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「凪ちゃん」
旋律が止む
ハッ、として格子の先を見れば、端に見覚えのある髪色が見えた
ガシャンッ
「佐助さん…ッ」
格子があるから身を乗り出して見る事は叶わないけれど、見間違え、聞き違いでなければ佐助が居る
「久し振り」
「はい…」
完全に姿を表してくれないのには、理由があるのだろうか
佐助の端しか見れない事に多少不安を抱いたが、それでも今は縋り付く事で頭はいっぱいだった
「何で君が大阪城に居るの?」
「…話すと長いから、纏めますけど、《成実さんと喧嘩して、慶次さんと気晴らしがてら旅をして、この間の前田家と豊臣の戦に参加したら、捕らわれました》です」
「戦に参加って…凪ちゃん戦えないでしょ」
「慶次さんについていったとも言います」
あの、と凪は続けた
「…佐助さん。貴方なら私を此所から出せますか…?」
格子の一つを強く握る
「この格子を、壁を、壊して、私を」
出してくれませんか
「出してあげ「ちょっとそれは困る」
突然聞こえたソレは、二人の意識を一気に緊張へと変えた
そして凪は叫んだ
「避けて!!」
バンッ
バンッ、バンッ!
次の瞬間、上から猛攻射撃が佐助を襲う!!!
その身の熟しで、それを即座に回避する
しかし上から容赦無く射撃は続く
「っち…!!」
身代わりの術を行使しても、姿を次に表した所にも銃弾の雨はやって来る!
そして格子戸から数メートル離れたあとに、左助と凪の間に人が降って降りてきた
下弦の月の光に照らされるのは、群青の外套
「去ね。この方をさらわせたりはしない。忍風情が…」
ジャキン…ッ
銃口を佐助に向けた
「忍風情、って言われるのはムカつくなぁ。俺様これでも仕事に誇りを持ってるからさ」
飄々としてはいるが、内心は怒りに染まっていた
(あの銃…)
どうやら噂の部隊の一人に出くわしたようだ
未知なる人物に佐助は戦闘体勢をとる
苦無を構えて、間合いを計る
「君、噂の部隊の人でしょ?」
「さぁ…」
二人のやり取りを見ていた凪は、ハッとした
そして格子に顔がぶつかる位近付けて、佐助にむかい叫ぶ
「駄目、戦っちゃ駄目…!!この人は…!!」
佐助は凪の言葉を聴くこと無く、苦無を投げ放つ!!
「佐助さんも!逃げて!!この人はッ」
そして佐助は闇に身を潜める
辺りは静かになるが、それはほんの少しの事だ。きっと仕掛けて来る
「佐助さんッ!聴いてくださいッ!!この人はッ!!この人は…ッ!!」
次の瞬間!
佐助は群青の外套を着た青年の背後に立ち、そのまま苦無を叩き込む
…しかし、捕らえたと思った人物は、左助の苦無が当たる前に佐助の前から消える
「チッ…何処に…」
「佐助さんッ!あの人は、死神の…!!」
ガウン…ッ
銃声が、した
銃声がした瞬間、佐助の肩を銃弾が掠めた
焼けるような痛みが襲う
「掠めただけだ。まだ来るようなら次はドタマを打ち抜いて差し上げます」
ジャキン…ッ
「チッ!!」
真田忍隊の頭でもある佐助の実力は、伝説の忍にまでは及ばないが、強い方だ
それがこうも軽く扱われるなんて…!!
「凪ちゃん…!!」
引き際だ
此所で命は落とせない
忍なら仕事で死ぬ事は仕方無い
だが、今この状況下、それは犬死にしかならない事を佐助は分かっていた。この事を主に言わなければ
そして、同盟国に伝えなければ
敵に背を向けても
「佐助さん」
凪は、笑った
格子を握って
笑ったのだ。彼女は
「伊達に伝えてください。私は無事です。だから、攻め入ったりしないでくださいって」
嘘だ。
今すぐここから出たいはずなのに
彼女の微笑みが
儚く見えた
手が白くなるまで強く握っているのに、何かを思っているのに
彼女は、顔を少しだけ歪ませた
でもそれは一瞬で、またあの消えてしまいそうな微笑みを見せたのである
「…何度も知ってる人を目の前で傷付けられるのに、耐えられない」
竹中半兵衛と兄はきっと何かを企んでいる
…この人を配置しているのがきっとその証
黙ってここにいれば、伊達の皆はやって来るかもしれない
いや、皆じゃなくても成実さんはやってくると信じている
そして、また
きっと彼らの兇刃な力の前に、今目の前の佐助が追い詰められている様になるだろう
「っ」
自分のために何かが傷付くのは嫌だ
そう思ったら下唇を、噛んでいた
「佐助さん…」
自分の身一つで
救えるなら、
「出してなんて言ってごめんなさい。それから皆に伝えてください」
ジャキン…ッ
男は狙いを佐助に定める
決めた
兄の言う通りにする事を
そして同時に交渉する事を
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