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「只今戻りました~」
「戻りましたよってね」
暫くしてから凪と佐助は城に帰ってきた
緊張状態だった先程の雰囲気が和らいでいており、同盟は無事結ばれたのだと考えられた
「多分道場かな…」
同盟が終わったのなら
あの二人が大人しくしている訳は無い
最初は手合わせ目的だったのが同盟に変わった今回の件
同盟が主だったが手合わせもするといつだったか言っていた
と、言う事は同盟が結ばれた今日
彼等に残った目的はただ一つ
「甲斐の国って此処よりあたたかいですか?」
「まぁここより南の方にあるからまだこっちよりあたたかいよ。それに冬寒くても旦那の側に居れば温かいし」
「?」
「ほら旦那って年中あぁだから側にいるとこっちまで温かくなるんだよね~」
成程、と凪は思った
確か幸村は火の属性でもあるから、冬には重宝できそうだ
伊達は殆どが雷属性のため、温かさとは無縁
せめて誰かそう言う奴はいないものか…
「お帰り」
ふと声を掛けられ上をみると、成実が窓から身を乗り出していた
心なしか何故だか機嫌が悪い様な…
成実は凪の隣りにいる佐助を一瞥したあと凪に視線を戻した
「団子買ってきたの?」
「はい!といっても真田さんの団子ですけど…」
「あぁそう…じゃ」
と言う事だけ言って姿を消してしまった
気に触る様な事を言っただろうか…
■■■■■■■■
政宗と幸村は道場で手合わせをしていた
実戦ではないので政宗は木刀、幸村は自分で持って来たのだろう練習用の槍(刃は無い)で戦っていた
木のぶつかりあう音が絶え間なく鳴り響く
政宗は受け止められていた木刀をひき、己の体も後ろへ後退させた
そして再び懐狙い駆け出し、木刀を幸村目掛けて振りおろす
幸村は力負けしてなるものかと二槍で受け止める
政宗に関しては木刀一本のみで戦っているので本領発揮とまではいかないようだ
「やってるねぇ」
「凄いです!二人共」
政宗と幸村の攻防を見た二人は道場の入口付近で座る事にしたのだが、「おい。猿飛」不意に入口からした声に二人が体を向ければそこには成実が立っていた
手に木刀を持ち、いつも訓練の時に来ている着物を着ている
「テメェ今手ぇあいてるだろう?俺と手合わせしようじゃないか」
「あいてはいるけど、いいの?忍びと武士の戦い方は違うよ?」
「構わねぇよ」
「断っバシィッ!!!
成実は木刀を佐助に向けて振り降ろした
佐助はそれを躱し、成実の背後に回る
「問答無用、って奴?仕方ない…」
佐助は頭を掻くと、武器を手に取った
「旦那達の手合わせ終わるまでで勘弁しろよ?それから、俺様苦無使うから。それぐらい、いいよな」
「あぁ別に構わない。ここは梵達がいるから外でやる」
はいはい、と二人は出ていった
やはり成実は機嫌が悪い様な感じがする
凪は道場の二人よりも佐助と成実の手合わせが気になった
いつもとは違う成実
朝はいつもと一緒だったのに…
「成実さん!!」
手合わせを始める前に凪は成実に近寄った
袖を紐で結ぶ姿が格好良いなぁなんて思ったが、それは置いておくとして
「成実さん…何か気に障る様な事あったんですか?さっきから不機嫌ですよね」
「あ―…うん。まぁあったと言えばあったかな。まぁ気にすんな」
困った様な顔をして成実は凪の頭にぽんぽん、と手を置いた
見るなら少し離れてろ
と言い成実は佐助と手合わせをする為に凪から離れた
ヒュゥッ…と冷たい風が一つ吹いた
枯れ葉が地に着くと同時に成実は佐助にむかい突進する!
「オラァッ!」
横に木刀を振るうが佐助は木刀を難なく避けた
バク転を三回程し、苦無を構える。成実も木刀を構え、佐助の攻撃を待った
「本気、か。俺様暑苦しいの苦手なんだよねぇ」
苦笑すると佐助は成実の前から姿を消す
「!…何処いった」
ヒュ…ッ
成実の左側から苦無が飛んでくる
消えた訳じゃない。見えない速さで移動しただけだ
佐助の投げた苦無は成実の着物の裾を破る
「チッ!」
足を反射的に回転させて、佐助に一つ決めてやろうとするが流石は忍びなだけは、ある
その身のこなしは俊敏で捕らえにくい
「あのー成実さん、佐助さん。怪我しないで下さいねー。怪我なんかしたら私小十郎さんに怒られちゃいますからー」
二人は戦いながらその言葉を聞いて苦笑した
(悪いな)
(悪いけど凪ちゃん)
(彼、殺る気満々だから)
佐助は成実の殺る気満々な理由に大体の察しがついていた
しかし…
「可愛い嫉妬だねー」
互いの攻防は引く処を知らず、むしろ攻防は激しくなっていった
成実の武器は木刀で
佐助の武器は苦無で
よく考えたらハンデ有りすぎな武器だが互角に渡り合ってなる成実
(伊達の武将だもの。強いのよねきっと)
前に政宗が言っていた
成実はモテると
こういうのもそのモテる理由なのだろうか
戦う彼は普段と違って、凛々しい
そして
強い
「何か言ったか猿飛ッ!」
「何でもありません!!っと!!危ない危ない」
もしかして成実は自分の今の気持ちに気付いてないのか
(どう見てもこの苛立ち方とつっ掛かり方は嫉妬だろー?それに気がつかないって…鈍すぎやしないか?)
佐助は手合わせしながら呆れた
今自分の目の前にいる人物は本当に竜の旦那の血縁か?こうも鈍いって…
まるで恋愛ごとに疎い所は自分の主のようだ
まぁ自分の主は疎い所では無く、免疫が無いと言うべきか
成実が佐助に木刀を振り降ろそうとする
「双方それまで!止められよ!!」
不意に二人の行動を止めた声がした
声がした方を振り向けばー…
「旦那…」
甲斐の虎の若子
紅蓮のモノノフ
―真田幸村―
風は幸村の結ばれた髪の先を揺らすと、止まった
佐助が旦那と言うと自分の苦無をしまいこむ
「何をしておったのだ佐助。手合わせをしていたら外が何やら騒がしいと思ったら…」
「すまねぇ旦那」
成実はそのやり取りをみて手合わせの続行は不可能だと思ったのだろうか
木刀を地面に刺した
「真田。俺が手合わせを頼んだんだ。猿飛は悪くないからな」
「おぉ!成実殿ではないか!」
成実の姿を幸村は確認すると成実に近付いた
「どうも、っても先刻のアレに俺も参加してたからどうもってのもおかしいか…」
「しかし何故(なにゆえ)佐助と手合わせを?」
「あ―…梵とあんたが戦ってんのみたらやりたくなったからかな」
成実さん
凄いそこだけ棒読みですよ
「成程。佐助!良い訓練になったのではござらんか?いつもとは違う人を相手にするのは良い経験になるでござろう?拙者も政宗殿と久し振りに手合わせをしたが、やはり親方様とは違うな佐助!」
違って当たり前だと思う
武田より伊達は普通だし
「あ、あの―真田幸村さんですよね…?」
凪は挨拶をしに幸村に近付いた
が
「お、おおお、おな、おな、おおおお、お、おな、女子――――!!!??」
幸村は近くにあった木に身を隠してしまった
「えぇ―!!??」
「露出は少ないから拒否られる確率は40%ぐらいまで下げられたかなって思ったのに」
佐助は隠れてしまった幸村の隣りに行くと、何かを話し始めた
二人の視線が私に注がれる
「お前も手合わせしていたのか成実」
「あ、梵」
幸村と手合わせをしていた政宗も外に出てきていた
成実の隣りに来ると、凪にcome on!と言った
腕組みをすると、幸村・佐助両名のやり取りを見て成実に一言
「随分荒れた筋だったな」
「梵まで…」
政宗も幸村が止めるまでだが一部始終二人の手合わせと言う名前の戦いを見ていた
手合わせの位を越えた、戦い
「クックッ…分かりやすい奴」
「梵も猿飛も訳分からない事を言うなよ。おい。団子って真田の分だけ?」
「あ…はい。でも二個だけ頂きましたからお二人どうぞ」
包みに入った団子を二人に渡した
それは城下町で人気のある甘味処の団子だった
団子を二人に渡し、凪は成実をちらっとみた
機嫌は治った様だ、良かった
しかし何故機嫌悪かったのだろうか
凪には不思議に思えた
「あ、何か解決したっぽいぜ」
まだカチンコチンの真田幸村に印象はよくしておかないとな、と、満面の笑みで挨拶をする
「はじめまして、真田幸村さん」
聞くのと見るのではやはりちがうなぁと、顔を赤くして自分の目の前に立つ幸村に少し笑ってしまう
「異界の事…佐助の話しを聴いただけだが正直俺は未だ信じがたいが、我々となんら変わらないのだな。か、わいら…」
「Hey.真田…変わらねぇって。つか今小さく何か呟かなかったか?Ah?」
それは…容姿を言っているのか
異界から来たと言う事に己の妄想を育てたのか。この世界の人間とは少し違う生き物に幸村の中で認定されそうになっている。直接会った事でそれは解決されたみたいだが…
最後の、か…の所は小さすぎて聞き取れなかった
なんて言ったのだろう
ヒュウ…と奥州の冬の寒い風が体に当たった
ブルリと身震いをすると腕を擦る
「あ、手合わせ終わったんですよね?お団子食べます?部屋に行って皆で食べましょうよ!他にお菓子とお茶用意しますよ!ね?」
じゃあ、客間に行くか。と成実は凪の隣りを陣取り佐助も、あ。凪ちゃんお茶だったら手伝うよ。と言い後ろについた
旦那ー置いて行っちゃうよー?
と言われて幸村もあとに続く
一人残った政宗は空を仰いだ
白く見慣れたものが空から墜ちてくる
奥州に、冬が来た
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