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「ふぁ…」
朝目が覚めると成実の顔が一番に目に入った
端整な顔がドアップであると多少ビックリする。ゆっくりと呼吸を整え、凪はゆっくり起きた
窓を開けると微かに明るいだけ
まだ朝方なのだろう
視界に小さな人影が見える
…政宗や小十郎では無い事は分かった
その人物は見慣れた髪色ではなかったからだ
「長曽我部、元親」
厚着をして成実が寝ているのを確認し、部屋を出た
雪は止んでいて、寒いには寒かったが耐えられない程ではない
空を見上げ、元親はたっていた
ただ、立っていた
「…」
ジャリ…
何だか綺麗だった
一種の美術品、とまではいかなかったが、白い肌が景色と解け合ってしまいそうで…
「あ?えーっと凪だっけか」
元親は凪に気がつくと振り返る
「こんな所で何を?長曽我部さん」
「俺らの住む四国にゃこんなの無いからな」
と元親は雪を蹴った
「珍しくてよ」
そんな様が子供の様に見えた
「一国の主が従者もつけずに?いくら政宗さんの城の中でも不用心ですよ?」
クスクスと笑う凪
それに、うっとする元親
「昨日の騒ぎじゃあ話せなかったが、俺ぁお前と話したかったんだぜ」
あぁ、それでなんか貫くような視線で見ていた訳か
しかし何故そんな目で見られねばならないのだろうか
「なぜ?」
「俺が奥州に来た理由は話したよな?それでテメェに興味が沸いてな。まだ信じられねぇけど本当に違う世界の人間なのか?」
「はい」
「じゃあ、もう一つ聞く。あいつはお前達が居た世界の昔に、俺達と同じ名前の武将が存在したと話してたな?お前らの世界では天下は誰のもんになったんだ?今でも続いてんのか?」
それは、答えにくい質問だった
成実や政宗、小十郎達もその事を聞いて来た事が一度あった
その時はうまくはぐらかしたけれど、あまり言ってよい事では無いと思うのだ
「竜か?それとも魔王か?それとも俺か?」
元親の目に凪は後退りをした
ダメだ。この人にきっと誤魔化しは利かない。誤魔化したとしてもしつこく聞いて来るだろう
「わ、私の世界の昔とこの世界の今は確かに似ていますが、私の世界には無い不確定要素がこの世界には沢山あります。だから、きいても」
取り敢えず無駄だと思うが、抵抗を示してみた
「教えろよ、誰がなったんだ」
「落胆しませんか」
「しねぇ」
「そうですか。…わかりました」
一呼吸おいて、どう話そうかと考え言葉を選ぶ
「さっきも言いましたけど、この世界とあちらの世界は基礎は多分同じだと思います。だけど流れは違う。だからこれを鵜呑みにしてほしくはありません。…天下を統一するのは徳川です。徳川の世は百年以上続きます。征夷大将軍となった家康が幕府を開きました。残念ながら貴方も、政宗さんも、武田も、上杉も、島津も。天下統一を果たせませんでした。私がいた世界では」
「徳川、が…!?」
元親は少なからずショックを受けているようだった
だから言いたく無かったのに
「言った筈です元親さん。この世界は不確定要素があると。私の世界の武将達は貴方方みたいな人ではありませんでした。バサラ技と呼ばれる技なんか使わなかったし、容姿や服装だって書物や絵に残されたものからするに全く異なります。何より年も違う。例えば武田。真田幸村はあの年の時武田信玄につかえてはいなかった。何故なら信玄公はすでに真田幸村があの年のとき死んでいたからです。この意味が分かりますか?この世界の幸村さんは私の知る世界の真田幸村とは違うと言う事です。世界の成り立ち様は同じでも、歴史は似ていても、私たちの世界と同じ歴史にはならないんです。現に私が知っている歴史とは多少違う」
だから鵜呑みにしてほしくは無い
この世界の未来を私は知らない
あちらの世界の未来は知っているが、この世界、この時代の日本…天下統一をするのは誰かわからない
でもそれは裏を返せば
政宗さんにだって
元親さんにだって
信玄公らにだって
上杉謙信にだって
毛利元就にだって
この時代を生きる武将誰にだって天下を統一できる可能性があると言う事
「徳川がか…。なぁ俺はどうなったんだ?」
「聞かない方がいいですよ、それは。あちらの世界の長曽我部元親は貴方とは違う存在。聞いたとしても違う人の人生ですし」
「あまり良くねぇみてぇだな」
元親は苦笑した
凪の様子からするにあまり良くないらしい
元親だって一国を背負う武将だ。駆け引きもそれなりに出来る
だから分かってしまった
そんな元親を余所に凪は続けた
「あの、あっちの世界の天下をどうのこうのって聞いたとしても貴方は天下統一諦めるつもりはないんでしょう?」
ココロは決まっているのに
揺らぐような事を聞いて
そんな無意味
「諦めるつもりっつーかよ、俺ぁ天下統一に興味ねぇんだ。自分の国守れて、宝捜しが出来りゃ充分」
そう言って元親は笑った
きっとこの人は民を大事にしているんだろう
何故かそう思えた
「…」
だからこそ
「お願いがあるんですよ元親さん」
きっとこの人なら信用出来る
だから
「匡二を連れて帰って下さい。お願いします」
貴方の国に
あの人を連れて帰って下さい
貴方はきっと匡二を他国に売ったりしない
だから
「彼を、この国から」
連れていってください
「あいつはお前の知り合いなんだろう?なら、そばにおいておく方が都合良いんじゃねぇのか?」
それは確かにそうなのだろう
けれど、私は彼をこの国に居て欲しくないのだ
「きっと、ソバにいたら、彼に酷い事言っちゃいます。彼を傷つけちゃいます。だから連れていってください」
ココロを許して居るからこそ、有り得る事態を思い。凪はそう言ったのだ
「お願いします」
頭を下げる凪
「そこまでして、連れ出して欲しいのか」
「はい」
匡二は私を捨てたけれど
私は彼を捨て切る事は出来ない
冷たく接する事は出来るけれと、彼を捨て切る事は出来ない
いつもココロの何処かに彼はいて
気にしていた
「傷つけたくないんです。それに彼と一緒にいれば、いつか元の世界に帰れるかもしれません。でも、私は今帰るつもりは無いんです。私ここに居たいんです、政宗さんや成実さん、伊達の皆さんといるのがとても楽しくて、とても息がしやすいんです」
帰りたくない
「だから」
彼の全てを否定する前に
「随分私の意思を無視した会話ですね」
元親と凪は後ろを振り返る
そこには匡二が立っていた
凜と、立っていた
白い世界に漆黒の髪は栄えて、存在を引き立てる
碧の着物を着て、白い息を吐く
その顔には困ったような怒りのような表情が見れた
凪の前に立つと凪の手を取り、冷たくなった手を息で温めた
「あ…」
「長曽我部元親さん。凪様の言った事は忘れてください。私はこれからずっと奥州にいます。あなたについていく理由はありませんから。ーーーーーーーー凪様」
暖め終わると匡二は有無を言わさぬような瞳で凪を見た
「真実はまだ話せません。それについては私も心苦しい…。だけど、私を拒絶しないでください。私は貴方の為だけに今此所に居るんです。世界を飛んだんです。貴方の為、俺はいるんです。勝手だと、思われても構いません。
あの日、貴方の前から消えた私を嫌っても良い。だけど拒絶だけはしないでください…!!私は…私は!!貴方を運命から助ける為なら、なんだってする…!!」
まただ。運命って言葉
運命が、何なのだろう
「だから元親様のところには行きません、行きたくない。私は貴方を守らなければいけないのだから」
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