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ずっと、この目には
あの日のままの君が映っていた
「派手に燃えてるな」
「うん」
成実さんがここに上がる事は先ず無い
上がって来ないで下さいとお願いしたからだ
二人は少し間隔をあけて、大阪城の方を見て座っていた
燃えている大阪城。長くは無かったが、あそこで暮らしていた事実は変わらない。事実を飲み込んで、燃やしていく焔の勢いは衰える事が無い様だ
崩れゆく大阪城、それを静かに見ながら、凪は聴きたかったことを聞く為口を開く
「あのね」
「後悔も無いし、別に若くして死ぬ事にどうとも思わない。お前が死ぬ未来じゃない、それだけで願いは叶ったからな」
そうだ
願いは叶った
全ては彼女の母親の勘違いから始まった間違いだらけの────自己満足
「ごめんな。兄らしい事、何も出来なくて。遊んでもやらなかったし、優しくした事も無かったよな。駄目な兄貴でごめんな」
遊んでとねだる凪に、冷たい言葉を吐いた記憶は幾つかある
──────おにいちゃん
と舌足らずに呼ぶ凪。母親がいない、父親は凪のことを気にせず、世話は匡二とお手伝いさんばかり
そんな環境で育った凪は、酷く誰かのそばにいたがった。精神的不安定だったのだろう
その時の自分は凪を救うには何から始めるべきなのか分からなくて迷走ばかりで、そして、病んでいた
─────近寄るなっ!
─────お前がいるとイライラする!!ウザイんだよ!!あっちいけ!!!
あの日、凪とあちらの世界で別れた日
まだ弱かった自分は妹の存在がその時だけ疎ましくなった。好きだけれど、愛しているけれど、そんな言葉が出るくらいに病んでいた
その言葉の取り返しがつかない事に気がついた時、凪は家から出され一人アパートに追いやられていた
自分は、あの子のそばにいてはいけない。遠くから見守って、その時がきたら守れるようにするしかないのだと言い聞かせ、匡二も、きっと自身がそばにいれば嫌なことを思い出すかもしれないからと、凪とそっと距離を置いた
初めからこの結果を知っていたら、そんな事を、しなくてもよかった
ただ普通に愛して、普通に兄と妹という関係をしてあげれば良かった
父親も、継母も─────きっと、そうだろう
北斗は目を閉じた
今も昔も変わらない思いがある。ただ、変わらない思いを貫いた事で、失ったモノの方が大きいと改めて気づくなんて
すぅ、と目を開けて澄んだ空気に はぁ… と、息を静かに漏らした
「お前は俺の事嫌いだろうが、俺はお前を好きだし、守りたかったんだよ。異母妹でも、俺にとってたった一人の妹なんだ。産まれた日から、ずーっとだ。それは俺が死んでも、縁起でもないがお前がもし死んでも、その気持ちは変わらない。だから、気に病むな。自分が、とか止めろ。俺は、自分で望んで力を得た。自分で望んで力を使って、存在を削って、命を削って行ったんだ。自分の中の大事なモノだから、いいんだ」
「ごめんな、凪」
そう言った北斗の顔は、確かに後悔の曇りは無かった。むしろ、あまり見た事が無いほほ笑みをこちらに向けていた
芯の底からのほほ笑み。そんなの、見た事が無かった
「兄さ…、おにいちゃん…っ!!」
「あぁ、」
その声は優しくて、これが本当の兄だと思った
「おにいちゃん…!!」
「凪…」
北斗は目を瞑った
『死ぬを回避する為、他の世界に行かせるなんてそんなのさせない。この世界で、訪れる死とやらを回避してやろうじゃないか!』
ベッドで健やかに眠る凪の頭を撫でながら、北斗は対面に座る幼馴染みの匡二を見た
『凪を守るんだ』
始まりの日
それから、長い月日がたった
この腕に居る妹は、“少女”では無い。始まりの日から月日がたった証しである
「生きてくれ。選んだ相手と共に」
死に逝く俺の願い
死ぬのは怖くない
ただ思うのは、生きてくれ。と、言う事
幸せに、と思う気持ちは始まりの日から変わらないから
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