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はやく
はやく
はやく
かのじょ に あいた い
ねぇ …さん。
やっぱり わたしにはこれが
ただひとつ の みちだなんて思えない
あぁ くそ
くらやみなんて ひかりをあてればなくなるだろう?
てらしてよ なぁ!!
やみなんか
きえろ 消えろ キエロ!!
わ たしの 邪魔を するな !!
■■■■■■■
ついに長曽我部一行が奥州に入った
船を降りた彼等はその後陸の移動した。もちろん眠り続けている男も、だが
「凪、用意は出来たか?」
「は、はいぃっ!!」
凪は客を迎えると言う事で女中達に化粧やら何やらをさせられていた
小十郎は時を見計らい声を掛けた訳だが、緊張した声が返って来て少し不安になった
「準備万端です!行きましょう」
そう言って現われた彼女は以前成実と政宗が買った着物を召していた
中身が華やかとは言えないが、それでも彼女の格好は政宗や成実の隣りに立つには十分だろう
「お、来た来た。」
大きな部屋に入ると既に主だった家臣らは座っていた
勿論政宗は一番置くの上座に座っている
「凪!こっちだ」
と政宗がさしたのは上座。政宗の隣りだった
「…………お断りします」
だってそこは絶っ対、側室だか、正室だかが座るべき場所だろう
そう言うと政宗の気に召さなかったのか、眉を顰めた
「そ、そこは奥さんが座る場所…ですよね?わ、私奥さんじゃないんでッ!!下座で…」
「じゃあ俺の後ろ。梵の隣りはヤなんでしょ?ね?」
成実の後ろと言われ凪は直ぐに座った
奥さんの席よりマシ!!
成実の後ろに座る凪
ピン、と伸ばされた成実の背筋を凪はじぃっと見た
皆背筋が綺麗だなぁ、なんて思いながら静かな室内の中色んな所に視線をやりながら元親を待つ
静かな空間
静かな周囲
静かな此所
人の息遣い、衣の擦れる音、外の音
それらが静かな室内のせいで否応に耳に入る
目を閉じて時を待とう
そう凪は思った
目を閉じれば多少の光は感じるが無の世界が広がる
何故だろう、何かそわそわする
妙にココロの何処かは荒狂う海の様になっている
ココロの殆どは静まっているのに
「長曽我部様いらっしゃいました」
戸の外にそんな声が聞こえた
ゆっくり、ゆっくりと瞼を開ける
それと同じく襖もゆっくり、ゆっくりと開いた
視界に入るのは紫
そして嗅覚が感じたのは磯の香り
少し怖いお兄さん系な人物が立っていた
長曽我部元親である
(やっぱりゲームで見たまんまだ―…長曽我部元親、かぁ。格好良い―)
「Hey.長曽我部突っ立ってねぇでさっさと入って来い」
「テメェに指図される覚えはねぇ。それが交易相手にする態度か、あぁ?」
そう悪態をつきつつも元親は室内を堂々と進んで行った
伊達の主だった家臣達が並んでいるのに憶する事も無い
流石一国を束ねる長
まぁこんな事で憶していては宝捜しなんぞ出来ないだろうが
「…」
静かな室内を進む中、元親は目線だけを動かし視界に唯一の女…凪を捕らえた
随分ちんちくりんな客人だ、と横目に凪をみて元親はそう思う。女中でもない、武将の娘のような雰囲気もない、血なまぐさいこの世に合わない雰囲気だ
(あれが客人とやらか)
元親は政宗の前迄来て座った
そして懐から書状らしきものを取り出す
「これがこっちで纏めた交易についての約束の草案だ。気に入らねぇ点があるならトコトン話し合おうじゃねぇの」
「…凪」
政宗は凪を呼んだ
「そのLetterこっちに持って来い」
家臣が一斉に凪に視線をやった
此所まで注目されて嫌ですなんて言える筈も無く凪はゆっくりと立ち上がり、元親の横に行った
そして座り、元親から書状を預かる
一瞬、目があった
きれいないろ
「お預かりします」
胸元に書状をしっかりと抱き締め政宗の元へ運ぶ
渡された書状を開け、中身を読む政宗。彼の眉に皺が寄って無い事を見る限りちゃんとした…対等な交易内容らしい
「ふん、悪くねぇ。これで構わねぇぜ。こっちはな」
「なら立会人の元契約を交わそうじゃねぇか。こっちから一名、そっちから一名出せや」
「立会人は俺がするよ梵。一応立場的にも申し分ないっしょ?」
「俺は別に誰だって構わねぇぜ?そこのちんちくりんな女でも構いやしねぇしな」
ちんちくりんって酷い
そんな事あまりいわれた事がない
立会人は誰でも構わないと元親は言うが、私はそう言うのの立会人にはなれない
成実さんみたいな地位に居る訳でもない、ただの居候。そんなのに重大だろう事の立会人になんかなれない
そんな凪をよそに
静かに署名は行われた
――――――――――――――――
契約が済んでしまえば後は祭りの状態
飲めや食えやの宴会騒ぎ。両国の頭及び家臣達は、気質が似ているせいかうち解け合い、室内にはもはや秩序と言う物が無くなっていた
酒の匂いも相当する
いるだけでも酔ってしまえそうだ
凪は酒の匂いに居てもたっても居られず未だ騒いでいる室内を静かに出ようとする
「どこいくんだ?」
すると成実に呼び止められた
「お酒の匂いがキツくて。外に出ようかなぁって」
成実は凪の様子をみた
確かに顔色はよくない
「あーちょっと待った。此所にいて」
成実は立ち上がると元親と杯を交わし合って居る従兄弟の所へと向かった
そして耳打ちをすると帰って来たのである
「行こ?空気と水飲もうぜ」
グイッと手を引き騒がしい室内を出た
成実は何杯も酒を飲んで居た筈だが酔っている節は無く
(というか成実さんって向こうの世界じゃ多分未成年だよね?お酒飲んでもいいのかなぁ。あ、でも多分元服してるから…)
「酒苦手? 」
「私の時代では20歳超えるまでお酒飲んじゃダメなんですよ、周りに飲む人も居ませんでしたし耐性がないんです」
「へぇ~うまいのになぁ」
■■■■■■■
こえ、が聞こえる
ザワメキ
クラヤミ
その中にこえが
「よくあの匂いに酔いませんね~成実さん」
「酒の匂いか?そりゃあな。というかお前こそ匂いで気持ち悪くなるってのは特殊だな」
「いや、飲まなくたってあの匂い酷いですよ。普通に匂いだけで弱い人酔えそうですよ。気持ち悪くなりますよ」
こえ こえ こえこえこえ
この声は
・・・・
・・・
・・
・
・
・
「ほらここに座れ」
厨に来て座らされた
「水汲んで来るから。動くなよ」
そう言うと成実は手ぬぐいを持ち出て行ってしまった
宴会を抜け出してこうして気分を悪くした凪の面倒をみてくれる成実
自分だって四国の武将と弾む話もあるだろう
なのに抜け出して…
「優しいなぁ」
視線を下にする
そうすると自然に顔も下に向いてしまう
「う…」
気持ち悪い、と口に手を当て息を整える
ひた…
ひた…
ひた…
ひた…
ひた…
と何かの足音がした
振り返ろうとゆっくり身体を横へ動かす
しかし後ろを見る事は出来なかった
がばっ
後ろからいきなり抱き締められたのである
(や…、誰……!?)
成実は外に行った
成実ではない。また伊達の人はこういう事はしない
(誰…!?)
そして一段と強く抱き締められる
「ぃた…!!や、助けて―――――!!」
その声はとてもよく聞こえた
宴会をしていた部屋まで届くほどに
御猪口を持つ手をピタリと止めて、何人かの人間が危機を察知する
「今の声…」
「あ、あぁ。凪ちゃんの…大変だ…!!殿――――!!」
異変を察知した伊達の人間の何人かは刀を持ってすぐさま部屋を出て声がした方へと向かう
「凪ッ!!」
「凪さん!!」
「おい、何の騒ぎだ!!」
政宗に鬼庭それに何故か元親、そして何名かの兵が凪と謎の人物を取り囲んだ
既に皆抜刀している
きらり、と光るそれの切っ先
「は、離して~っ」
じたばたとする凪
しかし取り囲まれてもなお抱き締めている人は離そうとはしなかった
「な、テメェは!!」
元親が吠えた
知り合いだろうか
「起きた、のか!?」
起きた?何を…言っているんだろうか
元親は取り囲まれている中の凪らに近寄った
「起きた早々問題起こすたぁ、親の顔が見て見たいぜ。さっさとその女離しな」
「…た」
一言。彼は言った
「見つけた」
その声は、凪の行動を止めた
聞いた事が
ある声だった
■■■■■■■■■■■■■■
炎のあかりだけがある厨に探していた人がひとり座っている
僅かに動く身体を後ろに向けてやる
あぁ、少し大人になった
髪ものびた、背も、大きくなった
抱きしめて、離して、改めて顔をみる
周りの雑音なんて気にならない
ただ、そこにいる大事なものだけが全てだった
信じられないものをみる彼女の頬に手を当てて、口にしたかった言葉を紡ぐ
「凪、様」
やっと、みつけた
やっと、あえた
やっと、あなたを