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「今日は、機嫌良いかな?」
毎日、毎日竹中半兵衛は凪が軟禁されている大阪城の上層の部屋にあしげなく通っていた
あの日、あの夜から匡二にも、兄にも会っていない
いや、会えない。外からは鍵をかけられ、軟禁とは名ばかり。監禁だった
室内は牢獄という感じでは無い。普通の部屋だ。箪笥に文机、 畳に外に直接つながる格子戸、廊下に出る扉以外は最初の部屋とは違って、普通の部屋だった。
その中で、毎日寝食を行う。色んな事に思考を巡らせながら
「機嫌が良く見えるなら貴方はその瞳を変えた方がよろしいかと、思いますよ?」
「クスクス、君は面白いなぁ」
格子戸の先にある、冬空を見つめる凪の隣りに竹中は腰を降ろした
「…」
「…」
「…用が無いなら、出て行ってくれませんか」
「用ならあるよ?君と会話する」
「それは用とは言いません。貴方、仕事が無いんですか。それは問題ですよ」
「取り敢えず仕事終えてから君の所に来てるから問題無いかな」
竹中とは毎日こんな会話を交わしている
一向に警戒を解かない凪は、泣き出したくなる様な精神状態をツンケンした態度で隠していた
時折会話をしていて、泣きたくなるのは、竹中が優しかったからだ
いや、偽りの優しさかもしれないが、それでも落ち込んだ暗い思考に《優しさ》は辛かった
「ねぇ、今度堺に行こうか」
「………」
「堺には色んな物が集まっている。こんな所にずっといたら、良くないだろう?北斗は言い聞かせて、僕と二人で行こう」
竹中は、誠実。そんな言葉が似合った
先にも、もしかしたら竹中の凪に対する優しさは偽りかもしれないと言ったが、偽りだとしても、この男の瞳は成実の瞳と似ていた。奥底に見えるものが成実と似ていた
「…どうして」
「ん?」
凪は身体を竹中と向かい合う様に動かした
「毎日来るんですか。兄の言った言葉を実行するつもりだから?私を貴方のものにしたいから?それとも、」
「…初めてだね。君が、僕とこうして向き合うのは」
にこり、と笑うと竹中は凪の手を取った
「純粋に、君が欲しいって言うのは答えにならないよね」
コクン、と凪は頷いた
「僕は北斗から君の事をよく聴いていた。会ってみたいと思った。話してみたいと思った。今、会う事は叶っているけれど、会話は出来て無い。君が、僕と《会話》をしてくれるまで僕は通うよ」
「…兄から何を聴いたんですか」
「そうだね、まず君の小さい頃の話とか」
「………」
「可愛かった、ばっかりでね。兄が妹を可愛がる何も変わりない話だよ」
「兄は、私を嫌ってますから、多分可愛かったなんて嘘だと思いますよ」
俯きそうになる凪の顔を、竹中は凪の手から顔に手を移動させて、頬に手を添えた
「彼は君の事を嫌ってなんかいないよ?」
「信じません。わたしはそんなの。…でも、」
キュッ、と口を真一文字に結んで、竹中と視線を絡めた
「貴方とは、…《会話》を、…してみたい、です」
竹中は、微笑した