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あなたの名前
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――お前なら出来るんじゃないか?
その言葉は、二人の表情を硬直させた
「どうせ長くないんだ。だったら今にでもこの命―」
「何言ってやがる!!そんなの―――」
「無理に決まってるだろ?」
今度は北斗の表情が固まった
無理、という言葉が出たから
す、と彼の後ろから一人の男が現れた。左助もいる
「あれ、秋の姿じゃないんだな」
そう言った一夜は、にやりと笑い肩を少し揺らした
あの姿と言うのは少女“秋”の姿の事だろう
あの少女がこんな青年だと、誰が思うだろうか
「バカ言うな。あれはこいつのそばに居る為の格好だ」
「それでも良いけどな」
お前も物好きだなと青年は頭を横振った
二人は黙って、目の前の二人を見て居た
知り合い、と言う感じの話し方なのが疑問にしかならない
ぎゅうっと拳を握るが、手のひらには嫌な汗が浮いて居て気持ちが悪い
魔法使いの青年は先程まで、秋として羽織って居た外套を肩に掛け北斗の前までやってきてしゃがんだ
「まぁ、よくやったと言うべきか」
「え?」
眉をひそめて、北斗は聞き返した
よくやったとはなんだ。彼は、秋としてずっと自分の下に居た。いつその正体に気がついた?と聞かれれば、そんなの分からないと言うしかない。いつの間にかそう思っていた
ほかの子たちとは違う雰囲気、はぐれ異能者の集まりとはいえ彼女は雰囲気が違いすぎた
「師団長、お疲れ様」
「おい、あ···彬、アイツらの遺体は燃やしたぞ」
「見てたよ、すまんな」
「お前のお気に入りだったんだろう」
「まぁね」
「なんの、話を────」
二人の青年は周りを置いて話をする
誰もついていけてない
だれが死んで、誰を燃やした、と北斗は秋だった青年に飛びかかって聞きたかったが、次の言葉に絶句した
「あぁ、豊臣秀吉が、伊達成実に倒された。結構重体だし、助かるなんて事はない。そこの軍師さんも一緒に城を出たほうがいい。この城は直に落ちる。豊臣滅亡だね」
「秀吉が…!?うそだ…!!」
「うそは吐いていないし、それをする理由が無い。統率者を失った戦は負ける。軍師が居たとしてもだ。まぁ別にここで城と共に果てるも良しだが」
「…」
「─────彼女が目を覚ます前にここは出た方がいい」
「え・・・?」
彼女、と言われる対象は一人しかこの場にいない
北斗、匡二、半兵衛の視線が凪に注がれた
「もうすぐ落ちる城の中で、全てを語るには時間が無い。だから自分の足で歩ける奴は自分で歩いてでろ。彬、彼女を」
「俺は手を貸さない。と言うかこの餓鬼に関する事は全てお前等が持つ筈だろ。俺が関わると決めたのは、交換条件の話位だ」
でも、今更だろ?と一夜は彬に手伝う様促した
仕方ないと彬は溜め息をついて、手伝う事を決めたらしい
「猿飛、入口から此所までの最短の道順覚えているよな?そこを通って、外に出ろ」
「別に良いけど…あんたは?」
・
「俺達は道順を示さなきゃいけない奴がいるから、それをした後逃げる。彬、頼んだ」
「はいはい」
左助は匡二に、大丈夫か。と聞き速く此所を去ろうとうながした
手術を終えたばかりの凪を、自分達の世界の魔法使い…あまり信用ならない相手に預けるのに匡二は嫌な気持ちを抱いていた
しかし、否と言わさせぬ程の気迫を彼らは持っていて北斗と共に立ち上がった
…半兵衛は、違う場所に行こうとしたが
「何処に行くつもりだ。竹中半兵衛」
「秀吉が倒れたなら、僕はそこへ行かなければ…。城が落ちようと、確かめなければ…」
「俺の話を聴いて無かったらしいな…。あれじゃ助からない。既に虫の「僕は軍師で、彼の友だ!!彼の夢の為に、今まで頑張って来たんだ…。こんな形で終わらせはしない…!!」
パン!と乾いた音がする
一夜は、半兵衛の頬を何のためらいも無く叩いた
「天下統一っつー、御大層な夢よりお前にはやらなきゃいけない事があるだろうが。このまま、秀吉の所に行けば確実に死ぬぞ」
半兵衛は自嘲気味に微笑んだ
「どうせ、病で長くないなら武人として死んだ方が幾らかマシさ」
「彼女に何も伝えられないままでもか」
「…誰かから口伝てでも気持ちは伝わる」
「伝わらないよ。表面的なものは伝わっても、感情の細部までは伝わらない。…悪いな」
ふ、と一夜は半兵衛と間合いをつめて、一撃を彼に繰り出した
それは一瞬の出来事で、その一撃は彼の鳩尾に沈んだ。いきなりの衝撃に、半兵衛は意識を失った
「悪い、猿飛。こいつを担いでくれ」
二人のやり取りを見ていた為まだ脱出していなかった左助に、意識を失った半兵衛を担ぐ様に指示した
「いいのかい?きっと目覚めて秀吉が死んでたら、自害するぜ?」
「彼女に彼はまだ必要だ」
誰かに必要とされているなら、生きなければならない
そう呟いた
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