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ピリピリと身体から雷を発している政宗
彼の覇気に、成実は気負い負けしそうだった
言うつもりはなかった言葉を口にしようとした自分が悪い
ギリッと木刀を握りしめて、自分も気を溜め始めた
氷の冷たさが辺りに広まる。足元は凍り付いていった
「行くよ…っ」
「Comme on!」
力を上手く使える自信を今は無い
しかし成実は婆娑羅技を放つ為に気力を溜めていった
ヒュン…ッ
身を低くして、政宗へ向かい突進する
パキパキパキ…ッ
足を地につける度、土は凍り付く
身を屈めて突進した成実は、動かない政宗に木刀で逆袈裟掛で攻撃に入る!!
ヒュッ、と口笛を吹くと後ろへジャンプした
この攻撃が躱される事を、成実は分かっていたので驚く事もなく、そのまま立ち上がり政宗と間合いを取る
「Hey.どうした成実。今のが本気じゃないだろ?」
くいっ、くいっと指でこっちに早く来いよと挑発する政宗
「…」
戦でこの仕草を隣りで良く見ていたので、政宗が何を考えているのか分かる
ばたばたばたばた…っ
廊下を走る音
しかし二人はそちらを見ようとはしなかった
互いに目の前の従兄弟を見ている。瞬きもせず、呼吸を同じくし、視線を絡める
「殿っ!成実殿っ!」
そこにやって来たのは鬼庭
離れた場所に居ただろうに、髪を乱して廊下に立つ鬼庭は、そのまま地面に降り立つ
「ななな、何してるんですかっ!殿っっっ!!成実殿は病人ですよ!?成実殿も!!貴殿は病人なんですよ!?何で双方木刀を持ってるんですかっ!!!」
鬼庭の怒りを含んだ叫びに、二人は振り向きも見ずもしなかった
殿っっっ!!とかなり大声で呼び掛けて居るのに、聞こえていないのだろうか
「…凍れ」
パキパキパキッ
成実が凍れと言った瞬間、木刀に氷が纏わる
綺麗に氷でコーティングされた木刀は、氷により鋭くなっていた
「氷流(ヒリュウ)、対穿(ツイセン)ッッ!!」
片手にもう一つ、婆娑羅技で作り出した氷の刀を持ち、成実は政宗目掛けて再び攻撃に出た!
「Ha!」
ガキッッッッッッッ!!
氷でコーティングされた木刀を受け止めて、それを払う!!続いて氷の刀が政宗を襲う!!!
木刀を縦にして横から来たソレを受け止めると、成実はその隙に再びもう片方の木刀を、横から政宗に叩き込む!!!!
ガキ…ンッッッッ!
「…」
「……な」
シュウウウウウ…
成実の氷の刀(木刀)が湯気を上げた
そして、成実の攻撃を妨げた―――――一太刀
「 綱 …?」
「やめて、ください…っ」
攻撃を止めたのは、鬼庭。横振りの攻撃を、受け止めて尚且つ鬼庭の属性である《炎》の力を使い、氷の刀の一部を溶かしていた
「これ以上続けるおつもりならば、力を行使して、木刀を燃やします…っ。殿も成実殿もお引きくださいっっ…!!」
流石伊達三傑に名を連ねるだけはある。並の武将等ならば、瞬時に二人の合間に入り攻撃を止めさせるなんて出来ない
鬼庭の気力に、政宗は木刀を後方高くに打ち上げる。ヒュンヒュン、と弧を描き、ドスッと綺麗に政宗の真後ろの地面に突き刺さった
政宗の表情は、何とも言えぬ顔だった
鬼庭は政宗の前に座り、頭を下げた
「殿、成実殿はまだ病人なのです。戦いにはまだ「綱元、テメェ黙ってろ」
政宗は頭を下げている綱元の隣りを素通りして、未だ木刀と氷の刀を持つ成実の前にやってきて、何をするかと思えば、成実の頬に政宗は拳をめり込ませた
政宗に拳で頬を打たれて、成実は後方に飛ぶ
破壊音を立てて、成実の身体は障子戸をぶち破り室内へと消える
「殿っ!!??」
「I should have said that I fell silent! !
(黙ってろと言ったはずだ!!)」
政宗はゆっくりと成実が消えた部屋まで歩く。成実が起き上がる気配はない
成実は部屋に仰向けで転がっていた
「どうした、そんなんじゃ、お前の思う様な事が出来ねぇぜ」
「……っあ…!!」
何とか起き上がろうとするが、力が入らない
ぐずぐずしている場合じゃないのに、と思ったら政宗が目の前にいた。上半身だけ起き上がっていた成実の身体を、政宗は足で畳に押しつける
「さっきの技、見た事無いがお前の“二刀流”はアレか?作ったのか」
「そうだよ…。だって、俺の槍じゃ相性悪すぎる…っ。相手は銃に、俊敏な動きだった…!俺の戦い方には、追いかけて戦うってのは無いんだ…!!迎え撃つ戦い方なんだから…っ!!刀だったら…!!刀だったらっ、自分の領域に相手を捕らえさえすれば仕掛ける事も出来る…!もう一つ刀を扱えれば、更に攻撃も出来る…!凪を助けるにはそれしかないんだよ!」
「そもそもそこが間違ってるんだよっ」
足を退けて、成実の上に馬乗りになり成実の胸倉を掴んだ
「何で、突っ走る…!!」
「それは俺が」
「何で一人で助けだすと決める…!!」
「だって、お」
「何で全部一人で背負い込む…!!」
「仕方ないじゃないかッ!!」
逆光で政宗の表情は見えない
だけど成実は思うままに、政宗へ気持ちをぶつける
政宗にやられた傷の痛みも忘れて、目の前の男に噛み付く様な瞳で
「凪が、あんな所にまず行った原因は俺じゃないかッ!!俺があんな事言わなきゃ、凪は今でも此所に居た!!!!此所で穏やかに何時もの様に、笑っていた…!!それに、凪を助けに行った時、俺は、背後の気配に気付かなかった…!!刺されなければ、一技食らわせて、もしかしたら助けられたかもしれない…!!豊臣になんかに、落ちなかったかもしれない…!!全部、こうなったのは、全部…ッ、俺のせいじゃないかッ!!!!!!」
──────悲痛な、叫び
「俺は男で武士だ…!!自分の責任で起きた事態の始末は自分で…」
「だから、それが間違ってると言ってんだろうがッ!!」
胸倉を掴んでいた政宗は、そのまま成実の身体を畳に縫い付ける
「テメェの責任だ?だから一人で全部背負い込んで…ッ。誰が、此所に帰って来てから、起きた事の全てが、お前の責任だと言った!!誰もそんな事言ってねぇだろうがッッッ!!!」
「…っ」
「凪を助けたいのは、お前だけじゃねぇ!小十郎も、綱元も、他の野郎も、そう思っている!!全部を背負うな!」
政宗の言葉に、視界が揺らぐ
「凪を奪われたなら、全員で取り換えしに行きゃあ良い。
一人でやるな
相談位しろ……!!
We will be things like brothers…!!
(俺達は兄弟みたいなものだろうが…!!)」
「ぶらざー……、兄弟…?」
「そうですよ成実殿」
ぶち破られた障子戸の辺りに鬼庭は立っていた
「殿の言う通りです。貴殿は背負い込みすぎです」
静かにゆっくりと、歩いて成実の隣りに立ち止まった
そして、正座をする
「殿が何も策を練って無いとお思いですか?殿だって、私だって助け出したいです。最も、殿や貴殿の気持ちの内容は強いみたいですが…」
キッ、と鬼庭は成実を見た
「まず貴殿は完治する事だけを考えなさい!!凪殿の事は貴殿が原因だなんて、後ろ向きな思考も止めなさい!!誰も貴殿を攻めはしない!!起きた事は、もう戻りはしない。今は前に進む為に、やらねばならない最良の事をする時でしょうッ!!!!!!!」
「…そ、」
「成実、」
「くそぉおおおおおおおおおおおおおおっっっっっ!!!!」
成実の叫びは
空まで
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