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戦火は目の前まで来ていた
竹中軍が到着するまで小競り合いが何度もあり、それは徐々に争いの火種を大きくしていった
小競り合いを何とかしているうちに、気がつけば竹中の軍は加賀の目前まで迫っていたのだった────
利家はなるべく民を戦に巻き込まない様にと、村や町がある場所からかなり離れた所に砦を作った
兵糧を集め武器を集め人を集め、その準備はあっという間に終わった
いや、終えざるをえなかったのだった
思いの他竹中の軍が早くやって来たから
「皆のもの!聞いてくれ!!」
利家は、自分の兵士を集め演説めいた事を始めた。士気を上げるためだろう
さすが一軍の将
人の士気を上げる方法を良く心得て居た
「竹中は優れた軍師だ!どんな手をうつか分からない。だが、ここで負けたら加賀に戦火の火が上がる。それだけは阻止せねばならない!!某の為にとは言わない。民の為に某と共に戦ってくれ!!」
オォー!
ときの声が辺りに響いた
そんな様を砦の一室から凪が見ていた
「いよいよですね」
「…凪、やっぱりお前だけ奥州に」
「くどい!くどすぎです。私は此所にいると決めたんです」
たとえ巻き込まれようとも
大丈夫。そんな気がした
ここ最近慶次の説得は激しさをましていた
だけど凪は説得を聞き入れようとしなかった
そして再び外を見た
成実さんは今頃何をしているんだろう
私が…前田家と竹中軍の争いの中に居るなんて思って無いだろうなぁ
というか、私の事なんか考えてすらいないかもしれない
奥州に帰った時、自分の居場所がまだあるか少し不安になっていた
だけどそんな思いを感じて居る暇など、現状では出来なかった
ここに来て漸くそんな考えが出来る様になったのだった
後ろ向きな考えかなと思ったりする
凪がハァと溜め息を吐けば、慶次は凪の背中をずっと見つめていた
そして背後に立つと慶次は凪の手を取って部屋を出ていく
いきなり手を引っ張られた凪は、バランスを崩して倒れそうななったが慶次がそれを支えて、グイグイ引っ張る
「な、ちょ」
「ちょっと良いもの見せてやるよ」
慶次はニコニコ笑うと、砦の中から出てしまった
今この砦から出たらいけないのでは。なんて思ってみたが、慶次にはお構いなしの様だ
そのまま馬に乗せられ、十分位たっただろう。目の前には川があった。土手に植えられた一本の大木は赤く黄色く彩りを放つ
馬から降りる様に促される
凪は馬の背中から降りて大木に近付いた。見事な紅葉だ
「綺麗だろ?」
「近くにこんな場所があったんですね」
「昔からここに立っててさ、秋になるとこうして染まるんだ」
慶次は懐かしむように木に触る
「戻れって言ってももう無駄なのは分かった。だけどせめて砦から離れた場所にいてくれっていうのは駄目かい?」
「それも却下です」
「頑固だなー、凪は」
大木の根元に慶次は腰を下ろした。そして隣りに凪も腰を降ろす
そして空を見上げた
「無茶しないでくださいね」
「うん。当たり前だろ?凪と京都まで行って、それから政宗のところまで帰らなきゃだしな。無傷で」
「はい。絶対行きましょう。それからちゃんと案内して下さいね」
約束を交す
それはどんな時でも、きっと生きる糧の一つになれると思った
…そんな事ありはしないのに