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ブルッ
成実は寒気に体を震わせた
…何だろうかこの嫌な悪寒は
「(気のせいか)」
いや、成実の悪寒は間違ってはいなかった
「いいか、小十郎…ッ!成実に言うんじゃねぇぞ…!!」
凪の政宗部屋にお泊まり計画(決定事項)に政宗は内心焦っていた
あれは冗談だった、そのはずだった
「まぁアイツの耳に入ったら確実に手合わせと称した何かが始まるでしょうな。あそこまで警戒、心配している癖に己の気持ちに気付かないなんて馬鹿というか、なんと言うか」
「仕方が無い。今までは自分に好意を抱いてる奴しか周りにいなかったんだ。自分から好意を抱くなんてなかったじゃねぇか」
それでもあれは鈍感すぎる
「俺から言った手前断れねぇし、今日は仕方無い」
溜め息をつく政宗
仕方無いと言う割りには何処か嬉しそうなのだが、気のせいではあるまい
「楽しそうですな政宗様」
「Ah?楽しそう?」
「えぇ。まぁ若干焦っておられるようですが、楽しそうにみえます」
小十郎に言われてよく考えれば確かにそうかもしれなかった
こんなにゆっくり凪と話せるなんてあまり無い機会だ
まだ聞いた事の無い異世界の話をしてもらうチャンスだ
「手は出さねぇ」
そういうと政宗は立ち上がった
「下の者達にも他言しないように伝えておきましょう。成実の耳に入らないように」
「そうしてくれ」
夢を、みた
おかーさん
おかー…さぁん…
ウッ…ヒック…
(凪?どうしたんですか?)
おかーさんが、いないよぅ…
何処にいるかわかる…?
(…あの…それは)
(テメェの母親は何処にもいない。この家にも、町にも、国にもだ)
(ちょっ…)
(お前が母親に会える事はもうねぇよ)
おかーさん…いないの?
(あぁ)
ウッ…ヒック…ウワァアン
(寂しいなら俺の部屋に来てもいいよ。凪が寂しくないようにずっと側にいてあげる。朝も、夜も、ずっと)
ウワァアン
(…おいで)
それは昔の夢だった
あの二人がいる夢
嘘つき。ずっとなんていてくれなかったじゃない
嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき!!
「ぅ…」
瞼をゆっくりあけた
ぼやけている天井
あぁ、現実だ。うたた寝をしてしまったらしい
凪は上半身のみを起こすと目を擦った
懐かしく、悲しい夢
「寂しいなら側に、か」
この世界に来てから凪は必ず誰かと一緒にいた
それは無意識で、淋しいから一緒にいたのだと今の夢をみてそう思った
一緒に寝るかと政宗に言われたからこんな夢をみたのだろう
あの人もよく一緒に寝るかと誘ってくれた
今は昔の話だけれど
「…そういえばこの世界に来てからかなりたつなぁ…流石に騒ぎになってるかな」
私は一人暮らしだから、いなくなっても直ぐに誰かが気付くなんてないだろう
家族も私を一人暮らしさせる位だからいなくなって清々しているだろうか
あの二人はーーーーーーー。
「愚問よね」
■■■■■
それから陽も暮れて、深々と雪が降り始めて来た
ギシッ…ギシッ…
凪は布団を持ち政宗の部屋に向かっていった
「おぉっ寒ッ」
日頃寝慣れた布団でないとなんだか寝れないような気がして、布団を持って行っている
「政宗さーん、開けて下さーい」
「来たか。ほらよ」
スーと襖が開けられるとそこには灯の明かりと布団と政宗がいた
「雪がまた降って来たか」
柱に片腕をかけた政宗は、はやく入れよと凪に促した
「布団隣りでいいですよね」
「あ、あぁ…(明日の朝ジジィ共に見られたら言われそうだな)」
夫婦でもないのに床を同じにするなんて
布団は冷たさを孕んでいて、足を入れるだけで冷たいと感じれる
室内に灯された灯によって、ぼんやりと照らし出された政宗は布団の中に既に潜り込んだ凪をみた
「寒いか?」
「えぇ。すっごく!でも誰かと一緒に寝るなんて何年振りだろ…」
「昔は誰かと寝ていたのか?」
読んでいた書物に枝折りを挟み、政宗は書物を閉じた
一つの灯を消し布団に入る
暗闇が訪れる
「私の…何て言うか、あぁそうだ。政宗さんだと小十郎さんみたいな感じな人と寝てました」
「小十郎みたいな?」
「はい。まぁその人は今の学校に入ったら私の前から消えてしまいましたけど」
苦笑する凪
今の言葉でどうして苦笑するのか
「政宗さんが一緒に寝るかと言ったのが記憶を揺さぶったのか昔の事思い出しました。聞いてくれます?」
「私のお母さん、いつだったか私の前から消えてしまったんです。私は泣いて、淋しくて。そしたらその人と私の兄が私のところに来て、お前の母親はどこにもいないって言ったんです。それを聞いた瞬間大泣きです。
見兼ねた…えっと名前を匡二(きょうじ)って言うんですが、匡二が寂しいなら朝も夜も一緒にいてあげるって言ったんです。それから殆ど毎日寝ていたんですよ」
そう。一緒にいてくれるって言ったのに
「政宗、さんと小十郎さん、みたいに…」
言葉が段々小さく、そして途切れていく
「あの、頃はそばに…ずっといて…」
すぅ…と凪は眠ってしまった
政宗は隣りの布団をみた
凪の髪に手をいれて髪を梳くと政宗は目を閉じた
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