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まだ空が明けない時刻から城は動き出す
女中達は昨日の準備の仕上げを行い
主達が食す朝餉の支度をしている
そんな時刻に凪は目を覚ました
ゆっくりと上半身を起こし目を擦り、まだ働かない脳が働き始める迄その体勢でいる
暫くすると脳も動き始め、思考と視界が鮮明になっていく
「…」
それでもやはり眠たいのだが
凪は布団を押し入れに片付け、思考がまだ半分程しかクリアになってないのか寝ぼけたままの着替えた
次に顔を洗い髪を整える
この時代コテやアイロン、ワックスは勿論存在しないので水で濡らして櫛を通し整えるしかない
一通り支度を終えると、襖が開いた
「おはようございます凪様」
「おはようございます」
そろそろこの城の主も起きるだろう
凪は、極稀にだが政宗・成実両名を起こしに行ったりしている
今日は昨夜二人に「起こしに来い」と言われたのでこれから二人を起こしに行かねばならない
「それでは凪様。よろしくお願い致しますね」
女中は柔らかく微笑むと己の業務に戻っていった
まずは成実の部屋から
成実の部屋は凪の部屋から遠くはなく近いと言えば近い位置に有る
廊下を歩いていると霜が降りて居るのが見られた
霜というものを凪はあまり見た事が無かった
こちらの世界は、自分がいた世界には見られないようなものばかりだ
あっちの世界の昔もこんなだったのだろうが、文明の進歩とは恐ろしいものだ
美しい景色と引き換えに進歩して来たのだと思わされた
そんな事を考えていると成実の部屋にたどり着く
襖を軽く叩き、一言掛けた
「成実さーん。起きて下さ―い」
しかし襖の向こうからは人が起き上がる気配は無い
「開けますよ!」
すーっと静かに襖を開ける
成実はすやすやと布団の中で気持ち良さそうに眠っていた
その顔を見ると、起きてる時と違い少し幼く見える
「おきてくださーい」
何もせずにただ言ってみた
が、起きるはずも無く…
仕方なく揺する
「な、る、み、さーん!起きる時間ですよ―!!」
「あと少し…」
「あと少しじゃないです。起きて下さい―」
布団のなかで蠢く成実
「お!き!て!く!だ!さ!い!!!」
「……ぅ」
瞼がゆっくりと上がっていく
「やっと起きましたか?おはようございます」
「あー…おはよう…」
布団からゆっくりと起き上がり、頭を掻くと成実は欠伸をした
「じゃ、私政宗さんの所いくので…」
「おー…」
まだ半分寝ぼけていると凪は思った
しかし起きたなら別にいる理由も無い
次に起こさねばならない人がいるのだ
政宗はきっと起きているが、何せ彼は誰かが起こしに行かなければ起きていても起きないという変わり者
凪は成実の部屋から出ると政宗の部屋に向かった
「政宗さーん!起きて下さい!」
「…………凪か」
政宗は一言掛けたら直ぐに返事が来た
どうやら予測した事が当たっていたらしい
「おはようございます」
「Ah…成実はどうした」
「起こしてきましたよ」
寝ぼけてましたけどね
「さて、支度するか」
「じゃあ私は小十郎さんの所にいきますから…」
「そうか。じゃまた後でな」
「はい」
昼、真田と数名が入城をする
凪は幸村を城の中の物陰からちらっと姿をみた
ゲームの人物そのものであり
キリッとした面立ちで数名の先頭を歩く彼は、武将という雰囲気を出していて本当に破廉恥でござる!と言うのかと疑いたくなった
そんな事を考えていたら幸村が何処を見渡してもいないと気付く
同盟を結ぶまで凪は政宗達が居る部屋に入れない
大切な同盟なのだ
政宗に誘われたが、部外者のましてや人を動かす人間ではないのだからと断りを入れた
「佐助さーん」
「呼んだ?」
取り敢えず暇になったので佐助の名前を呼んでみた
…同盟を組む席に出席しないのか
「忍びは影だからね~。あぁ言うのは旦那とか他の武将の仕事だよ」
「はぁ…そう言うものなんですか」
木の上にいる佐助は下に降りて凪の隣りに来た
「暇なの?」
「はい。暇です」
主だった武将は全て同盟を組む為の謁見に出て居るし、女中も仕事中
話し相手もいないのだ
「じゃあ俺様に付き合わない?旦那の食べる団子買いに行くんだけど」
「行きます!!」
じゃあ行こうか
と佐助と並んで凪は歩く
「甘味好きなんですね真田さんって」
「好きだねぇ。戦の時以外は殆ど毎日食べてるよ」
「毎日…あ。ちょっと待って下さい!」
凪は近くにいた兵に言付けを頼んだ
用事がすんだのか、佐助の元へ走って寄って来た
「さ、いきましょう!!」
「うん。何頼んできたの?」
「成実さんと政宗さんに佐助さんと団子買いにお出かけしてきます、って伝えて貰おうかなって。本当は城を出る時は成実さんがいないと出ちゃ駄目なんですけど…。佐助さんとなら大丈夫だと思うので一人じゃないですよって意味でお願いしたんです」
「一人で出ちゃ駄目?また随分伊達の旦那は過保護だな」
この年頃の子には城の中だけではつまらないだろうに…
凪は、仕方ないですよ。と言った
「最初に街に出た時、ちょっとした事情で成実さん達から離れちゃってそこで…」
ぐっと拳を握る凪
自分の馬鹿な行動が招いたあの時の事をまた思い出してしまう
「…嫌な事が、危険な事があってそれ以来危ないからって駄目なんです。いくら城下町と言えど危ない輩はいるんだって耳にタコが出来るぐらい言われました」
それは私の身を守る為
「特殊な立場ですからそれを狙って敵が私を奪うかもしれないとか考えてなくて、何も私分かってなくて…」
この間成実に言われて実感した
「凪ちゃんは随分好かれてるね」
「そうですか?」
「うん。伊達の旦那達が守るのも何となく分る」
好いてくれているのだろうか
ただ危なっかしいからそうしているだけでは無いのか
凪にはよく分らなかったが
城下町はあの時と賑わいが変わらず、二人は目当ての甘味処を探し歩いた
三軒程有りそのうち二軒の甘味処の団子を購入する
しかし人込みを歩いた為か凪に疲れが見えて来た
それに気付いた佐助は甘味処のイスに座り、凪にも座る様に促した
「付き合ってもらったから奢ってあげるよ?何がいい?」
「いいんですか?なら…あんみつがいいです」
「はいよ。すいませ~ん!あんみつ一つと団子一つ」
「ありがとうございます」
そして二人は注目した品が届く迄他愛ない話しをする
甲斐では何が人気なのだとか
本当に他愛ない話し
でも
何か隣りが淋しかった
他愛ない話しをしても
笑っても
なんだか凪には隣りが淋しく感じた
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