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ふわり、ふわり
とおくで、よんでる
でも、ふしぎ
まえにね、
からだがうごいて
よびごえに、ふりかえれないの
あれは、だれのこえ?
あそこからも、あっちからも、
きこえるこえは、だれのこえ?
わからないよ
わからないもん
わたしは そのばしょに
すわりこんだ
「こちらに…」
ふ、ときこえたこえに
からだはしぜんとむいた
そこには、ひとがいた
「お久し振りですね、といいたいですけれど…、まずそのお姿を直しましょう」
めのまえの、
むらさきのかみのおねえさんは
わたしの、あたまをなでた
ひかりが見えて、わたしは私になっていた
「貴女は…」
「お久し振りでございます。凪様」
目の前の女性は、四月だった―――
四月は、四国を訪れた時に出会った不思議な力を持った女性だった
紫電の髪は今も変わらず美しい。にこりと微笑む四月に、凪も釣られて笑った
「この時を待っていました」
「え?」
「ここは生と死の狭間、あちらを」
ぼぅ、と明るくなった場所に見えたもの
それは血を流して、意識を失った自分がだった
『君じゃなくても良い…な訳ないじゃないか』
意識を失った自分の頬を、半兵衛が撫でた
流れる血を止める為、成実がびりびりと服を破り、止血をする
成実の青の布が流れる血で赤く染めて行く
成実は一瞬考えて、腹部を氷で軽く凍らていた
『凪、目を開けろ!』
成実が必死に目を開けるように、自分に訴える
兄は呆然としていて、
「私、死ぬの?」
なんとなくそう思った
それに四月はここを生と死の狭間と言っていた
「短い人生だったなぁ…」
「…、今度はあちらを」
ぼうっ、とする先に見えるのは、大阪城にいる筈の無い――――
『匡にぃ…?』
匡にぃは、城の外にいる筈で、目が…見えない筈なのに、迷う事無い足取りで兄の方へ
ぼうっとしている兄は匡二に肩を掴まれて、はっと意識を戻した
『何を惚けている!!妹があんなに状態なんだぞ!君は――――、医者だろうっ!!!!狙撃手でも、何でもいいが、君は凪の兄で、医者だろう!!彼女を死なせる気か!!見えない未来を回避する為に、頑張ってきた対象を死なす気か!!何の為に医者なった!!こんな時の為だろう!!』
どくん、と心が揺れる
兄はふらりとその場から消えた
ぽん、と肩を叩かれ振り返れば
「…」
皆の姿が見えた
大阪城が見え隠れしているから、城から遠くも無く近くも無い所にいるのが分かった
それぞれ明るいカ所には、何処かへ走っている政宗さん・小十郎さん
武器を振り回している信玄さん
女の人と何か話している元親さん
それから、倒れている幸村さん―――
「幸村さん!!」
何故、どうして、彼が
動揺する心はどうする事も出来なくて、胸元で、ギリッと手のひらを強く握った
ふいっ、と、顔を背けたら光の中、一つだけ違う光があった
「成実さん、慶次さん」
二人が、秀吉と戦っている――――
そこだけ、妙に明るくて、何故か泣きたくなるほど明るくて、だけど見ていられなくて
静かに頬を伝う涙がとても冷たくて、傷を負っていく二人に止めてと、届かないのに懇願した
「まだありますよ」
ぶわっと後ろに広がる光
その光一つ一つに、昔の出来事が映像として浮かぶ
成実さんと初めて出会った時
初めて城下町に行って迷惑をかけた時
成実さんが実家に帰ってしまっていた時
匡二とこの世界で出会った時
恋を、自覚した時
沢山の“思い出”が、後ろには広がっていた
「これが私の最期のやるべき事。
凪様、
生きて」
「え―――?」
この世界の思い出の先に、また違う思い出が、見えた
そこから聞こえるメロディー
その旋律に、彼女は言葉をのせた
《小さなその手には》
《無限の未来がある》
《朗らかに笑う貴方は》
《私の天使なのでしょう》
《眠りつく優しい時の中で》
ゆめ
《どんな未来をみるのだろう…》
「これ、は…」
これは、ずーっと昔に聞いていた歌
…………子守歌
朧気ながら覚えている、母さんが歌っていた、子守歌
ポロン、ポロン、
優しい旋律は、母と四月の二重奏
そこに、オルゴールの音
凪
「誰…?」
絶対助けるからな凪!
持ち堪えろ、凪…っ!!
……どうか、
………凪
どくん、
凪
凪、
頑張れ、
生きて、
頑張れ、頑張れ
助かったら、
それは、皆の声
私を呼ぶのは
みんなの、声
でも、光から違う声が
今私を呼ぶものとは違う声が、聞こえた
何故、君は、
「半兵衛さん…?」
これは半兵衛の声だ
好きなのに、伝わって無かったのだろうか
君じゃなくてもいいだなんて、言うなんて……
同情じゃない
本当に好きで、愛してるのに
確かに僕は人を騙せられるけれど、君を騙した事は無いのに
先が無いという事実は話さなかったけれど、話せなかっただけなのに
悲しげに時折笑う君が、隠れて想いを馳せながら静かに泣く君が、可愛くて、話に聞いてた時より、実際同じ時を過ごす様になった時から、僕には君しかいらないと思えたのに
どうして、否定するんだ
どうして、…伊達成実を庇ったんだ
どうして、僕は、剣を退かなかったのだろうか…
目を、覚ましてくれないか
まだ、言わなきゃいけない事があるんだよ
言わせて、くれ
ふっ、と、半兵衛の声が消えた
声がした場所には半兵衛さんがいて、少し憔悴している様に見えた
「私、勝手な言葉を彼に吐いたんだ…。優しさは本物だったのに、彼にヒドい言葉、吐いたんだ…」
「今からでも間に合いますよ。まだ、というか間に合わせてみせます。死なせません。言ったでしょう?私の最期のやるべき事だって」
にこりと笑う四月
凪は正面を向いて向き合った
「…戻れるのですか」
「凪様の意志も必要ですけれど」
「…私は、戻るだけの価値がありますか?皆を傷つけて、悲しませて、…闇を避ける為に母がした事でこんなにも人が傷ついているのに、皆の元へ戻ってもまた…」
「価値の無いなんてこと世界には有りません。存在には何かしら意味があります。私が存在したのは、貴女を導く為。弟が存在するのも、貴女を導く為。北斗さんと匡二さんが存在するのは、貴女を守る為、凪様が存在するのは、―――もう分かっているのでは?」
「―――」
「誰かが必要としている限り、意味はあります。必要としてなくても、また違う場所で必要となります。それが世界。だから、価値がどうとかはあまり意味はありません。生きて居るだけで価値があり、意味があるのですから。さぁ、私に導かせて下さいませ」
四月は手を差し出した
それに手を重ねると、ふと思った事を聴いた
「四月さん、貴女も戻るんですよね?此処は生と死の狭間。勿論、あの世界に戻るんですよね?」
「 」
静かに四月は笑った
重ねた手にぬくもりは無い。むしろ冷たかった
最期、冷たい手
それが意味して居る事は、一つしかないだろう
「四月さ…」
「私は死者です。あちらにはもう器も無い。あぁ、凪様。これは仕方の無い事ですので、どうかその泣き出しそうな顔はおやめ下さいまし。元々、長生きはしないと分かってましたから」
四月は空いている片手で、凪の頬に手を添えた
「ずーっと昔から、私、貴女の為に生きてきました。だからこうして役にたてることが、とても嬉しく思います。だから泣かないで…」
コォオオオオ
手のひらから光が溢れている
光は温かくて、四月の冷たさと交わり心地よい温度になっていた
光が、眩しい
…ここから先へは、凪様一人です。
大丈夫…、あの歌を、耳を澄まして聞いて下さい。
あぁ、それから…赤い人に気をつけて…
さよなら、凪様
優しすぎるのが、玉に傷だけれど
…ずーっと
ずーっと
見てます
ずーっと
ずーっと…
彼女の声はそこで止んだ
彼女の冷たい手はそこで感じられなくなった
彼女の、切ない願いだけが、耳に残った
とおくで、よんでる
でも、ふしぎ
まえにね、
からだがうごいて
よびごえに、ふりかえれないの
あれは、だれのこえ?
あそこからも、あっちからも、
きこえるこえは、だれのこえ?
わからないよ
わからないもん
わたしは そのばしょに
すわりこんだ
「こちらに…」
ふ、ときこえたこえに
からだはしぜんとむいた
そこには、ひとがいた
「お久し振りですね、といいたいですけれど…、まずそのお姿を直しましょう」
めのまえの、
むらさきのかみのおねえさんは
わたしの、あたまをなでた
ひかりが見えて、わたしは私になっていた
「貴女は…」
「お久し振りでございます。凪様」
目の前の女性は、四月だった―――
四月は、四国を訪れた時に出会った不思議な力を持った女性だった
紫電の髪は今も変わらず美しい。にこりと微笑む四月に、凪も釣られて笑った
「この時を待っていました」
「え?」
「ここは生と死の狭間、あちらを」
ぼぅ、と明るくなった場所に見えたもの
それは血を流して、意識を失った自分がだった
『君じゃなくても良い…な訳ないじゃないか』
意識を失った自分の頬を、半兵衛が撫でた
流れる血を止める為、成実がびりびりと服を破り、止血をする
成実の青の布が流れる血で赤く染めて行く
成実は一瞬考えて、腹部を氷で軽く凍らていた
『凪、目を開けろ!』
成実が必死に目を開けるように、自分に訴える
兄は呆然としていて、
「私、死ぬの?」
なんとなくそう思った
それに四月はここを生と死の狭間と言っていた
「短い人生だったなぁ…」
「…、今度はあちらを」
ぼうっ、とする先に見えるのは、大阪城にいる筈の無い――――
『匡にぃ…?』
匡にぃは、城の外にいる筈で、目が…見えない筈なのに、迷う事無い足取りで兄の方へ
ぼうっとしている兄は匡二に肩を掴まれて、はっと意識を戻した
『何を惚けている!!妹があんなに状態なんだぞ!君は――――、医者だろうっ!!!!狙撃手でも、何でもいいが、君は凪の兄で、医者だろう!!彼女を死なせる気か!!見えない未来を回避する為に、頑張ってきた対象を死なす気か!!何の為に医者なった!!こんな時の為だろう!!』
どくん、と心が揺れる
兄はふらりとその場から消えた
ぽん、と肩を叩かれ振り返れば
「…」
皆の姿が見えた
大阪城が見え隠れしているから、城から遠くも無く近くも無い所にいるのが分かった
それぞれ明るいカ所には、何処かへ走っている政宗さん・小十郎さん
武器を振り回している信玄さん
女の人と何か話している元親さん
それから、倒れている幸村さん―――
「幸村さん!!」
何故、どうして、彼が
動揺する心はどうする事も出来なくて、胸元で、ギリッと手のひらを強く握った
ふいっ、と、顔を背けたら光の中、一つだけ違う光があった
「成実さん、慶次さん」
二人が、秀吉と戦っている――――
そこだけ、妙に明るくて、何故か泣きたくなるほど明るくて、だけど見ていられなくて
静かに頬を伝う涙がとても冷たくて、傷を負っていく二人に止めてと、届かないのに懇願した
「まだありますよ」
ぶわっと後ろに広がる光
その光一つ一つに、昔の出来事が映像として浮かぶ
成実さんと初めて出会った時
初めて城下町に行って迷惑をかけた時
成実さんが実家に帰ってしまっていた時
匡二とこの世界で出会った時
恋を、自覚した時
沢山の“思い出”が、後ろには広がっていた
「これが私の最期のやるべき事。
凪様、
生きて」
「え―――?」
この世界の思い出の先に、また違う思い出が、見えた
そこから聞こえるメロディー
その旋律に、彼女は言葉をのせた
《小さなその手には》
《無限の未来がある》
《朗らかに笑う貴方は》
《私の天使なのでしょう》
《眠りつく優しい時の中で》
ゆめ
《どんな未来をみるのだろう…》
「これ、は…」
これは、ずーっと昔に聞いていた歌
…………子守歌
朧気ながら覚えている、母さんが歌っていた、子守歌
ポロン、ポロン、
優しい旋律は、母と四月の二重奏
そこに、オルゴールの音
凪
「誰…?」
絶対助けるからな凪!
持ち堪えろ、凪…っ!!
……どうか、
………凪
どくん、
凪
凪、
頑張れ、
生きて、
頑張れ、頑張れ
助かったら、
それは、皆の声
私を呼ぶのは
みんなの、声
でも、光から違う声が
今私を呼ぶものとは違う声が、聞こえた
何故、君は、
「半兵衛さん…?」
これは半兵衛の声だ
好きなのに、伝わって無かったのだろうか
君じゃなくてもいいだなんて、言うなんて……
同情じゃない
本当に好きで、愛してるのに
確かに僕は人を騙せられるけれど、君を騙した事は無いのに
先が無いという事実は話さなかったけれど、話せなかっただけなのに
悲しげに時折笑う君が、隠れて想いを馳せながら静かに泣く君が、可愛くて、話に聞いてた時より、実際同じ時を過ごす様になった時から、僕には君しかいらないと思えたのに
どうして、否定するんだ
どうして、…伊達成実を庇ったんだ
どうして、僕は、剣を退かなかったのだろうか…
目を、覚ましてくれないか
まだ、言わなきゃいけない事があるんだよ
言わせて、くれ
ふっ、と、半兵衛の声が消えた
声がした場所には半兵衛さんがいて、少し憔悴している様に見えた
「私、勝手な言葉を彼に吐いたんだ…。優しさは本物だったのに、彼にヒドい言葉、吐いたんだ…」
「今からでも間に合いますよ。まだ、というか間に合わせてみせます。死なせません。言ったでしょう?私の最期のやるべき事だって」
にこりと笑う四月
凪は正面を向いて向き合った
「…戻れるのですか」
「凪様の意志も必要ですけれど」
「…私は、戻るだけの価値がありますか?皆を傷つけて、悲しませて、…闇を避ける為に母がした事でこんなにも人が傷ついているのに、皆の元へ戻ってもまた…」
「価値の無いなんてこと世界には有りません。存在には何かしら意味があります。私が存在したのは、貴女を導く為。弟が存在するのも、貴女を導く為。北斗さんと匡二さんが存在するのは、貴女を守る為、凪様が存在するのは、―――もう分かっているのでは?」
「―――」
「誰かが必要としている限り、意味はあります。必要としてなくても、また違う場所で必要となります。それが世界。だから、価値がどうとかはあまり意味はありません。生きて居るだけで価値があり、意味があるのですから。さぁ、私に導かせて下さいませ」
四月は手を差し出した
それに手を重ねると、ふと思った事を聴いた
「四月さん、貴女も戻るんですよね?此処は生と死の狭間。勿論、あの世界に戻るんですよね?」
「 」
静かに四月は笑った
重ねた手にぬくもりは無い。むしろ冷たかった
最期、冷たい手
それが意味して居る事は、一つしかないだろう
「四月さ…」
「私は死者です。あちらにはもう器も無い。あぁ、凪様。これは仕方の無い事ですので、どうかその泣き出しそうな顔はおやめ下さいまし。元々、長生きはしないと分かってましたから」
四月は空いている片手で、凪の頬に手を添えた
「ずーっと昔から、私、貴女の為に生きてきました。だからこうして役にたてることが、とても嬉しく思います。だから泣かないで…」
コォオオオオ
手のひらから光が溢れている
光は温かくて、四月の冷たさと交わり心地よい温度になっていた
光が、眩しい
…ここから先へは、凪様一人です。
大丈夫…、あの歌を、耳を澄まして聞いて下さい。
あぁ、それから…赤い人に気をつけて…
さよなら、凪様
優しすぎるのが、玉に傷だけれど
…ずーっと
ずーっと
見てます
ずーっと
ずーっと…
彼女の声はそこで止んだ
彼女の冷たい手はそこで感じられなくなった
彼女の、切ない願いだけが、耳に残った