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ドォオオオオオン…ッ
爆風で吹き飛ばされ、そしてそれと同時に火が彼らを襲う
「グァッ!」
死ぬ、と思った
目を瞑り、覚悟をした
しかしいつ迄たってもその時は訪れない
いや、もしかしたらもう…、と思いおそるおそる目を開けて見れば、目の前に少年が立って居た
「『退け』」
そう言うと、不思議な事に周りは火でいっぱいだと言うのに、そこだけぽっかりと火が無い空間になっていた
焦げた髪や服からは、物が焼けた独特の匂いがしているので、先程まで爆発の中に居たのは間違ない
「『止まれ』」
そう言うと、炎の揺らぎが止まった
まるで時間が止まったかの様に
「――――」
「あんたは一体――、「う…っ」
呻き声にハッとして、佐助は振り返った
慶次が横に倒れていた。慶次に近付いて体を起こすと、所々慶次の体に火傷が見えた
「無事か?」
「に、見える…?」
佐助は懐から薬を探したが、生憎都合の良い薬が見当たらない
「火傷したか」
少年は、二人の前に座り込むと慶次の火傷の度合いを見た
「痛みは止められるが、あくまで一時的なものだ。前田慶次、お前がいないと彼女は、
・・・・・・
帰れなくなる」
だから身体張って
アイツらを倒せ
炎の揺らめきが再び始まる
それに気を取られていたら、いつの間にか痛みが消えていた
「出来損ない如きが」
嘲るようにして一夜は空間を破った
一瞬にして炎が消える
「火が、消えた――――?!」
「こいつ…」
着物の袖から腕を抜く一夜
消えた炎の中から、敵の二人が現れる
一人は、倒れ
一人は、胸を押さえて跪き、血を流し荒い呼吸をしていた
「所詮、出来損ないだな」
にやりと笑う一夜
「出来損ない…?」
「力を持つ一族に生まれたとして、必ずしも力を受け継ぐ訳では無い。変異とも呼ばれるけど、力を持たなかったり半端な力を持つ人間もいるのさ。それが死神率いる死神部隊の構成員」
一夜はゆっくり彼らに近付いた
「力を持たなかったのは宿命。だが一族に生まれたなら、その意味を、生を受けた意味を知り真っ当すべきだ」
「お前に、何が分かる…っ!一族に……っ、人間扱いされない…、俺達の……!!」
苦しそうな頼の前に立つと、一夜は頼を蹴飛ばした
「『黙れ』」
そう言うと頼は喋りたくとも、喋れなくなった
「力を持っていても、人間扱いされねぇ?戯言ほざいてんじゃねぇよ!!!」
左助と慶次は二人を見ていた
一夜は言葉を発して、頼の身体から硬い何かを作り出した
「あれは……」
「前田慶次、お前は伊達成実を追え。猿飛佐助、お前は、こう言うの―――――出来るだろ」
「何、するつもりだよ…!!」
「覚悟はしてる筈だ。こいつらは。同族殺しなんて、馬鹿な真似して来たんだからな」
一夜の手にあるのは
ある、のは
赤い紅い紅い刃
「や、止めろって!!殺す事無いだろう!?」
「人間が口を出すんじゃねぇっ!!!!」
びくり、と身体が反応した
「口を出すんじゃねぇって…」
「旦那、そう言う世界なんだよ」
「―――――」
「きっと、彼が言う異能者の世界は、忍の世界と根本的に似てる世界なんだ。きっと…。裏切り者に先は無い。裏切り者には死を。そしてそれは仲間の手で。それがせめてもの情け、だろうさ」
「ここでの事を引きずったまま、彼女を救い出せるなんて思ったら大間違いだぞ。前田慶次。前を見ろ、先を行け。お前の役目は、彼女を―――」
「分かった―――」
きっと何を言っても無駄だろうと判断した
同族殺しがどれほどの意味を持つのかは分からないけれど…
無抵抗の人が死ぬ場面というのは、
「前田慶次」
そこから先に行こうとした慶次に声を掛ける一夜
二人は背中を向けている
「お前には今、ある言霊が働いている。無事に帰って来たら言霊を解くから、覚悟してろよ」
慶次は無反応のまま、その場を去った
残されたのは四人
キラリと鈍く光るのは、血の刃
頼の血を凝固させ、刃を作ったのだ
「家族を殺してもらってまで生きて、それを恩と思うのか」
苦しそうにする頼
こくん、と頷いた
「親にも恩は無いのか」
再びこくん、と頼は頷く
その反応をする頼に一夜は、頼の肩にぐさりと血の短剣を刺した
「――――」
佐助はくるりと二人に背を向けて、先程まで戦っていた颯の前に立った
腰を降ろして、膝を片方つき、彼を見た
―――――事切れている
目立った外傷が無い
服等焦げているが、顔は小綺麗だった
しかし胸をよく見ると何かが刺さっていた
鋭く尖った木の破片だった
これがきっと致命傷
佐助は、颯の頭を持ち――――――
やる事を終えて、佐助は二人の方へ戻る
頼も―――――
「終わったのか」
一夜が問うて来た
佐助はちらりとあちらを見る様に促す
目だけそちらに向ける
「そっか」
頼は、穏やかな死に顔をしていた
「あとまだ一人この城には死神部隊の人間がいる。そいつを探し出す」
「ちょ、待った!!あんた…!」
「俺は俺の役目を果たしに来ただけ。さっさといくぞ猿飛佐助」
一夜は前へ進んだ
二つの遺体をその場に残し、仕方なく左助はついて行く
得体の知れない人物だが、何故か彼に従うしか出来なかった
「あんた何者なんだ」
「俺は、…アイツらと同じ異能者。さっき聞いて無かったか?前田慶次にいった内容」
「…言霊って奴か」
「ごめーとー。言霊使いって奴だ。言葉に力を持たせて思うがままにする力。例えばアンタに「真田幸村を殺せ」って言葉を掛ければ、アンタはそれを実行する。あ、今のは言霊じゃないから安心しろよ。使い分けてるから。だから殺気を出すな」
「随分都合良い力だな」
「まぁな。ご都合万歳、ってね。さてと、あっちもあっちで役者は揃ったはずだ。手早く目的探し出して、退路確保したら、アンタの主人の所まで急ごう。苦戦してたみたいだからな」
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