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浅井が落ちた
その知らせは、前田に合流したすぐあとに耳に入る事となった
そんな、利家は驚愕したが市が豊臣に捕らえられたというのを聴いて奮起した
前田と市様はこの利家が守るぞ!と意気込み、準備のために毎日飛び回っている
そんな中、良くない知らせがまたひとつ飛んできた
「大変です!竹中半兵衛の軍が、こちらに向かって進軍して来ています!!」
斥候のために何人かをその任務に就かせていたが、その悪いニュースと共に帰ってきたのはたったの二人だった
···しかも慢心創痍で、帰ってきていた
さすがにこの状況で慶二ものんびりしている訳も無く、緊張した毎日を送っていた
「利家様、これでえぇでしょうか?だいぶええもん揃えさせてもらいましたけど」
「いや、問題ない。相変わらず卸は良い品物を卸してくれる。例を言うぞ」
「いやいや、それがワシの仕事じゃけ礼は要らんですよ」
利家の前にあるのは、武器だった
「では、これで。戦、負けんでください」
「あぁ」
卸はそう言って、室内から出て行った
残されたのは、利家と三本の武器たち
刃は鋭い光を放ち、刃紋がいきづいていた
利家、まつ、慶二の武器だ
刃は光を放ち、利家は自分の武具を握った
――――――――――――――
屋敷の庭先は秋の色合いを感じさせた
風流な庭先は、この屋敷の主と奥方の雰囲気を表していた
卸は庭先を見ながら廊下を歩く
もうすぐここは戦火があがるだろう。その時この美しさは失われると思うと残念だった
ドンッ!!
といきなり身体に何かが当たった
自分は身動ぎひとつもしなかったが当たったソレは小さな悲鳴を上げて倒れこんだ
「うぅぅ…お尻がいたい…」
「あぁ、お嬢ちゃん大丈夫か?怪我あらへ…」
「うぅぅ…」
「…くと…?」
目の前の少女は昨日取り引きをした上客に似ていた
そっくりと言う訳ではないのだが、何処か似ていた
(他人の空似か)
卸は凪の手を引いて身を起こさせた
卸には凪の体重なんて軽い様で、引っ張るだけで立ち上がる事が出来た
「ありがとうございます―」
へら、と表情を柔らかくして笑う少女にやはり知り合いの影が見えた
「お嬢ちゃんは、ここの姫さん?」
質の良い見たことの無い形の着物を着ていた
「いいえ、私は姫様じゃないですよ。旅人です」
旅人がそんないい品物を着ているとは、卸には思えなかった
商人ならではの勘だった
この少女、北斗と何か関係がある人間ではと推測した
「旅人?こんな良い着物きてるんやから、相当家は大きんやろ?ワシ商人やねん。家紹介してくれたらうれしいなぁ」
「うちは大きくありません。というかまず家は無いですから紹介できません。もう、いいですか?」
「あ、あぁ。ご免ナ。何か用事でもあったん?ぶつかって、更に引き止めて悪ぅな」
「いえ。あの、こちらこそすみませんでした。私も余所見していたから」
ぺこりと凪は頭を下げた
頭を上げて少女は表情を変えた
「北斗!」
その言葉に、卸はハッとする
瞳を大きく見開いて、隣を柔らかな風のように駆け抜けた少女を目で追った
凪は、裸足のまま庭先に降りて北斗!と再び声を出して何か近づいて行った
「――――――」
その様を見て、卸は彼女たちに背を向けた
卸は笑っていた。この笑みは、餌を見つけたケモノの笑みに近いだろう。口端があがり、誰でもこの人物が何かを思っていると考えることができた
「…関係あり、じゃな」
これは、情報として上客に売らねばならんのぅ
確信なんてない。これは商人としての確かな直感だった
死線を潜り生きてきた
頼れる直感だった