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静かに心につもるものが、切なくて愛しい
こんな人、だっただろうか
以前は輝いていた様に思えたのに、今は輝きすら見えない。ただの人にみえる
この人物が豊臣が軍師竹中半兵衛だと、彼の顔を知らない人間が見てもこの様では「嘘だろう」と言う事は明らか、と言える程以前と変わってしまっている
「君、か」
窓が少し開いている
光がそこから差していて逆光で表情が見にくくなっている
降ろしてもらい、一歩踏み出す。しかし成実が腕を掴んだ
離す気は無いのが伝わってくる。慶次に視線を移すと、半兵衛の様にショックを受けている様で、成実を剥してもらう事は出来なさそうだ
仕方無いので成実と共に半兵衛の元へ行く
腰を降ろして座り、夫である人を見た
成実は座った凪と共に胡座をかいて座り、凪の片手を握った
「半兵衛さん」
「………」
彼はちらりと視線をある場所に向けた。言わずもがな、そこは凪の腹部だ
「身籠もっている、そうだね…」
「はい」
「僕の、だね」
当たり前だ。自分は半兵衛の妻になるまで、生娘だった。半兵衛に処女を無くされ、抱かれていた短い蜜月の間、彼以外には抱かれていない
間違なく、彼の子供だ
「あなたの、子供です…っ」
ぎゅうっと、凪の片手を握る成実の手の力が強まった
「…そうか」
「半兵衛さ…」
凪が半兵衛の頬を触ろうとした、その時
「でも…」
一瞬だった
気が緩んでいたのだろう。以前と全く印象の異なる半兵衛に対して、警戒を解いたのがいけなかった
「きゃっ…!」
半兵衛は、凪を祓い成実の腰物に手を伸ばしてそれを奪った
「竹中ッ!!」
「半兵衛ぇっ!」
成実と慶次の言葉が被る
半兵衛は、成実を突き飛ばして凪の手を引っ張り腕の中におさめた
首にはご丁寧に刃をそえて
「来るな」
「凪を離せ…っ」
失態だ。こう言う人間相手に刀なんて持って来た事自体失態だ。成実は悔やむ。取られたのも、彼にとっては大きな失態だろう
「僕の子なら、僕がその子をどう扱うか自由…。子供を思うのなら、ここで母親もろとも殺し、僕も果てる…!」
チャキ…ッ
首に当てられる冷たい刃が痛い。少しだけ顔を半兵衛に向けると、半兵衛は泣きそうな顔をしていた
とくん…
とくん…
半兵衛の目を見た瞬間、凪の意識が、引っ張られる。意識だけが、凪のものとは違うものに、引っ張られる
嬉しい
嬉しいなんて言葉しか出てこないけれど、それしか浮かばない
嗚呼、僕の子供。彼女との…
残り短い命の上、囚われの身の僕が今出来るのは彼女が幸せになれるように、僕から解き放つ事なのに
囚われの身、
─────嗚呼、そうだ
子供がいると他に知れたら、彼女と子供の命は危ないのでは無いだろうか
僕を生かす事自体、よく思われていないはずだ
幽閉されて、それでも気に入らない輩は暗殺者を寄越すだろう
そんな輩が彼女の懐妊を知ったら?
解き放つ以前の問題じゃないか
竹中半兵衛として、軍師として、彼女の…望まれなかった夫として、子供の父親として選ぼう
<center>凪、</center>
「半兵衛ぇっ!」
冷たい刃が横に引かれた
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