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「君じゃなくても良い…な訳ないじゃないか」
意識を失った凪の頬を半兵衛は撫ぜる
成実は脇腹から流れる血を止める為、自分の服を破り止血をするがじわりじわりと青の布を赤く染めて行く
これでは駄目だと、力を使い腹部を氷で軽く凍らせる
これで血が流れる事は防げるはずだ
「凪、目を開けろ!」
成実は必死に目を開けるように促すが、彼女は目を瞑ったまま
(―――――)
北斗は妹のそんな姿を見て、呆然としていた
何故、何故、
頭の中で、ふと
彼を思い出した
「――――――」
「凪様!!」
ゆっくり振り返れば、ここに居るはずの無い男
「匡、二」
「何なんですか、これは…!!」
横たわる凪
脇腹近くの血塗れた畳
凍らせられた腹部
・・・・・・・・・
彼には、見えていた
片手には刀を握り締めた彼は、凪の元へ駆け寄った
「直ぐに止血しないと…」
「何故君がここにいる。確か彼女が外に預けたはずだ」
半兵衛が、駆け寄った匡二に言うと彼は一蹴した
「今そんなのを説明してる暇は有りません!!…北斗!!」
「……」
「北斗っ!!」
匡二に肩を掴まれて、はっと意識を戻した
色々考える事はたくさん、たくさんある
だけど
「何を惚けている!!妹があんなに状態なんだぞ!君は――――、お前は医者だろうっ!!!!」
「―――!!」
「狙撃手でも、何でもいいが、君は凪の兄で、医者だろう!!彼女を死なせる気か!!見えない未来を回避する為に、頑張ってきた対象を死なす気か!!何の為に医者なった!!こんな時の為だろう!!」
「、」
北斗の中で何かが、音をたてた
「―――」
北斗はふらりとその場から消えた
チッ、と舌打ちをして北斗は凪の身体をみた
見えないうちに、大人びた感じが出た
少女から、女性になった変化なのだろう
成実と半兵衛を見ると、悲しそうにしている
きっとどちらかが傷をつけたのだろうと、理解した
「後でたっぷり、聞かなくてはいけない事が沢山ありますから」
取り敢えず退いて下さい
氷を溶いて下さい
と言うと、何も出来ないと判断した二人は凪から離れた
現代の様な医療器具が無い現在、彼女の傷を完全に処理する事は難しい
せめて――――――――
「必要最低限の道具ならある」
その声は、大きなトランクを持った北斗だった
「こんな所で死なせはしない。それに、こいつにはこの世界で生きて限りある未来を歩んでもらわないと、な」
その顔は、非情な死神の顔でも無く、惚けていた兄の顔でも無く、凛々しい医者の顔をした、妹を想う兄の顔だった
――――――――――
いきなりの事態
二人は戦意を無くし、二人の凪を助ける作業をじぃっと見ていた
「何故、どうして、」
泣き崩れる訳では無いが、それに近い感じで項垂れる半兵衛
自分の手で、彼女を傷付けた事がショックだったのだろう
「何故、あの場面で」
「あいつは、そう言う奴だよ」
丁度移動した先にあった、水葬蓮華を成実は拾う
刀身に映る自分の顔は疲れている顔をしていた
「場所、考えりゃ良かった。そうすれば、こんな事には…」
左手の拳を、顔にまで持っていき、それを悔やんだ
「成実!!」
はっ、とすると慶次がいた
慶次は、先程の連中と戦っていた筈だが、ここに居ると言う事は勝って此処に来たのだろう
意外な雰囲気に慶次は動揺した
そして、ちらりと見えた血と横たわる凪を見て、成実に詰め寄った
「なにがどうなってるんだい!凪が何で…!」
「外野ッ、煩いッ!!」
必死に凪を救おうとしている二人のうち、どちらかが声を荒げた
「…凪は俺を助けようとして」
静かに呟いた
半兵衛の凶刃にやられそうになった成実を庇い、凪はああなった事を告げた
「なんだよ、ソレ…っ」
「アイツが死んだら、俺…」
「しっかりしろ成実っ」
二人はもう駄目だと判断する
呆然としていて、全く駄目だ
凪は今、大変な状態なのにそれから目を逸している
(彼女が帰れなくなる、ってまさかこの事かよ)
生死の境目にいる凪が、こちら側に帰れなくなると言う意味だったら、自分に何が出来ると言うのだろうか
手際よく治療していく、北斗達
自分は、医者ではないから治療なんて以ての外だ
じゃあ、治療以外で助ける事は、なんて考えるけれどもそんなの浮かばない
不自然だった
此所に居る事が
見た事も無い器具を使って治療をしている二人だが、やり辛そうな雰囲気を慶次は察する
「――――――」
慶次は、ぎゅうっと拳に握ると、決めた
「秀吉に、会って来る」
「は――?」
慶次の一言に、半兵衛と成実は顔を上げた
「降参してもらう様に説得する。それで、凪を外に連れ出してちゃんとした場所で治療するんだ」
「そんなの僕は許さない…。この戦いは…」
「目の前で!一人の女の子が死にかけてるんだぞ!!しかも半兵衛、お前の奥さんだろう!?お前と秀吉が、この戦に何をかけているかは知らないけど、凪を見捨てるつもりか!?」
「君には分からない。秀吉の夢を――「分りたくないね」
慶次は半兵衛の胸倉を掴み上げて、言った
「失ったら、戻らない。まだ、帰ってくる可能性があるんだ」
だから俺は行くよ
そう言って、慶次はその場を去った
成実は先程の慶次の言葉を聞いて、考えこむと慶次のあとを追った
「―――」
それぞれが
自分の出来る事をしている
彼女の為に
やらなければいけない事は沢山ある筈なのに、目の前の光景をみると体が動かなくなる
ただ、思うのは
―目をあけて―
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