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「多分打ち所が悪かったのでしょう」
彼はそう言った
そう言う事で自分を納得させているようにも思える
少し痩せてしまった顔には、色んな感情を漂わせている
「これが一時的なものなのか、一生なのかは現代に行かないとわかりません」
ただ
「一生だったら、凪様の花嫁姿見れないのが残念で仕方無いです。アイツの側で幸せそうに笑う、貴女を」
「 」
そう言って悲しそうに笑う匡二に、凪は口を押さえる。泣きそうになる呼吸を抑えるために
匡二は知らない
私が、約束と交換に兄の望みを叶えた事を
匡二の思い描いて居る未来
──────訪れる事は、無い
何故ならば、私は、私を此処まで連れて来てくれた、竹中半兵衛の正室になるから
ぎゅぅっと、着物を握った
「凪様、私は目が見えなくても、北斗と戦いますよ。アイツの隣りに届ける為に」
その言葉は、とても芯が強い言葉だった
だけど
「 」
言えない
言わなければならないのに、言えない
言葉が喉まで競り上がって居るのにも関わらず、どうしてもそれ以上上がって来ない
今、ある意味
ほっとしている
こんな顔していたら、不思議に思われるから
泣きそうになっている顔を見られずにいるのがこんなにホッとするなんて
「それに…「残念だけど」
今まで静かだった竹中半兵衛が口を挟んできた
「彼女はここから出ないよ。伊達成実の嫁にもなれない。彼女は」
凪は自分の両耳を塞いだ
目も、強く瞑った
──────時が、止まった気がした
「···············その声は、竹中半兵衛だな。冗談も大概にしろ。凪様は好きな奴がいる、帰る場所がある。お前なんかの妻になる訳ないだろう?」
目は見えずとも
匡二の態度は以前と全く変わっていない。だけど
「残念ながら事実だよ。因みに彼女は、僕の正室になると自分で言ったんだよ」
クスクスと笑う半兵衛に対して、凪は更に泣きたくなった
言われてしまった。彼の望みとは反対の、多分彼にとっては信じられないだろう事実を
「 」
「あ、のね 」
凪は説明しようとした
「弱味でも握られましたか…?」
その言葉に、凪は一瞬息を止めた
弱味、では無いが、もう誰かが自分の目の前で傷つけられるのに耐えられなくて、が理由の一つだった
「…違うよ」
悟られない様に、いつもと変わらない様に答えた
柔らかな返答を返した。そう、弱味じゃない。嘘は、ついていない
「では何故…っ!!貴女は、成実の事を好きなんじゃないんですか!?何故、その気持ちに沿う野郎とは違う奴と、結婚を決めたんですか…!貴女の運命を変えるのは、成実だけだと…、俺は、思っているのに…!!!!」
そっと自分の手を、匡二の手に重ねた
「────守りたいからだよ」
匡二は、この言葉をどう受け止めるだろうか
少なからず、私は《嘘》をついていない
気持ちを裏切ってまで、決めた事
その理由に嘘は無い。守りたいから、それは事実だから
運命を変えるのは成実さんだって、言ってくれただけで、今は泣いてしまいそう
ダメ、泣いてしまったらダメ
「私は、竹中半兵衛のお嫁さんになる。兄さんが言ってたよ?運命を変えるのは、この時代の人間なら誰でも良いって。なら成実さんじゃなくても、大丈夫。ね?」
匡二に言い聞かせている様に見せて、それは自分に言い聞かせている様で
「匡にぃ、ごめんね」
もう、ダメだった
一筋、雫が頬を伝った…
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