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「君が気にしている事を教えてあげよう」
半兵衛はある日そう言った
気にしている事?と頭を傾げる
それは、成実さんの事?それとも、他の事…?
「伊達成実の状況は分からないけど、奥州の龍はこちらの動向を知る為に、何人かこちらに寄越しているよ」
それは、
「もしかしたら堺とかに行ったら、出くわすかもね」
「…何を」
そんな事を喋るこの男に凪は不信感を少し抱いた
「何を、企んでいるんですか」
半兵衛の考えを予想するに、彼は私と伊達の人間が接触する事を狙っている。そう言う結論にたどり着く
「別に?企むなんて無いよ」
「貴方は軍師ですから、あてになりません」
「うん、そうかもしれないね。ただ僕は、企む云々の前に、こんな所で腐りそうな君を見たくないだけだよ」
腐るなんて酷い
確かに外に出て無いからか、多少気持ちは落ち込みがちだが、腐るなんてほど落ちぶれていない
「時々君と話していて思うんだ。きっと君は奥州で大事にされていたんだろうなと」
確かに優しかった
それが大事にされていたかはわからないが…
温かくて、幸せで、
夜中にそんな夢を見て、
目が覚めると、誰もいない
温かい、幸せな、…そうとても幸せな記憶
「さぁ行こう。内緒で連れ出してあげよう」
半兵衛は手を差し出した
彼の言う誘い出す理由は、偽りを少し孕んでいる事を何となく察している自分もいるが
それでも、誰でも良い
自分を知る人が近くにいるならば、会いたいと思った
馬を少し走らせて、やって来たのは町だった
馬を預けて、半兵衛は凪の歩幅に合わせ町中を見始める
凪はキョロキョロと顔を動かし、町中の様子と…知った顔がいないかを見ていた
「何か買ってあげようか?」
「結構です」
半兵衛から小さな溜め息が漏れたのを聞いたが、人々のざわめきの音で聞こえない振りをする
ところ変われば人変わるというが、政宗の城の城下町より華やかで何より皆輝いている
元来イメージ的に、関西のヒトは気さく、明るいというイメージを持っていたが、あながち間違ってはいないと思った
「春になれば京にでも行ってみるかい?良い所を知っているからね」
「桜とかですか?」
「そんなものじゃない。春のお楽しみ、かな」
「もったいぶるのは良くないですよ」
「うん、だけど何か約束しておきたいじゃないか」
半兵衛の言葉に凪は足を止めた
その言葉は、まるで、
「さ、甘味処でも入ろう」
グイッと引っ張られる
「あ、はい」
さっきの言葉を気にしながらも、凪は前を向いた
――――――――――――
「ったくよぉ、」
後藤は頭を掻きながら町中を歩いていた
腹が減っては何とやらとはよく言ったモノで、調査中に盛大な腹の虫がなった後藤は、原田に「腹の虫が邪魔です。さっさと退治して来てください」と町中へと放り出したのである
適当に店に入り、食事を済ませ原田の言うところの《腹の虫退治》を終わらせ、賑わう町中を人々の様子見ながら歩を進める
流石に流通の町だけあり、色々な品物を目に止める事が出来る
そんな中不意に聞こえた、一つの言葉
人ごみで聞こえたソレは、もしかしたら聞き違いかもしれないが、後藤はそうは思わなかった
「まじかよ…」
彼の呟きは、人ごみに消える
はらり、はらり、
頭上から、白い物体が落ちてくる
はらり、はらり、はらり
「「雪…?」」
「いつもより早い初雪だ」
「そうなんですか?」
「君がいた奥州より、南の方は降るのが北より遅かったりするんだよ」
半兵衛は手の平を出して、舞い落ちて来る雪をその白い手の平で受け止めた
その瞬間、雪の結晶は半兵衛の熱により溶けて小さな水へと変わる
「そうか、もう冬か」
感慨深そうに半兵衛は呟いた
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