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成実は、朝から晩までとはいかないが、大阪城に攻め込むと決まると武術に没頭していた
綺麗な動作だが、実際の戦になればその動作で人を突き、裂く
これは、精神の鍛練では無く、確実に相手を仕留める訓練だった
政宗を怒らせて、戦った時に見せた技の仕上げもある
刃を隠したまま、長い獲物を振り回し、成実はひたすら仕留める事だけを考えていた
そんな中、毎日それだけ使っているので手入れも欠かしていなかったのだが、成実の槍に事件がおきた
ピシ…ッ
「え?」
珍しく今日は原田と手合わせをしていた
何度も何度も、持ち手に刀程の重さの有る木刀を打ち込まれ、それを受け、弾いていた時に不吉な音がしたのだった
木刀を受け止めたそこを、ゆっくりと見やると、愛用の槍に罅が入っていた
「……………」
「し、成実殿…」
「うそぉおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」
彼は、大事な大事な戦の前に
愛用武器を壊してしまったのだった…
――――――――――――
ドタドタドタドタ…ッ
「Ah―…まず兵糧だが」
ドタドタドタドタ…ッ
「それぞれの国が用意するとして」
ドタドタドタドタ…ッ
「……………」
ドタドタドタドタ…ッ
スパァアアアアアンッ!!
「梵―――――っ!!」
「Be quiet!!今大事な話してんだよっ!!ドタバタと…!!しかもなんつー面してやがるっ!!!!!」
大事な話、豊臣を攻め入る為の話をしていたのだが、成実の激しい足音に政宗はキレた様子だった
そして勢いよく襖を開けた成実は、どうしよう!!という顔をしていたのだ
成実は片手に槍を持っていた
「お、おれの…!!」
「お前のなんだ」
「槍がぁあああッ!!」
「槍がなんだってんだ…」
とちらりと槍を見ると、見事な罅が見れた
「Ah―。こいつはもうダメだな」
刀なら有る程度刃こぼれしたとしても、治す事は出来よう。しかし成実の槍は、そうもいかない
「長年使って来たのと、此所最近の毎日使い過ぎだ。丁度いいじゃねぇか。戦前に、調達すりゃいいじゃねぇか」
「そんな無理ッ!手に馴染まなきゃ…」
「ふぅん、じゃあさ、何とかしてくれる人紹介しようか?」
二人のやり取りに入って来たのは、猿飛佐助だった
矛先自体は無事な訳だからと、佐助は槍を見てそう言った
「最速で仕上げてって言えば何とかなるかもしれないけど」
「でも直すなんて無理なんじゃ…」
「あのね―、薙刀を打刀に打ち直すのが出来て、どうしてそれが出来ないと思うかな。まぁ、腕は確かだから」
ぎゅぅっと握った槍には、もう役目を果たすだけの力は無い
「甲斐に行こうぜ。同じ槍使いの旦那とも話が合うだろうし、頼んでる間に感覚が鈍るって言うなら旦那を相手に訓練すればいい」
旦那喜ぶよ―
とニコニコする佐助
この槍はずっと使って来たものだった
苦楽を共にして、沢山の人の命をこの槍で奪って来た
それを今、
「そいつは今役目を終えたんだ。成実」
柄は変えようとも
矛先に宿る物が、扱う人間が変わらないなら、また同じような武器になるさ。と小十郎は言った
「分かった…」
漆塗りされた柄は
成実の顔をうっすらと映していた
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