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妬きもちを妬いて

そこまでは良かったのだが、問題はその後…。


着いた矢先に、ルックが軍師殿に呼ばれた。

急遽、会議が開かれる事になり、魔法兵団長のルックも出席せざる逐えなくなったのだ。

途端に、ルックの眉間に深いシワが刻まれるも、立場上、拒否出来なく仕方無しに用を済ませに行く事になった。



ルック『…ごめん。約束しといて…』


申し訳無さそうに謝るルックに、慌てて首を振る。


ティア『ううん。ルックが悪い訳じゃないし、戦争中なんだから仕方が無いよ。だから気にしないで?』


ルック『……ありがとう。でも何時に終るか判らないから、僕の部屋で好きにしてて良いから』


ティア『うん。ありがとう。でも、少しブラブラと散歩して来るよ。それで、現地集合にしよう』


そう答えると、ルックは頷いてくれた。


ティア『仕事、頑張ってね』

応援すると、優しく笑って頭を撫でてくれた。

彼の背を見送り終ると、僕は宛の無い散歩に出た。



――そろそろ散歩にも飽きたな…――。そう思ってきた頃、もう酒場に行っていようと考えた。

ルックが来てるかも知れないし、居なければ待てば良い。


向かった先に、目当ての人が自分を待っていた。

ただそれだけだったら良かったのだが……。


ルックの視線の先――。
3人組の女子が彼と何やら話していた。…彼女達が一方的ではあったが。

内容が聞き取れない。


しかし突然、3人組の一人、ニナが声を張り上げた。

静まり返る酒場。
聞こえなかった会話の内容が、聞こえる様になった。

歩みを止め、様子を窺う事にしてみた。


『――、――――』


『――――、――…』




訊いてしまって後悔した…。

その話の内容に、ショックを受けている自分。

ズキッ…ズキッと痛む胸…。

呼吸すらもままならず、そして耐え切れなくなって、その場を飛び出してしまった。


行き着いた場所は、屋上という何とも定番な場所……。


そして今に至る――……。


現地集合の癖に、現地に向かう事がもう出来ない。

――折角の休みを、一緒に愉しく過ごそうと思っていたのに…。


そう思うと、溜め息しか出てこない…。



ティア(……ルック…。待ってるよね…)


そうは思っても、あの会話を訊いてしまった後ではどうしても顔を合わせられない。


どんな顔をすれば良いのか判らない――。

でもそれだけが理由じゃないとは、ティア自身もちゃんと判っていた…。


“ルックに好意を寄せている女性”


それが一つ。


そして、ルックの放った言葉。


“無駄な事はしたくないんだよ。”



自分は何なのだろう…?と思わずにはいられない衝撃的発言。

元々、ルックは多くは語らない。
故に、今回の事は訊かない限り真相は判らないだろう……。

しかし、訳を訊こうとすれば必ず…感情的になってしまうだろう。


現に、ティアの胸中はドス黒くモヤモヤとしたものが溜まり燻っている――…。

下手をすれば、喧嘩…なんて事にも為り兼ねない。



それが判っているだけに、ティアは焦燥としていた。


ティア(恋人なのにっ…。話し合う事はルックにとっては無駄な事なの……)



キュッ…と、狭まる気管。
息苦しさと切なさで視界が滲み出した正にその時だった――…



「こんな所で何やってんのさ?現地集合は?」


ティア「――っ!」


急に声を掛けられて、驚いて振り返るとソコには恋人の姿が……。



ティア「……るっ……く…」


ルックは、ティアの目の前まで移動すると、驚きで溢れ落ちた泪の雫を親指の腹で拭った…。


ルック「……泣かせたのは僕だね」


辛そうに歪む柳眉。


ティア「…………」


ティアは何も言えず、視線を反らした。
それを肯定と取ったルックは、ティアの細腰に片腕を回し抱き寄せた。
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