1
あなたの名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「単刀直入に聞こう。君は成実殿を好きかい?」
宗時に連れられてある部屋に入れられた凪
宗時が正座をしたので凪も慌てて正座をする
いきなりの質問に目をきょとんとさせる
ぱちぱちと開閉をする瞼
二人を静かな空間が包む
よく耳を澄ませば人の吐息まで聞こえるだろう
着物の一部を握る宗時
そんな中、静かに答えを待った
(ただのお友達です、なんて答えは勘弁)
凪はうーんと唸ると、顔をあげて言った
「好きですよ」
それはどの意味なのか
友人としてか
それとも兄弟に抱くようなものか
さてまた、恋としてか
凪の様を見ると最後の可能性は無さそうだ
確かに凪と成実のやり取りを見てると、成実は凪に明らかに好意を寄せているのが誰の目にも分かる
しかし凪が成実に好意を寄せているというようには見えなかった
宗時はだから策の前に聞いてみたのである
これからする策は、成実を焚き付ける策だ
策は二段階にした
一段階目
それは信康らが成実の元へ行き、焚き付ける
しかしそれでは失敗してしまう
成実は超がつく程鈍感なのだ
言葉だけで気持ちに気がつく訳がない
そこで二段階に策をとった
二段階目の策は宗時が身体を張らねばならない
―…‥何故なら成実に殴られるだろうという予想ができるからだ
(合図は鐘の音。それまでに来て下さいよ)
さて、成実を含めた三名は策を成す為に移動をしていた
先頭をきって歩く信康は内心焦っていた
宗時…
成功してもしなくても、よくよく考えてみれば最悪宗時だけじゃなく、俺らも殴られるかもしれない
し、成実がキレるかもと言う可能性に
策を成す為動き出した時には気がつかなかった
だが後には退けない
退いてはダメだ
こ、これは成実の為なんだ…!!
■■■
「成実さんは優しくて、頼もしいですから好きです」
なかなか読めない凪の気持ち
宗時と凪はそれから他愛も無い話しをした
話しと言っても時間稼ぎのため。主に宗時からの質問ばかりだ
しかしそれに嫌な顔もせずに応答する凪
宗時は成実が何故、凪を好きなのか分かった気がした
そうこうしているうちに鐘が鳴る
策の合図だ
耳を済ませて、足音を聞く
まだいないようだ
取り敢えず宗時は立ち上がると、彼らから部屋の様子が見えるだろうという戸を開ける
頃合かもしれない
宗時はココロを静めて覚悟をきめた
「凪殿」
振り返れば
はい?と首を少し傾げてこちらを見ていた
「すみません」
「え…?」
■■■■■■■
「げ」
鐘の音が鳴るのを信康は聞いた
鐘の音が策の始まる合図
宗時の部屋まであと少しだ。信康は足を速める
「急がなくてもいいんじゃねぇの信康」
馬鹿!!
急がなきゃ宗時(多分そこに俺らも入る)が身体を張る意味が無い!!
「馬鹿!宗時が手を出してたらどうすんだよ!!」
出してたら、じゃなくてこれから出すのだが
「ほら!宗時の部屋…が」
漸く宗時が見えた
宗時の部屋は戸が開けられている
位置的に、三名はT字のような廊下にいた
T字の突き当たりの正面は庭を挟んで宗時の部屋
「あー…」
戸が開けられている
∥
部屋の様子丸見え
嫌でも目につく
三人が目にした光景
「……」
それは凪が宗時に組み敷かれ、口付けしている光景だった
あー…うん
策で想像するのと、実際それを見るのでは結構違う場合がある訳で
しかも…
凪は涙を少し溜めて居た
「し、成実殿?」
この策の標的である成実の様子を綱元は恐る恐るみた
ギシ…ッ!!
成実は廊下を飛び出して庭を突っ切る
一直線に
そして
「むねときぃいいい!!」
声を荒げて彼は掴み掛かった
凪の上にいた宗時はそれにより成実に殴られた
痛々しい音が響く
凪はその様をスローモーションの様に見る事ができた
否、スローモーションの様に見えた
自分の上に乗っかっていた宗時
右の視界からいきなり現れた成実
そして二人は部屋を突き抜け、荒々しく殴りかかった力の作用のせいで隣りの部屋に転がり込むように入った
胸倉を掴む成実
ふー、ふーと息は荒い
「宗時…!!」
「ぃ…ったぁ…!!何をするんですか成実殿ッ!!!!!」
「何を…だと!?お前こそ何していた!!」
ダァアアン!!と宗時を床に叩きつける
成実の剣幕に少しも怯まず宗時は成実に食ってかかった
「何と?見ればわかるでしょう?男女の行為をしようとしただけです」
「テメェ…ッ」
「何故、そこで成実殿に殴られなくてはならぬのですか。凪殿と恋中でもないし、将来を誓いあっている中では無いでしょう?何もない成実殿に何故殴られなくてはならぬのですか」
くっ…と妖艶に笑う宗時
こうなる事が三名には容易く予想が出来た
手を出せばきっとココロ云々の前に身体が動くはずだと
「凪殿の何でもない貴殿に殴られる筋合いなんて、ありませんよ」
もう悪役の台詞に聞こえる
綱元も信康もそう思った
まぁ最悪給料減らされるかなー
「ねぇ離して下さいよ」
成実は宗時の言葉にチクリと刺が刺さったような痛みを感じた
確かに俺は凪の何でもない
なのに何故あの光景をみて
凪の瞳に溜まった水をみて
こいつを殴ったのだろう
身体が動いたんだ
一気に頭に血が上って、気がつけば庭を突っ切っていたんだ
何故…?
「な、なる…なるみさん…ッ!!」
ハッと顔を上げれば眉を寄せて悲しそうな顔をした凪
着物の着崩れが見られなくて少し安堵する自分がいた
宗時の上に乗っている成実に凪は
止めてと
言った
「お前…嫌だったんじゃないのかよッ!さっき泣いてたじゃないかッ!!あのままじゃ…!!」
その言葉に成実は何故止めるのだと意味を込めた
「嫌でしたよ…!でもッ!それはあたしが解決する事で成実さんには…ッ」
関係ないじゃないですか…!
その言葉に成実の胸はより一層痛みが増した
関係ない?
そんな訳あるか
泣いているお前を放っておけないだろう?
「俺は…ッお前が…!!」
お前を…?
「好きなんですね?」
ボソッと宗時が成実だけに聞こえる様に呟いた
「あの光景をみて殴りかかるなんて、好きだからじゃないんですか?」
宗時を静かに見下ろす成実
その瞳は真直ぐ成実を捕らえていた
弱さの欠片もない、強い意志の目
「す…き…?」
俺が、あいつを?
好き?
「他の男といるのをみて、苛立ったりした事あるはずですよ?」
それは嫉妬
そう言われて思い出せば確かにそんな気持ち何度か抱いた事がある
「その気持ちを人は恋と言うんですよ」
ゆっくりと成実は宗時の上から降りると座り込んだ
「好き…か」
宗時はゆっくり起き上がり乱れた着物を直した
視線を信康らに移すと彼等は凪を違う部屋に連れて行く
策はあと少しで成される
「そうか、俺…好きなんだあいつを」
焦点のおぼつかない目
成実は漸く気がついたようだ
暫くすると信康、綱元が部屋に戻ってきた
胡座をかいて座る信康
「やぁーっと気がついたか!お前鈍感すぎ。俺らがこうしてやらないと気がつかないなんてなぁ」
「は?」
信康の言葉に成実は耳を疑った
こうしてやらないと気がつかないなんて
こうして…
つまり…あれは。
「成実殿、申し訳ありませんでした」
宗時は土下座をしていた
顔は見えないが、それは真剣な言葉だとわかる
「我ら、成実殿の様にどうも歯痒さ止まらず…成実殿に気付いてもらおうと勝手に策をたて、事に至った次第です。他人がその様な事に首を突っ込むのは邪推だと、心得ておりますがそれ程見ていて歯痒かったのです」
「宗時…」
「でもよぉ、漸く気がついたんだからさ。な?」
許してくれよ。と信康は言った
「確かに。お前らが気がつかせてくれたんだ…あのままなら気がつかなかったかもな。
だが。
それとこれとは話が別だ。凪を押し倒したあげく口付け、泣かせやがって…!!」
ゴゴゴゴ…
ゴゴゴゴゴゴ…
地獄の底から響いていそうな音が成実の背後から聞こえて来た
き、キレている……!!!!
「覚悟は出来てんだろうな…」
ひぃっ!!成実の後ろに、小、小十郎様が光臨している…ッ!いないのに小十郎様が見える!?
「庭でろ、庭!!」
覚悟はしていたが三人は
「「「ご、ごめんなさ―――――いッ!!!」」」
とひたすら平謝りをしたのだった
取り敢えず一歩前進…?
NEXT.22th
後日談
成実にこってり怒られた三名は、後日凪に平謝りをし
暫く成実の仕事を全て受け持ったという
後日談終わり