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幸せは、ひとのかずだけ
その知らせは直ぐに政宗の耳に入った
袴を履いていつもの格好より、きちっとした格好をしているのは、まだ終わってないからだろうか
知らせを聴くやいなや、立ち上がり小十郎と共にある部屋を目指した
長く続く廊下の先、北斗が目的の部屋の前にいた。座って壁に寄り掛かり、消えゆく者の儚さを漂わせながら…
「hey!」
「ん?…あぁ、伊達政宗か」
「知らせだ」
気怠そうに立ち上がった北斗の手が薄く透けたのを政宗と小十郎は見た
北斗は、スキニーのジーンズに白のカットソー・黒のカーディガンを着ていた。全て元の世界のものだ。特別に、こちらの世界で誂えた服は半兵衛に会った後直ぐに捨てた。もう使う必要性が無いからだ
だから、元々持っていた服を引っ張り出し、何年も袖を通して無かった服を着た。服は傷んでおらず、マメに干したりして良かったと思った
キラリと光るネックレスが単調な服を着ている北斗の中、唯一の飾り物で政宗の目に止まった
この穏やかで、だけど儚さを醸し出している男が自分の民――――、一夜と彬が言うには罪人の様なモノだったらしいが、それを殺戮した人物にはどうにも見えなかった。変わった、のだろう
「そうか」
知らせを教えたら北斗は瞼を伏せた
「…」
「複雑そうな顔をしてるな」
「…別に」
ただ、これで半兵衛には新しい糧が出来た
それを糧として、最期の日まで生きて欲しい。…凪がどうするかにもよるが
「産む、だろうか」
「知らねぇな。自分で聴きゃいいだろ」
ただ一つだけ言えるのは、半兵衛と凪の子供が凪の腹にいる。それだけだ
だけど先を考える
凪の性格と、成実のあの性格を考えれば答えは一つ位しか無い
小十郎も多分同じ事を考えているだろう
「…もうすぐ春だな」
春は、出会いと別れの季節だと…政宗は呟いた
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妊娠、していた
別に驚きはしない
ただ、成実の事を考えた
連れていかれた部屋の縁側で、きゅう、と握られた手が温かいけれど、今何を思っているのか知りたくなった
(成実さんが国を捨てたら、政宗さんや小十郎さん達はどうするんだろう)
隣りにいる成実の意思は変わらない。変える事は不可能だろう
国を出ると言う事は、深刻な問題だ…
守られるしか出来ない自分が歯がゆい。戦ったり出来たなら、成実が国を出る事なんて無いのに
というより…
成実が国を出るのは、凪が妊娠しているから。これは多分産む事前提なのだ
では、産まない。と言えば?自分勝手過ぎるが、それで成実が国を出ずにいられるなら?
「あのさ、言っとくけど」
ネガティブな方向、しかも最悪な方へ考えを進めていた凪を、成実は呼び戻して握っていた手を離した
そして、ひょいっ、と凪を軽々抱きあげ自分の太股の上に凪を乗せた
「ちょ…!恥ずかしいですっ!!」
「いや、恥ずかしがるなよ…」
変わらないと言うか、いや。それが凪の良い所なのかもしれない
ぎゅうっと後ろから抱き締めて、手を腹にあてた
「産まなければ良い、とか考えてたら怒るから」
「え…?」
優しく腹を撫でる成実は、凪の耳元で優しく言った
「俺、子供は天<ソラ>からの授かりモノって思うの。それが、自分とは違う野郎の子供でも、授かったからには産まれてこなくちゃならない。何があっても、だ」
「…」
「だから、産まないなんてのは許さないし、そんな事思ってたら怒るからな」
直ぐに頷く事は出来なかった
幸せは人の数だけある
多種様々で、形もありようも違う
この先に、どんな幸せがあるかなんて分からないけれど、前を向くしかないのだと、成実といると思う
流した涙が、頬を伝った