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凪は縁側に座っていた
寒いけれどそんな事意味なかった
寒くても別に関係無かった
綿入りの羽織りを来ていたが突き刺す寒さは変わらない
それでも中に入ろうては思わなかった
「風邪ひくぞ?」
背後から成実が近付いて来た
薄手の布を持っていたがそれを凪に掛けて、隣りに自分も座るとその布の半分を巻き付けた
隣りに人がいるのはとても暖かかった
「私、偶然だって思ってました。この世界に来たのは。だって普通に考えたら世界を飛ぶなんて出来ないです。だから神様が起こした偶然だって思ってました。思っていたんですよ」
それなのに
「偶然じゃないって何なの…。私が、この世界に来たのは決められた事って」
「……」
「私、普通の人間じゃ、ないのかなぁ」
それは酷く成実のココロに響いた
「だって、匡二の言葉だと、前から決まっていたみたいで、あたし、来る方法なんてっ、しらなかった、のにっ、来ちゃって、飛んで、なんだか、人間じゃないみたい、に聞こえてっ」
「うん」
「教えてほし、い、のにっ。知ってる事、教えて欲しかった、のにっ」
「…なぁ、こうは思えない?お前がこの世界に来たのは偶然じゃなくってさ。お前がこの世界の神様に呼ばれたからだとかさ」
「…?」
「何、それじゃ納得出来ないか?誰かがお前をこの世界に飛ばした、ってならさ神様が俺達と出会わせる為に飛ばしたんだって思った方が前向きっていうかすんなり自分の中で納得出来るんじゃね?」
神様が、
「…」
凪の頭に、ぽん。と掌を乗せ優しく撫でやる
それは暖かくて、暖かくて
「あんま、そんな顔すんな。や、たまにはしても良いけどよ。梵とか小十郎とか信康とか心配するし」
苦笑する成実
「み…」
「?」
「成実さんも、心配しますか?」
虚ろな瞳に成実が映る
そんな彼女を成実は抱き締めた
成実の厚い胸板を感じる
後頭部を押さえて、成実の胸に沈める様に成実は凪を抱き締める
いやがる様子も無く成実はほっとする
この状態で拒絶されたら流石にショックだ
呼吸を一つ
すぅ、と吸って彼女に囁いた
「あぁ、するよ。心配する。お前はさ、笑ったり怒ったり楽しそうにしてる方が良いから。そう言うの、お前が人間だって証にならない?」
「怒ったりは余計ですよ多分…。
でも。ありがとうございます」
成実の言葉はスポンジが水を吸う様に凪に染み込んでいった
人間じゃないかもと思っていた凪には充分な言葉で、充分な行動だった
「部屋戻るか?」
「いえ」
凪は首を横に振る
「もう暫く、外に居ます」
「じゃ、俺も居る。」
「一人になりたいのに?」
「阿呆。こんな寒い日に、夜に、一人に何かできるか。別に一人増えたって気にすんな。あ、誰にも会いたくないなら良い場所知ってるぜ。ほら」
ひょい、と成実は凪を抱き上げた
それは現代で言うお姫様抱っこ
「な!!」
「っと、久し振りだなー」
凪を抱っこしているのに早々と廊下を歩いた
冷たい風が頬を撫でる
成実は外に出る
雪避けされた平らな石の上を歩く
凪はその先を見た
ぽつんと建つ離れみたいのが先にあった
「ここ…は?」
成実はお姫様抱っこから凪を肩に担ぐ様に体制を直すと、平屋建ての様な建物の扉を片手で開けた
「お、掃除もしてるから綺麗だな。ほい、ちょっと待ってな」
土間に凪を降ろすと成実は小屋…と呼ぶには大きい家から出て行く
ぶるり、と寒さに震えてしまう
「寒い」
暫くすると成実は毛布と布団、それから木と紙、それから松明を数回に分けて持って来た
木を釜戸みたいなのにくべると松明の火を紙灯した。そしてそれを中に放る
ぱちぱちと音をたてて燃ゆる
「今日ここに寝ようぜ」
寝ようぜって…
「あ?手ぇだすとか思ってる?しねぇよ。確か…」
ゴソゴソと成実は押し入れを漁る
そこから布団を持ち出した
「ちと小さいけどまぁいいか。やらしー事しないから安心しろ。あぁ、逃げんな馬鹿。戻ったって今更だぞ。皆寝てるし、な」
慣れた手つきで成実は持って来た布団と押し入れから出した布団を敷く
普段そういったような事は全て女中が行うので意外だった
「ほれ、はやく入れよ。」
布団同士はピッタリくっついていたが流石に寒くなったので凪はしぶしぶ布団に入った
「成実さんは寝ないんですか?」
「あ?あーもうちょっと部屋暖かくしたら寝るから」
「わかりました。おやすみなさい、成実さん」
「あぁ、おやすみ」
それから数分後規則正しい寝息が聞こえた
火をおこした事で少し室内は暖かくなっていた
元々防寒をよくしてあるから寒さが室内に入りこむ事は余り無いだろう
「あー、俺も寝ようかなぁ」
火を消す
真っ暗になった室内
かすかな光を便りに成実は布団までたどり着く
隣りには寝息をたてる凪
…う。なんかソワソワする
流石に手は出さないと言った手前、それは守らなければならない
男に二言は無い
しかし暗闇に慣れた目で目の前にいる凪を見ると何故か据膳のように見えた。が、プライドと理性が彼をまだ止どめていた
凪の寝顔を見て成実は天井を見上げ目を閉じた
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34thコンタクト