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「おい、酷い話じゃねぇか」
武田との話し合いが終わり、雪降る奥州にやって来たのは西海の鬼、長曽我部元親だった
酷い話、と言うので交易品絡みで来たのかと思ったが、その様な問題は文でやり取りすれば良い話だ
政宗は下座に座る元親をじぃと見た
「何の話だ」
「豊臣に凪が奪われたそうじゃねぇか」
「――――――何処から聞き出した。そんな情報」
凪がこの城には居らず、そして豊臣に居る事を知って居るのは、武田信玄・真田幸村・猿飛左助・それから政宗達の主だった家臣達だけな筈だ
長曽我部に、諜報に秀でた部隊が有るとは聴いた事も無いし、有るとは思えない
「それを教えてくれたのは、前田慶次だ。それから四月達だな」
「あいつが?」
前田の戦で成実と燃え盛る砦から、脱出し、容態が落ち着かない成実を前田家屋敷まで運んで行き、成実を迎えに来た家臣に成実を渡してから慶次は行方を眩まして居た
行方を眩ましてから、そんな所に行っていただなんて誰も思う筈も無い
「あぁ。ったくよ…。豊臣の勢にゃ、俺も警戒してんだ。凪がソコにいる、攻め入るなら、俺も協力するぜ!!」
「それは有り難いですが」
側についていた小十郎は、政宗をちらりと見た後元親へと視線を移した
「それは貴方の一存では決められますまい。戦に来るならば、まず家臣と相談された方が…」
「アイツらは付いて来るとよ。それにな、豊臣はでっかい宝抱えていそうじゃねぇか」
なるほど、と小十郎は呟いた
元親率いる四国は、領土拡大の為に戦を起こしていない。四国平定の後、彼らが戦う時はいつも“お宝”目当ての戦いだった
彼が彼なら、部下もまた部下でお宝に目が無い
「上手く行きゃ、凪も取り返せて、四国に延びる豊臣の侵略を防げて、尚且つお宝も頂戴出来る。一石二鳥ならぬ一石三鳥だぜ」
「それだけか?まだ隠してる事有るんじゃねぇか?」
ニヤリと政宗は笑う
元親はそれを見て、話す事を決めた
「四月っつー女が知り合いに居る。いや、居たと言うべきだろうな」
「居た…?」
「そいつはちょっとばかり特殊な人間でな、言葉を操る言霊使いっつー、一族だった。そいつはある日、…二か月ぐらい前だな。俺の所へ来てこう言ったのさ」
元親様
あの方、凪様を覚えてお出でですね?
あの方は暫くの後、豊臣に捕らわれ、あの方の望む物とは違う先を与えられようとしております
以前、私が申した事を覚えていますでしょうか?
いつか凪様の運命に関わる日が来る、と
もうソレは近く迄来ております
豊臣の死の部隊が、この国…いえ、私共異能を持つ一族の殲滅を目論み、それを仕掛けて来たらこの四国は焔に包まれるでしょう
ただの戦では御座いませぬ
凪様の運命に関わる戦です
どうか、北の蒼い竜…奥州伊達政宗らと手を組み
豊臣を討ち滅ぼしてくださいませ
貴方様と伊達の方々なら、それができる
そう言った翌日、彼女は消えて、二日後彼女の死体が、海岸沿いの砂浜で発見された
ただの綺麗な死体では無く、心臓を一突で突かれた、死体だった
紫雷の髪が、白い砂浜のせいでやけにはっきり見え、そして白い死装束に赤黒い花が咲いていたのを脳裏に思い出す
「死体が見つかった後、俺はあの時なぜまともに聴きもせず返したかを後悔した。一人の女の命の訴えかけを俺は無視する程、器は小さくねぇ。俺はあいつの願いを叶える為、国を守る為、異能だろうが俺の国の人間を守る為、テメェらと手を組みてぇと思うのさ。戦力は多いに超した事はあるめぇ?」
その真剣な眼差しは、いつぞやの誰かを思い出した
政宗は二分程無言で考え込むと、意思を持った強い瞳で元親を見た
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