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今までの形跡は奇跡に近かった
「…前田家どこ…?」
成実は…、まぁなんというか…道に迷っていた
多分目の前なのに!と思っていても、何分こっちは来た事が無い
迷うのは至極当然なのだった。と言っても多分成実の隠された方向音痴の才能(そんな才能とても要らない)もそれを助けてしまっているのだろう
まだ戦が始まる気配は無いからと安心していたいが、それらが町人などの情報では心から安心は出来なかった
取り敢えず此所まで馬は走りっ放しで疲労が隠せていない。馬は宿屋に繋いで、徒歩で前田家の情報等手に入れようと思った
ここは宿場町。色々な情報が手に入りそうだ
「へぇ、温泉かぁ。いいなぁ」
自分の身体も夜通し働かせていた為、疲労困憊だった
だが自分の身体より凪の事が心配でたまらなかった
凪だけはもしかしたら此所を抜けて、既に旅の目的地まで行ったかもしれない
巻き込む訳にはいかないと、慶次が此所から誰か違う人間を旅の共に…
それならどれだけ安心出来るだろうか
そんな事有り得ないと分かっていた
慶次はそんな事しないと。分かっていた
だから有り得ないと
凪はもし想像した通りの状況下だったとして、自分だけが此所から居なくなるなんて事は望まない筈だと
むしろ居残り、慶次の側にいる筈だと思う
厄介な性格、と思ったがまたそれが凪の良い所なのだと思う
ドンッ
「あ、すまない」
「……うわー、格好良いお兄ーさん…」
身体が人とぶつかってしまい、当たった人に謝罪をいれたら思わぬ返答が返って来て成実は目を丸くしてしまった
「美形だよー!!あ、でも師団ちょーに比べたら、まだまだだけど」
「ああぁ、ありがとう?」
褒め言葉は言われなれている成実でも、流石にこのリアクションは体験した事が無かったらしい
ぶつかってしまった少女は、成実の周りをグルグルと周り、成実の頭の頂きから足先までをじっくり見ていた
「…あ、あのもういいかな?俺急いでるから」
「あ、ごめんなさい!」
パッと少女は離れた
成実は開放されてホッとした
「……」
「…まだ何か?」
「…お兄さん、武士様?」
「…どうしてそう思った?」
少女はにこりと笑って、後ろに手をまわして成実の前に笑顔で上目使いに立った
「足運び、体つき、手かな?うちの師団長とか、上様とかと一緒だもの!」
しかしそれで分かるという事は普通は無い
その事は先ほどの会話でヒントを得た。この少女は、武士に仕えている。そう少女の言葉が語っていた
「秋ー」
少女の後ろから声がした
少女はその声を聞いて振り向いた。着物の袖がフワリと身を翻した事により靡く
「頼っ」
少女は成実に背を向けて走り出した
“秋”と言う名前なのだろう。その名を呼んだ少年は、秋に何か怒っているようだったが、それはほんの少しだったみたいで直ぐに顔を柔らかい表情にして秋の頭を撫でた
「………」
まるで、自分と凪の様だと何故か思った
成実は背を向けて、近くの茶屋に入っていった
―――――――――――――
「え、休暇終了?なんで―――?!」
秋は声を上げた
それはそうだ。休暇で暫く此所に居る、仕事はしない、そう師団長は言っていたのだから
なのにいきなり休暇終了だなんて言われたら誰だって声を上げる
「いや、嫌だ!まだ買い物して無いんだよ!?いや――――!!!!!!」
「いやと言われても、なぁ。皆支度してしまったぞ」
「え――――っ」
「お前のも支度したから出るぞ」
「ううう…」
秋はこの休暇をとても楽しみにしていた。まぁそれはこの落ちこみようを見れば分かる事で…
「何処いくの」
「確か、前田家に用事があるって。何でも竹中様が前田に進軍しているらしい。多分その手助けじゃないか?」
此所からだと近いし、いくら休暇といえど彼らは豊臣の人間なのだから、と頼は考えていた
「ほら、こいつをつけろ」
頼が差し出したのは深紅の外套
それを手に取り、秋はバサリと裾を宙にうかせ袖を通した
「………」
そして頼は、群青色の外套に袖を通した
朱と青
反対色の二つは肩を並べて歩き出した
一歩一歩進むたびに、人の視線を集めるが彼らはそんな視線は気にならなかった
そして道の先に、仲間と黒い外套を羽織った二人にとって大切な人が待っていた
二人は足を速めるわけでも無く、ただ彼らの待つ場所までゆっくり歩いた
それからその場所につくと、何も言葉を交わさず二人は布に包まれた何かを受け取った
そして、布をとる
群青色の外套を着ている頼が持っているのは
―ベレッタ―
深紅の外套を着ている秋が持っているのは
―コルト―
それの銃によく似ていた
それをホルスターの様なものに入れて彼らは歩き出した
《黒衣の死神》率いる部隊が、
竹中半兵衛が
伊達成実が
運命に引き寄せられ
前田家に向かう
その渦中の中にいるのは前田夫婦と、凪と慶次
「利家様!竹中半兵衛の軍が…!!」
既に物語は止められないところまで来た