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「そんな事させませんよ?」
ぐぐぐぐぐっ、と今まで黙っていた匡二は慶次の胸倉を掴んでにこやかだが黒い笑みだ
「この口か、この口がそんな事言ってるのか?それともお前が殺されるか?」
「ちょ!冗談やめろって!!」
「冗談?これが冗談に聞こえるなら随分耳がいいな」
「そうだ、冗談にしちゃ質が悪い。ヤられるか?」
成実までもが参加しそうになる
慶次は首を激しく横に振ると、話を聴いてくれよ!と抵抗する
「ここで争いがあって!」
「争いなんかおこさせねぇし?」
ん?と、まるでヤンキーにカツアゲされてるような学生の様な状態だ
「だーかーらっ!話を聞けって!!」
慶次の大きな声に二人は不服そうな表情をして渋々離れる
慶次はそれにほっとして、半兵衛の腕の中に未だいる凪と視線を絡めた
「今のこの状況を俺達以外誰も見ていない。だから浮かんだんだ」
「浮かんだって、何が?風来坊」
佐助はしゃがんで膝に肘を乗せ、手のひらに顎を乗せた
どうやら察しが良い左助や半兵衛は、慶次の考えが読めないらしい。顔を顰(シカ)めている
「凪と半兵衛は夫婦。それは変わらない事実だ。周りの五月蠅いおじさん達が、…離縁しちゃう予定だけど半兵衛の嫁さんだった凪や、この先幽閉される半兵衛を暗殺するかもしれない。それは避けたいよな?」
凪は暗殺と言う言葉に身を一瞬強張らせるが、半兵衛が腕の力を強め、まるで大丈夫だと言っている様だった
「じゃあ、そうならない様にする為には?」
「そうならないように…答えは凪を連れて国を出てく事だな」
「でも半兵衛は?」
ちらりと半兵衛と成実は目を合わせる
成実は、ケッ!と言った
「武士の端くれなんだからテメェの身位幽閉されてても守れるだろ?」
「でもきっと、自分だけそれから逃げて、半兵衛だけヤられたら凪はきっと一生涯悲しい気持ちを忘れる事無く過ごしちゃうと思うんだけどなぁ」
確かに言われればそうかもしれない
凪の性格等を分かっているこの場の人間は心の中で確かに頷いた
「それで?そこまで言うなら相当良い案なんでしょうね」
鋭く目を細めて匡二は慶次を見やった
慶次はこくりと頷くと自信満々に自分が考えた案を言った
「簡単さ。二人を殺す事。勿論本当に殺す訳じゃあない。半兵衛が生きている事、半兵衛の嫁さんの凪の事を快く思って無い人達とか、とにかく事情を知ってる人間以外に嘘を吐くんだよ」
あぁ、なるほど。とその場のうち三人は慶次の考えが分かった
成実だけ、頭を傾げていて慶次の言っている意味がわからないらしい
「『半狂乱の状態の半兵衛が、凪を手に掛けて自分も自害した』って」
「それで『殺す』、ね」
つまり死んだと思わせれば、暗殺だの何だのから解放されるという事だ
「でも言葉だけじゃ納得しない人間もいるだろ?」
それは忍としての経験なのか、佐助は慶次の案の隙を突く
「だからこれをするには、騙さない側の人間に協力してもらうのが大前提」
政宗でしょー、幸村でしょー、と指で協力者を数えていく
半兵衛はそんな慶次を見ていた。そこまでしてもらわなくても…いいのにと
腕の中にいる、自分の妻・凪がこの先幸せでいてくれればいいと思っているのだが…
「…それは今でなければ、駄目ですか?」
凪の一言に皆が凪を見た
「いや、…でも早い方がいいとは思うな」
「何故?」
「―――動ける理由が多いからだよ」
「「?」」
半兵衛も凪も疑問に思った
理由が多いとは、なんだろう
「今は成実が、伊達を離れやすい状況なんだ。政宗が、そう言う状況を作ってくれ「ば…っ!」
成実はばつが悪そうな顔をしていた
慶次は、成実が伊達を離れやすい状況だと言った。何故?
「…まだ凪には言ってないんだよ」
成実は頭をかくと、諦めた様に呟いた
「梵の優しさだよ」
「…?」
「公には、まぁ減封とかなんだけど…。梵は、そう言う理由を俺に与えて、伊達を抜けやすくしてくれたんだ。“待遇や周りに耐えられなくて”ってね」
そう言った成実は、何処か遠くを見ていた
言われた時を思い出しているのだろうか…
「皆の前から消えるなら今しかない。色んな軍の人間がごちゃごちゃ居る今、物や人が動く今、―――どうしてそんな事を聞くんだい?」
凪は一度俯いて考え、顔をあげて思いの丈を語る
「せめて、見送り位したいだけ…なんてわがままですよね」
苦笑する凪
見送りという単語に、彼女の兄、北斗があと僅かな日時で自分の世界に帰る事を思い出した
凪と北斗はもう、それきり逢う事が出来ない。理由は、凪はこの世界に死ぬまで止どまり元の世界に帰る事はなにがあっても出来ないと言うのと、北斗の命の灯火が遺り僅かだからだ
つまりは、今生の別れ
せっかく打ち解けれると思ったのに…
「政宗さん達に事情を話して居る間にお別れすればいいんですから、…さっきのはぼやきだって思って下さい」
彼女の小さな気持ちは、切なさで手折れてしまいそうだった
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