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四国の長曽我部氏に文を出して二週間。
越後と奥州でさえ一週間は確実に掛かるのだから四国へ文を渡すのだってそれ位、もしくはそれ以上掛かるはずだ
そして文を貰い直ぐに出発したとして一週間以上はかかる
彼が陸から来るのか、海から来るのかも分からぬまま凪は日々を過ごしていた
「てゆうか四国に行ってみたいなー」
別にこちらから出向いたって良いはずなのに。
まぁ話を持ち掛けた方が出向くと言うのは当たり前なのだけれど、奥州から出た事の無い凪にとって、四国の長曽我部の事は少しばかり興味を注がれた
「寒いから、奥州より南に行きたい」
「な、奥州の寒さの何処が悪い!!南なんてなぁ、暖かすぎて頭の中が年中春な連中の宝庫だぜ!?」
凪の奥州より南に行きたーい発言に成実は眉を寄せた
暖かいからと言って頭の中が春な人が多い訳では無い。成実のただの偏見と言っても良いだろう
「いいじゃねぇか長曽我部が来るってんだから。四国の土産とかあるだろうよ」
それで我慢しろよと成実は言った
「ううう…だっていつだったかの甲斐へのお誘い成実さん断ったじゃ無いですか…。奥州じゃない土地を見れると思ったのに」
どうやらそれが気に入らないらしい
「だーかーら、我慢しろよ」
むぅ、と膨れっ面になる凪
今回はなかなか引けないでいた
来てくれるのはいい
良いのだが、凪は南に行きたかった
あの声のせいだ
そう、あの声は言った
奥州から南というのは範囲が広く特定するのは難しい。しかしその声を聞いた日に、長曽我部が交易を持ち掛けて来たというタイミング
これは糸だ
南の何かはこの間の幻聴に関する糸だと、凪は思っていた
四国にソレがあると、確信は無いけれど感じる事が出来る
(はやく、はやく元親さんこないかな)
引っ掛かりがずっと胸に有るのは、解せない
元親が奥州に来る日を凪は本当に待っていた
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奥州より遥か遠く
海上
一隻の船が極寒の中進んで居た。荒波のなか進むそれは長曽我部元親の船である
陸地が見える程度の沖を進んでいるのだが、いかんせん冬の冷たさが船を襲っていた
「だぁあああ!!さみぃ!!何だって北はこんなに寒いんだよ!!これだから田舎は困るぜ…!!」
寒いのは兄貴の格好がそんなだからです、と野郎共は思った
「兄貴ー。どうせなら陸から早馬使って行けば良かったじゃねぇっすか」
その言葉に元親は振り返って部下に近寄った
「あのな、俺は海の男だぜ?陸なんか行くか!!!!!」
いや、海よりマシですよきっと
と思ったのは内緒だ
この荒波の中でも奥州まではあと二日程だろう
「……」
「兄貴~アイツどうするんですかー」
手下は元親の近くの部屋にいる彼の事を心配していた
あの眠っている男も連れて来て居たのだ
「知り合いかもしれねぇだろ」
「知り合いじゃ無いかもしれないじゃないですか」
確かに知り合いじゃ無いかもしれない
だけど元親はこの男を連れて行かねばならないと思わせる何かがあった
「備えあれば憂いなしっつー言葉オメェ知らねぇのか。知り合いじゃないなら無いで別にいいじゃねぇか」
もし知り合いだったとしても連れて来る手間と時間が省けるしな
「まぁ兄貴がそう言うなら何も言わないっすけど…」
「そーかい。ならさっさと飯の支度をしろ。腹が減って仕方がねぇ」
元親は看板から退くと船内へと入っていった
ギシギシと鳴る床
船内は外より寒くは無かったが、寒い
吐く息は白く、吐いてはゆっくりと透明になる
ある部屋に元親は入ると、床にゆっくり腰を降ろした
「ハァ、寒い」
未だ眠る男
白い吐息すら吐かない男
「テメェと奥州の客人とやらが知り合いだといいな」
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