1
あなたの名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「成実ぇ。お前宛の文がきてたぞ」
「ちーす!成実。なんか文が届いてっぞ」
「失礼、成実。文が…ってなんですかその嫌そうな顔」
成実はげんなりしていた
理由は文である。毎日ひっきりなしに届いている。届くのに問題は無い。無いのだが、成実が迫られたという従姉妹からの文だと言う所がげんなりしている理由である
「成実さん最近手紙よくきますね~」
成実が帰ってきてからまた凪は成実の部屋に入り浸り始めた。居心地が良いらしい
故に毎日届く手紙の様子と、その手紙を受け取りげんなりしていく成実の様子をリアルタイムでみていた
「でも毎日手紙なんてこまめな人なんですね?誰なんですか?」
「従姉妹」
「従兄弟?」
凪と成実のイトコ意味が違うのだが…
そんな二人にまた一通文が届いた
「お疲れ様、成実殿、凪殿。はい仕事と文」
「あ、綱元さん!こんにちは」
「よぉ綱。何?」
綱元の手には紙があった
仕事用の紙だろう
綱元は部屋にはいると、数枚の紙を成実の机においた
そして凪の方へ振り向くと懐から文を取り出した
成実は文と聞いて、またアイツからかと思ったが凪の方に綱元が向いたので何かと立ち上がり綱元のそばによった
受け取ると、凪は文を広げる
「何語ですか?」
「いや文字だろ」
凪には読めなかった
それもそうだろう
現代語とこの時代の文字は異なる
漢字は同じのもあるだろうが現代語は一文字一文字をハッキリ書く
この文は昔の文字そのものでミミズが這ったような文字であった
「読めないんですが」
「貸して下さい。…あぁ、武田の忍び殿からですね」
綱元は文を読み始めた
「『 拝啓、凪殿
あれから如何お過ごしでしょうか、と固い文はしょうに合わないからいつもので書くね。
甲斐に遊びにこない?雪ばっかの奥州じゃあつまらないでしょ?俺の鳥をこの文が届いただろう日から数日後飛ばすからその時に返事頂戴ね
猿飛佐助』」
なんと、甲斐へのお誘いの文だった
綱元が文を丸めようとしたら、カサッともう一枚文が出てきた
「『追記
お誘いは凪ちゃんだけだから、竜の旦那とかは来ないでね』だそうですが」
「な、何―――!?」
成実は叫んだ
「あたしだけなんですか?」
「そうみたいですね」
ふむ、と綱元は顎に手をあてた
「一人は駄目!絶対駄目!」
反対を申し出る成実に綱元は苦笑した。
これで気付いていないのだからおかしい。仕方ない少し気付くように背中を押してやろう
「何故成実殿が反対するんです?」
「え…」
「恋人でもないし、行動を制限する事は出来ませんよね?」
敢えてここで恋人という言葉を選んだ綱元は頭が良いと言うか、何と言うか
「どうなんです?」
「…な、成実さんは私が移動中にさらわれないかと」
「うん、それだよ!凪は他国で異国語を話すと有名になってるからさらう奴が出るかもしれないし」
「そうですか」
綱元は溜め息をつく
本っ当、この男の鈍感さに頭が痛くなりそうだった
凪が甲斐に行くのを反対する
それは手元に置いて置きたいからではないのか
好きだからではないのか
綱元は前途多難な恋に部屋を出てから涙を流したと言う
Next.19