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誰かと未来を歩む為には
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兄と会って、兄から背中を押された
それでも、もやもやとしたこの気持ちは変わらない
身体が冷えるからと部屋に戻される
未だ慶次達は例の話をしているらしく、凪は室内で一枚の紙と向き合って居た
成実はといえば、寛いで寝て居る様に…見えるが、実は狸寝入りで神経を張り巡らせている
何故凪が紙と向き合っているのかと言えば、手紙を書く為だった
「…筆」
筆を使い、書き出し始めた
宛先は、父親だ
彼らが帰る時に渡す予定だったのだが、自分達の出立の方が先になってしまう可能性が非常に高い今、書いてしまうしかない
何を書けばいいのか、悩む
父親と言っても、思い出がそんなにあるわけでは無い。兄以上に自分に関わって来なかった人だ
それでも飢え無い程度に、生活に困らない程度に気にはかけてくれていた。気にもしていなかったら、一人暮らしは出来なかったから
「んー…、んー…」
取り敢えず、
「父さん、へ、っと」
取り敢えず、この世界に来てどんな事があったのかを書いた
それから、彬が話した事を柔らかく書く
…自分の事も、書かなければだ
自分の事で筆が止まった
(…父さんは呆れるだろうな)
見知らぬ世界に飛ばされて、紆余曲折し今妊娠している
そして、もう父親のいる世界に帰るつもりは無い
それを父親は良しとは思わない筈だ
それでも、それを分かってもらわなければいけない
―――逢う事は無いのだから
息を一つ吸うと、少しずつ文を書き始めた
─────拝啓、父さんへ
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筆を置いた
漸く手紙を書き終え、書いた内容を読み直す
その時ぱたぱたと廊下から音がした。成実はむくりと起き上がり、襖の方を向く
襖は勢いよく左右に、スパーン!と開けられた
「話つけて来た!」
「で?梵は何て?」
「好きにしろ!だってだからさ明日…」
と言う事は、その策を政宗達は承諾したと言う訳だ
ぼぅとしていた間に成実は立ち上がっていた
何処に行くのかと凪は成実の背中に視線を送ると、成実はこちらを向いた
「ちょっとな」
こちらに歩いて来て、頭を撫でた。手のひらは温かくて、ほっとした
頭を撫でたあと成実はほほ笑み、部屋を出て行った
「何してんだ?」
慶次は凪が今まで手紙を書いて居た机を見た
「父親に手紙を」
この時代の読み書き方と自分の時代の読み書き方は異なる部分があるだろうから、慶次が見ても分からない部分が多いだろう
「兄達が帰る時これを持ち帰ってもらって、父親に渡してもらうんです」
「あ…そうか」
これがお別れの手紙だなんて思うと切ないけれど
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「彬。お前は読めるか?この先が」
「………詠む?あぁ、凪か?」
ざわり、と風が動く
彬の“耳”に、風が言葉を伝えた
「詠めた所で、お前にはどうする事も出来ない。…今日の夜中に出立するみたいだ。凪は部屋で手紙を書いて居る様だが」
「手紙?」
北斗は手紙という単語に反応した
ほら、父親宛の。と言えば、あぁ。と納得をする
北斗は屋根の上に寝転んだ。澄んだ空は綺麗で、流れる雲はゆっくりと流れて行く。一つの雲の流れを少しばかり追った後、目を閉じた
そんな北斗を見つつ彬は言葉を繋げる
「詠める事は詠める。しかし詠んだとして、彼らの未来は彼らだけのモノで、―――干渉するつもりは無い。詠んでしまうと言う事は、干渉をすると言う事だなんだからな」
それがどう言う事なのかを、お前は知っているだろう?といわれ、頷いた
「さよなら、だな」
その一言が自然にこぼれた
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