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「全く、絡繰りに国のお金を掛けながら、この様なもの以外作れませんですの?」
「馬鹿言え!!」
元親と対峙していた女、刹那と元親は何故か談笑していた
いや最初は戦闘をしていたが、元親が後退し部下達が元親お得意絡繰り兵器で刹那を攻撃したのである
一撃を食らった刹那
しかし攻撃をしてこなかった
そして、
『西海の鬼の手駒には絡繰り兵器があると聞き及んで居ましたが…………』
うっとりした顔で絡繰り兵器に近付いて、そう言ったのである
「螺子と歯車を使った絡繰りは素晴らしいですのよ。ほら、こちらのトケイと言う時刻を知る為の絡繰りは、中に小さな小さな歯車や発条(ばね)を使っていますの。自動巻きといいまして、振り続ければ針が止まる事はないのですよ」
そこから戦いは何故か中断され、絡繰りについて談笑が始まったのである
あれ、戦いは?と誰もが思ったが、刹那は別に倒す為に戦いに来た訳では無い。足止め出来ればよろしいでしょうと言ったのだった
さて、彼女は確かに元親が言う通り良い体をしていた
しかし身に着けているものは、全て元親達が見た事が無い様なものばかりだ
「面白いなコイツァ。何処で手に入れた?」
「これは戴いたものです」
キラリと彼女の腕に光る時計
ステンレスの金属ベルトで華美な飾りは無い
「男か」
「貴方には関係ありません」
そう言って彼女は、時計を優しく撫でた
――――――――――――
タッタッタッタ
広い広い城内は、詳しい者でなければ迷子になってしまいそうな程広く、成実はただ勘だけで前に進んでいた
後ろから敵の彼らが追って来る気配は無い
「ったく…無駄に城デカくしてんじゃねーよ…」
防御に優れた城程良い物は無いが、この広さは防御とは関係無いだろう
ただこの城に、凪は居て、凪の兄も居て、竹中半兵衛もいる
それだけは分かりきった答えだ。もしかしたら匡二もいるかもしれないので、遭遇したら協力してもらおうか。等を考えた
「当たるのはどれかな」
このまま最上階へ行けばおおよそ間違い無く豊臣秀吉が居るだろう
しかし自分の目的は、凪なので、彼と戦うのは今は本意で無い。また竹中半兵衛も秀吉の軍師なので、彼の側に居るだろう。と、言う事は、凪に行き着く前か行き着いた後に立ち塞がるのは、凪の兄・北斗である可能性が一番高い
それを頭の隅で考え、成実は直感を頼りに前へひたすら進んだ
右へ曲がったり、左へ曲がったりとしながら成実は、ある部屋に足を踏み入れた
ギシ、と畳が軋んだ
「凪?」
凪の気配を感じる
近くに、居る―――――?
すっ、と部屋を出て来た方向とは別の方向に体を向けると、成実は一瞬だけだが固り、その後走り出した
「凪ッ!」
凪が廊下の先に居たのだった
■■■■■■■
部屋に籠っていたけれど、息苦しくなり外に出た
立っているはずの二人が何故か居なくて、少しだけなら出歩いても良いかなと思い、廊下を歩いていた
此所だけ妙に静かで、
此所だけ戦というものが及ばない様まるで隔離されている様だ
軒に出て、空を見る
あちこちから煙が上がっている
「皆さん…」
今頃政宗さんや、小十郎さん達が戦っている
今更何故、何を繰り返したとしてもしょうがない
ふと、誰かに呼ばれた気がした
「凪ッ!」
また、だ
ゆっくりと振り向く
───── 一瞬だけ時間が止まった様な気がした
「な、るみ さん」
少し離れた場所に成実がいた
そして成実は一歩一歩こちらに足を向けて歩いて来る
凪は、くるりと成実に背を向けて、走り出した
「ハァ!?ちょっ!!待てよッ!!」
成実のそんな声が聞こえてもお構いなしで走る
スパンッ!と襖を勢い良く開けて部屋から部屋へと逃げる凪に、それを追う成実
打掛が、着物が重い。それでも走らなければ
だけれど、所詮普通の女と普段から鍛えている男。足幅や走る速度では彼の方が有利なのだ
次第に追いついて行く成実
「なんで逃げるんだよ!」
漸く凪の手を捕まえた
「つかま………!あれ…?!」
「っ!」
「うわぁああっ!!」
ビターンッ!!
成実は凪の手を捕まえた
しかし足が凪の着物の裾を踏み、踏まれた事により凪は前のめりに倒れ、凪の手を捕まえていた成実は連鎖反応で凪の上に槍と共に倒れた
「だ、大丈夫か?」
「はぃいいい…」
思い切り顔面が畳に当たったので、鼻が特に痛い
成実は起き上がり、凪を上半身だけ起き上がらせ、頬に手を添えた
「ううう…」
「あちゃー、少し鼻の皮擦りむけてる」
「ひりひりします…」
「剥けてるんだから当たり前だろ?さてと…」
鼻の痛みに気を取られていた凪
成実は、槍を手を届かせる所に置き、凪を押し倒すと逃げられ無い様に覆い被さった
「凪」
「あっ、」
気がつけば、覆い被さられていて逃げられない状態だった
そして、成実はひたすら凪の名前を口にする
「凪」
「っ、止めてっ、ください…っ」
「凪」
「止めて…っ」
「凪」
「や…!!」
凪は成実の胸を押すが、びくともしない
成実は成実で凪と口にする度、額、瞼、首筋と順番に口付けをした
「凪…」
「私は!!」
唇に口付けしようとする成実にソレを止めさせる為、凪は声を荒げた
「私は!竹中半兵衛の妻です!!こんなの止めて下さ「止めねぇよ」
「っん、ふぅ」
成実からの激しいキス
軽いものではない
息吐く暇など与えられない程深く濃厚なキス
半兵衛と違い、反抗する隙を与えない強く、もう逃がさないと言わんばかり逃げようとする凪の舌を絡め取る
「ふぁ···っ、んやぁ···っ」
静かに唇が離れた
凪は、苦しさのせいか瞳が濡れ、口の端からは唾液がこぼれ落ちる。そして、ほんのりと頬を赤くしていた
ごくり、と成実は喉を鳴らす
(お、おさまれ…!!)
この先に進むには場所と状況が悪い…
「成実さん、どうして来ちゃうんですか…」
凪は目を閉じて、言った
「またそれか…。どうして来ちゃ駄目なんだ」
「…」
「ん?怒らないから、言ってみな」
にこっとして成実は、目尻にキスした
「い」
「い?」
「…いやです」
「分かった」
もう知らねぇ!と成実は凪の一言の後、再び濃厚な口付けをする
口内を蹂躙されて、酸欠でくらくらしてしまう
「わ、わか っふぅ…!」
「言う?」
苦しくて頷いてしまう
成実は、いよいよ何故来るなと言うのか、と言う理由が聞けると思った
優しい目差しで彼は愛しい彼女を見た
「…兄と」
ぽつり、ぽつりと呟き始めた
『兄さんの望む通りの道を歩むと約束するから、絶対に奥州等には手を出さないで。戦を仕掛けないでください』
あの日
それを決めた日
『…良いだろう。お前はこの先はんべーと、結婚し子供を産み育てこの世界にずっと留まる。俺の願いはそれだけだ。それを受け入れられるなら、お前の願いを受け入れる。でも何故いきなり?』
凪は悲しそうに言った
『私の目の前で、私の為に誰かが傷つくのをもう見たくないから。あぁ、あと一つ。これが聞き入れてくれないなら…』
「兄の作った部隊は、強くて。…目の前で、誰かが自分の為に傷つくのはもう嫌なんです…。だから結婚すると言うのと交換に、幾つか約束をして結婚しました…」
「……」
「成実さん達が、戦を仕掛けてきたから……。手を出さないと約束してあったのに…。仕掛けられたら、黙って居る訳にはいかないって、半兵、衛さんが、言って…。だから、わたし…っ」
段々声が小さくなり、泣き始めた凪
しかし言いたいことは分かった
「だから、アレか」
ふぅと深い溜め息が出てしまう
それにビクリと体を反応させる凪
「あー、ちょっと良いか?」
「?」
「お前なりに考えたんだよな。それはわかる。でもな、女一人に守ってもらう程俺達は弱くねぇよ?怪我をしたらそいつぁ、野郎の責任!俺が腹怪我したのも気ぃ抜いたから。理由はどうあれ、少なくとも俺は戦いで負った傷を誰かのせいにはしねぇ。あと、お前の為に戦って…は違うぞ?俺が戦うのは自分の為だ。“梵の天下を側で見たい”“好いた奴とずっと一緒にいたい”そんな理由で戦ってる。お前は、全部背負い込むな」
「背負ってなんか…」
「俺達を想うなら、帰って来い。な?」
「い、今更奥州に帰れる訳無いじゃないですか!!私、人妻ですよ!?」
成実はにやりと笑う
「人妻、良い響きだな~。ま、俺お前が人のもんでも良いけど?」
「世間は良いとは思いませんよ!!そう言ってくれるのは、嬉しいですが、やっぱり私は…」
「何。何気にしてるんだよ?別に出戻りなんて結構あるぜ?あ――――!!面倒臭い!!ぐだぐだすんのもう止めッ!!お前が何と言おうと奥州に連れ帰るッ!!」
え、と思った瞬間凪の体は畳から離れた
「取り敢えずお前奪還が目的だから、このまま本陣に帰る。因みにお前の意思はしらん!」
「えぇええっ!!??」
「行くぜ!!」
成実は凪を左肩に抱えて、右手に槍を持ち走り出した
落ちない様凪の胴体に左腕を回す
「凪」
走りながら成実は凪に言った
「帰ったら叱られるぞ」
苦笑いする成実
一瞬誰に?と思ったが、即座に誰かと言うのは分かった
「…」
複雑な気持ち
このまま彼らの元に行きたくは無い
何か申し訳無い気持ちになっているから
「…」
「あの…」
「何処に連れて行くつもりだい?」
何処からともなく、
・・・・
曲がる刃が、成実と凪を襲った
ひゅっと空気を斬る音が聞こえる
刃が来た方を向けば、
「竹中、半兵衛…!!」
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