せたような笑みを浮かべている
「凪様、何処かお出かけになる際には私も行きますから」
だからこの男と出掛けたりしないでくださいね?と匡二は言う
成実は眉を寄せて匡二を睨む。些か匡二の方が身長が高い為余り凄みはない
「匡二、私、貴方に監視される覚えは無いから。てゆうか、付いて来てもらいたく無いから」
凪は冷たくさらりと言い放った
成実の手を取り城内に…と思いきや城下町に向かい走り出した
「ちょ、な!!」
「北斗―――ッ!散歩だよ―――!!」
わんっ!!
と北斗が門の向こう側から駆けて来た
「散歩、行きましょう!!」
「え、ちょ、まっ!!アイツ睨んでっぞ!!」
「させておけば良いんです。あの人と私はそう言う関係じゃないんですから」
走りながら、凪は空を見上げた
空は珍しく青が広がっていた
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