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あなたの名前
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すぅ…
目をゆっくり開けた
しかし視界は暗闇のままで、光を捕らえはしなかった
むくりと起き上がる
「…」
今はいつだ
あれからどれぐらい寝ていた
彼女は?
色んな考えが巡る
「…?」
目は開いてる、はずだった
己の指で、己の頬を下からなぞる
「――――――」
確信、してしまった―――――
――――――――――――――
「彼が君に会いたいと言ってる」
どうすると彼は言った
自分に会いたいと言う人は少ないだろう
そして今、この状況下、会いたいと言う輩はまた数が限られる
そして凪はそれが誰だか、予想出来ていた
「本当は北斗がダメだって言うのだけれど、もの凄い切実に頼んで来るし、君も気にしている様だから」
半兵衛はそう言うと立ち上がって、凪の手を引いた
細身の身体はグイグイと凪を引っ張っていく
「兄さんがダメだって言ったのはどうしてですか?」
「会える状態じゃないと言っていたね」
嫌な汗が出て来た
「だけど、もう大丈夫だと思うよ」
そう言ったまま、二人に会話は無かった
会話無く、暫く広い広い城内を歩いた
行き着いたのは、煌びやかな襖が続いている城内にてとても浮いている部屋の前だった
その普通の襖を、半兵衛はゆっくりと開けた
その先に、円の窓から零れる光の中に一つの影を見た
白緑色(ビャクロクイロ)の薄着の青年
上半身は身体を起こし、下半身は布団に入ったままの青年
それは
「きょ、うに…」
あの日に負った傷の殆どは完治には至らないが、あの日程では無いように見えた
髪は少し伸びている
「…凪様…?」
すっとこちらに向けた顔
でも何か違和感を感じた
「すみません、寝起きでまだ力が入らなくて…」
目を伏せる匡二
やはり違和感を感じた
「凪様…?」
匡二の元へ一歩二歩と歩みを進めた
ざわつく何かが、そうさせる。一歩踏み出す毎に、ざわつきは大きくなる
─────何 この感じ
─────汗がじわりと額に浮かぶ
匡二までたどり着くと、彼女は彼の手を取った
「匡にぃ、」
「はい」
ニコリとする匡二
ざわつきは頭の中で警鐘を響かせる
手を離して、再び彼を呼ぶ
「匡にぃ」
「はい」
「 」
警鐘は、止まった
彼女達が入って来た方
・・・・・・・・・・・
彼は自分の左側に向けて笑っていた
最初、匡二の手を触ったのは彼の左側からだった
しかし、手を一度離した後凪は右側に周り話し掛けた
彼は、こちらを向いていなかった
「っ」
ひゅっ、と息を吸う
警報が止んだ変わりに、鼓動は速くなる
「き、ょう にぃ ?」
彼の右肩に手を置いた
匡二は、ハッとして慌ててこちら側に顔を向けた
表情は、歪んでいた
恐る恐る、震える唇は、頑張って言葉を紡ごうとする
わなわなと震える指先は、口許へ行き、口を隠す
でも、紡がねば
匡二の肩、首から頬へ手を滑らす
ゆっくりと、ゆっくりと、こめかみ近くに添える様に触る
「匡にぃ、目、」
見えないの………?
その言葉は紡がれずとも、彼には伝わった
焦点が定まっていない瞳に、光は見えない
彼の優しい瞳は、黒く塗られていた
「…最期に見た貴女の顔があれじゃ、自分としては浮かばれないですね」
「 」
それは思った事を100%事実に変える一言
匡二は、笑った
無理矢理笑っているのを、感じ取れた
「どうせなら、貴女らしい表情を、最期の映像として締めくくりたかったなぁ…」
彼の瞳から
透明な雫が、零れ落ちた
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