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願った事全て
空へ返してしまおう
凪の首に当てられた刃
引かれた刃
慶次も成実も凶刃に届かなかった。駄目だ、間に合わない。そう思った
しかし、血飛沫はあがらない。首筋を切られたと思っていたのに、凪は生きている
「佐、すけ…さん」
「はぁ、間に合った…?」
凶刃は、佐助の苦無で弾き飛ばされていた
半兵衛は刃を持っていた手を見た。びりびりと痺れている。それはきっと弾かれた衝撃の名残なのだろう
「ちょーっと、おいたが過ぎるんじゃあないの?竹中」
慶次の隣り、成実の横を通り過ぎ刃を弾き床に刺さった苦無を佐助は回収した
竹中から凪を奪い返そうとしたが、凪が止めた
竹中の腕を掴んで、凪は佐助の顔を見て首を横に振った
ガタン、と匡二もやって来たのを見た
駄目
ここで他人に頼るわけにはいかない
ゆっくり身を捩る
虚ろな瞳の半兵衛
伝わる、気持ち
(気持ちがわかる…何故だか分からないけれど、半兵衛さんの気持ちが分かる…)
半兵衛の頬に触れた
「…私の命は私だけのものです。それから、子供の命はその子のです。半兵衛さんが好きにしていいなんて事は…、駄目です」
刀を弾かれた手に手を持っていき、手を合わせた
「ありがとう、御座います」
瞳を閉じて、頭を半兵衛の胸に当てた
大丈夫。分かってる
不思議と伝わってくる気持ちをそのまま言えば良い
「私達を、想ってくれて」
「――――――」
半兵衛の息を飲む音が聞こえた
何故それを、とでも思っているのだろうか
「ねぇ、半兵衛さん。私は命を狙われるとしても…子供を産みます。貴方の子供だからじゃありません。一つの命だから、産みます。それに産まないと怒られちゃいますし」
成実は、はらはらしながら二人の―――否、凪の言葉を聴いている
佐助も、慶次も口・手を出せずにいた。それをさせない雰囲気を凪は出しているのだ
苦笑しながら、凪は続ける
「私がお母さんになるなんて、想像は出来ないけど、それでも産みます。大丈夫!成実さんが守ってくれるらしいですから!」
ぱぁっと苦笑から明るく笑い、凪は半兵衛を下から見上げた
「産んで、くれるのかい…?」
ぼそりと小さく呟かれた声
「はい!」
「……」
ぎゅうっ
半兵衛は、凪を抱き締めた
力強く、ぎゅうっと…
「伊達成実」
抱き締めたまま半兵衛は成実を見た
その瞳は軍師でもなく、先ほどまで虚ろな瞳をしていた彼でもなく、竹中凪の夫としての瞳だった
「彼女を、凪を、任せて大丈夫かい?大事な人、なんだ」
ふて腐れた様な顔をしていた成実は、半兵衛の問い掛けに真剣な顔つきになり、身を正した
胡座をかいて、真っ直ぐに視線を合わせる
「誰にものを言ってやがる。つーか、凪は俺の嫁になるから俺が守るのは当然。伊達三傑の名に恥無い様、守るさ。お前に願われなくてもな」
そうか、と半兵衛は呟いた
「あのさー、」
しんみり良いムードになっているこの状況下、空気を読んで無いんじゃないかという声のトーンで場を切り裂いた人間が出た
「ちょーっといいかな?」
慶次である
良い場面の時にどうしていっつも空気読めない行動・発言するかな。もしかして、少し鈍い?と成実は前々から少し思っているのだが、どうやら少しどころでは無いらしい
「半兵衛は離縁するつもりなのかい?」
「それが彼女の為なら」
「んー、でもさぁ離縁しても半兵衛の嫁さんだったってのは変えられない事実だし過去だろう?この情勢下、離縁しただけじゃ意味ないんじゃない?」
どうしてこいつを誘ったんだ自分、と成実は内心反省した
誘わなければ良かったと…
「俺さぁ、今すっごく良い考えが浮かんでるんだよね」
慶次の楽しそうな…いや、本人にはそんなつもりは一切ないだろうが、そんな声で言い放ったのである
誰もが思ってない言葉を
…良い考えとやらを
「ここで半兵衛と凪を殺しちゃえばいいんじゃないかい?」
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