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悩んでいる暇は無い
「梵」
やはり来たか。何も言わずとも、来訪者は自分がここに居るのを分かっている。入室の許しも得ずに勝手に襖を開け、来訪者は入ってきた
「…」
「話があるんだ」
振り向けば、強い意思を灯した瞳でこちらを見る従兄弟がいた
何を言うつもりなのか、大方の見当はついている
「凪を連れて、国を出るよ」
この話が持ち上がった時、成実の事だからこの道を選ぶだろうと予感していた
政宗や元親等国を治める者は、全てを押さえ付ける事なんて出来はしない。反発は必ずある
竹中の幽閉に、擬を唱える者を押さえられないのは悔しい。しかし、押さえ付けてしまえば強硬な手段に出る事も予測出来るので容易に出来ない
反発している奴等は
《生かしておく必要は無い》
《生かしておけば、いつか争いの火種になるやもしれませんぞ!》
と言っている
そう言った意見の殆どは、生きている必要は無いと言う意見であり、きっと彼らは竹中の子を身籠もった女がいたら、子もろとも女も殺してしまえと言うだろう
―――禍根を絶つ為に
成実は、間違なくそんな事をさせないし、起こさせない為に凪にとって最良で、成実にとっては良くない選択を選んだ
「一年、長くて三年位消えたいと思う。自分勝手だけど、このまま凪が居る事で内乱が起きるかもしれない。それだけは避けなきゃいけない」
ぎゅうっと手のひらを握った
「だから―――「成実」
成実の言葉を遮り、政宗は成実の名前を口にした
隻眼の瞳は力強く成実を捕らえていて、成実と同じく強い意志を灯していた
この言葉を言わなければ、成実は自分達に後ろめたさを感じながら、国を出ていってしまうだろう
…この言葉が、政宗の考えついた
「お前に所領減封を言い渡す」
「え…?」
政宗は、何を言っているのだろう?
国を出て行くと言う話をしているのに、何故今・所領減封の話をされるのだろうか
「お前は言ったな。後世にA stupid military commander…愚かな武将と言われても良いと。代償は償いきれるか分からないと」
それは、凪を助ける為に起こす戦にしては代償が大きいと周りから言われ、成実がそれでも凪を助けたいと言った時に言った言葉だった
政宗は立ち上がり、戦場を共に駆ける六爪とは違う壁に掛けて置いた刀を手に取り、ほんの僅かな時間ソレを見つめて成実の方へ足を向けた
ドンッ!
政宗は刀を成実の目の前に立てた
「償いをさせる訳じゃないが、それなりの処分を受けさせる。それが所領減封だ。そこらの武士並にな」
政宗は成実を見下ろしたままだ
「―――梵?」
「これに納得いかないなら、何処にでもいきやがれ」
ガチャン
立てていた刀を、座る成実の方へ倒した
成実の肩に当たり、成実は直ぐさま刀に手を伸ばす
政宗の言った言葉が頭の中で飛び交う
混乱してしまうけれど、してしまう、けれど…
「梵」
分かった
今、分かった
自分の年と、政宗との付き合いの年数は同じだ
互いが何を考えているかは大体分かるし、行動も分かる
だから、分かる
口に出して詳しく言わなくても、目の前の従兄弟が自分をどうしたいかが、分かってしまう
政宗は、成実にあくまで武士・武将として国を出て欲しいと思っている事を
成実が、国を出るに事情を知らない輩が納得出来る理由を、与えようとしている事を
その結論が所領減封で、政宗はこれに成実が頷かない事を望んでいる
成実が、よく分からない理由で(詳細を知らない輩)奥州から姿を消せば、危ぶんだり怪しんだりする人間が、必ず出るだろう。成実を探す人間が、必ず出るだろう
だから、これしか思いつかないのだ
・・・・
いかにも、という理由で成実を国から出す方法は
(梵、)
成実は決めた
いや、昔からずーっと誓っていたが、この時より更に自分は強く誓うことを
(梵、ありがとう―――)
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