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ふと、思った
ここに来てもうかなりの月日が経過した
暦上冬と呼ばれる季節も、あと一か月から二か月で終わりを迎える
自分はここに来てから皆に良くしてもらって過ごしているけれど
春になったら今みたいには過ごせないんだろうなと思う
「北斗~?ほく…あ」
北斗は犬小屋ですやすやと眠っていた
まだ子犬だし、仕方ない
凪は立ち上がると、
重装備してこの間からせっせかと作っているかまくら造りをしに庭へ降りた
「北斗、起きたら遊ぼうね」
その時グラリと
視界が揺れた
声 が
聞こえ る
遊ぶならアイツを誘えよ
この 声 は
あの 人の こ え
この世界にはいるはずがない人のものが、聞こえた
立って居られなくて、膝を床に片方だけつけて跪くように崩れた
まだ続く声
でも次は知らない声
まだ その時でないから
まだ…
まだ…?なにが?
時じゃないってなにが…?
変える為 にはまだ
足 りな い
みな みへ
南に 人が いる
すぅ…と眩暈が引いて行った
何だったのだろうか
南?南に人とは何なのか
そしてなにを変えるのに何が足りないのだろう
私、は
「凪はいるか?…っておい!?どうした」
小十郎が襖を開けて凪を見下ろしていた
顔色の悪い凪を見て、顔を覗きこんだ
「だいっじょうぶ、です」
頭を押さえて答える凪
定まる視界に小十郎の輪郭をしっかり捕らえた
「ちょっと眩暈しただけです。あ…何か用が有るんじゃないですか?」
「本当か?具合が悪いわけじゃないんだな?」
「健康優良児です!大丈夫!で、用とはなんですか?」
「あぁ…政宗様が呼んでいる、と伝えにきたのだが」
「今行きます」
あの声は一体何なのか
訳のわからない事を言っていた
否、でも何処か
何処かで聞いた事がある、声だと思った
だけどあまり知らない声
凪は聞こえた二つの声を気にしつつ
政宗の元へと向かった
一足、一足を進める度に凪の思考は先刻の事を頭に刻んでいく
(南、ってなんの事だろう)
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「まだ目ぇ醒めねぇのか」
元親はついこの間海で拾った、未だ目を醒まさない男を見下ろした
「はい。排泄もせず、身体が衰える気配も無く、でも死んではいない…こんな風に眠る方を私は見た事がありません」
腰を降ろすと、眠る男の爪先から頭の先までをじっくり見やる
拾ってから
目を醒ましたのはあの時
ただ一度きり
それからずっと眠りの底に男はいた
男は静かな呼吸を繰り返す
そんな時、医師が静かな空間を破った
「奥州に」
「奥州…?あぁ田舎か」
「同門の友人が居るのですが、奥州に不思議な客人がいらっしゃると文にありました。城に客人として迎い入れられた時、見た事の無い召しものを着ていた…と。もしかしたらその客人と、この方は関係が有るのでは無いでしょうか」
元親は少し考えると踵(キビス)を返した
「元親様?」
「いつまでもこのままじゃあ埒があかねぇだろーが。奥州に引っ掛かるもんが有るなら、行くまでよ」
元親の格好で今の奥州に行くのは自殺行為と思える。しかしそれよりも好奇心の方が勝っているのだ
「そうだな…取り敢えず文出すか。奥州にゃ交易しねぇかって名目で俺が直接出向く」
そんな元親は楽しそうだった
久し振りに面白そうな出来事が起きているのだ
もしかしたら宝より良いものを拾ったかもしれない
この国の着物じゃない物を身に着けている男は、異国の人間かもしれない。異国には知らない知識等がある。
この男はそんな知識が有るかもしれない。それは天下を取る為に役立つかも、と元親は思ったのだった
「取り敢えず主だった将は残されて、隠密に向かわれた方が良いかと。敵に気付かれぬように」
「だな。仕方ねぇから、俺と何人かで向かう」
いざ、奥州へ
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