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朝が明けた
白い光が室内を明るくする
すぅっと目を凪は開けると、むくり。と上半身を起こした
胸元を見れば鬱血した赤い華が咲き乱れていて、体は倦怠感を伴っている
そして、まだ半兵衛を受け入れたカ所はまだ半兵衛が入っているような感じで、変な感じがする
「おはよう」
「お、はよう…ございます…」
「体大丈夫?起きれる?」
ゆっくりと頷いた
そうか、と半兵衛は優しく微笑むと布団から出て行き、一枚の打ち掛けを凪の肩に掛けた
「夫婦になってから初めての贈り物、受け取ってくれるよね?」
それは、黄色の色合い鮮やかな打掛
誰が見ても、綺麗なデザインの打掛
「これ・・・」
「さ、腕を」
腕を取られて、袖に通される
そしてそれを着た凪をみて半兵衛は満足そうに笑った
つられて、作り笑いを…した。それが、贈り物をしてくれた、旦那さんに対する、今自分ができる精一杯のお礼の仕方だったから…
陽が完全に頭上へ登りきった刻限
凪の元へ、北斗が訪れてきた
紫銀の髪の兄は、竹中凪となった凪を見つめていた
彼の想うように、彼と結ばれた。想いが叶った割には嬉しそうではないのが気になるが…
「何か。私に御用ですか?」
「御用というか、話に来ただけだ」
「話?」
「お前のコレ、どこで手に入れた?」
彼の手にあったのは、四国で手に入れたオルゴール
そして、兄は螺子をゆっくり巻いた
そこから流れる旋律は、優しい調べ。懐かしい、旋律
「この世界に、この旋律が有る訳ない。何処で、手に入れた…」
「それを聞いてどうします?」
「…」
「返してください。貰い物ですから」
「貰い物…?」
「はい、兄さんとは関係ない人から」
「…」
北斗は暫く考え込むと、凪をじぃっと見て、立ち上がる
そして、背中を向けて部屋を出て行こうとした
(・・・)
オルゴールは、目の前に置かれたままだった
それに手を伸ばそうとした時、襖の一枚先から兄の声がした
「花嫁姿、綺麗だった。父さんが居たら泣いてたな」
「 」
そういうと、気配が消えた
その、言葉に、偽りが感じられなかった
綺麗な、言葉だった
──────兄の、気持ちが、 わからない
「成実さん、」
オルゴールを手に取り、天を仰いだ
貴方が生きて、幸せでありますように
そして、私を、忘れてくれますように
そう思った
――――――――――――
「では、これより二か月後、大阪城に攻め入る。西からは長曽我部が、北・東からは武田と伊達が。先陣は真田幸村・伊達成実率いる連合部隊で攻め込む。如何でしょう政宗様」
「異論はねぇ。俺はそれで良い。異議がある奴はいねぇか?」
武田、長曽我部、伊達という三国共同軍議は殊の外静かに進められた
兵糧も武器も大まかに揃え終え、あとは戦法を念密にたてるだけ
相手は豊臣
あちらには頭のキレる竹中半兵衛と、機動力・攻撃力等色々優れているだろう凪の兄が率いる“死神の部隊”がついている
まともに戦法を立てても、無意味だ
「二か月後、大阪城に攻め込む!!皆準備をしておけっ」
おぉーーーーーっ
小十郎の一言に、家臣は士気を高めた
完全に勝ち目の有る戦では無い。こちらに被害は必ず出るだろう
だけれど、勝ち戦・負け戦関係無く、ただ今は豊臣と戦う。それだけなのだ
――――――――――――――
連合部隊が先陣を斬ると決められて二日
猿飛佐助は、その旨を上田にいる伊達成実と真田幸村に伝えた
「期日までにこちらへ伊達の軍がやって来る手筈だ。アンタと旦那は、この上田城から共に大阪城へ、三国連合軍の先陣として出立してもらう」
「分かった」
「後方は心配しなくても伊達武田の家臣の軍が直ぐに付く。で、こっからは極秘に」
佐助は周りの気配を読んで、誰も居ない事を確認すると成実に言った
「連合軍が大阪城攻撃したと同時に、城内に攻め入ってほしい。手勢は一般兵じゃなく、俺様と――――――前田慶二」
「え―――?」
連合軍には名前を連ねていない前田家の人間が、何故
「風来坊は半月以内に大阪城城下町に入る。本人曰く、自分のせいで目の前から連れ去られたんだから、助けなきゃ。だってさ」
前田家は今そんな他人事を構う暇は無い筈なのに、慶二は大阪城に来ると言う
「…律義な奴」
風が、吹いた
■■■■■■■■
はらりと降っていた雪が、突如突風で吹雪く
それは一瞬で、またゆっくり、はらり・はらりと空から舞い降りて来る
「寒いな」
そう呟いたのは前田慶二
四国から大阪に乗り込む、なんて事を慶二はしなかった
四国の長曽我部を訪ね、用を済ませた後、慶二は中国へ渡った
そして中国から東へ歩き、今歩き慣れた京の都にいる
「秀吉、北斗」
昔を思う
ねねが死んでから狂った三人の、否、俺とアイツらの仲
刀を向けられるのかと思うけれど、向けなければきっと凪を、伊達に帰す事は出来ない
「凪…」
名前と共に吐き出した息は白くなり、空へ消えた
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