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妬きもちを妬いて

メグ「進めるって言うか、面倒事はさっさと終らせた方が良くない?」


ルック「その為だけに浮気しろって?僕と彼が喧嘩しても?」


メグ「“その為”が大事な事かも知れないよ?それに、喧嘩する前提で言ってるけど。喧嘩する前に話し合えば、問題無いとは考えないの??」


ルック「……無駄な事はしたくないんだよ。断りの言葉だけで済むなら、直接本人に逢って言うけど」


メグ「“無駄”とは?話し合う事が?それともデートが?」


普通なら後者を選ぶだろう…。
だが、この時は驚きの色が大きく広がる事になる。



ルック「――両方だよ」


一気に静まり返る酒場。


ニナ「――っ…!」


ナナミ「……ぇ、?」


メグ「………」



思わず漏れたナナミの驚きの声――。

しかし、メグは驚かなかった。まるで判っていたかの様だった。



ルック「ソイツには僕が直接逢う。それでハッキリと断って来るよ」


メグ「それは構わないけど。本当にそれだけで良いの?」


途端に訝しむ翡翠の瞳。


ルック「他にどうしろと?この期に及んでも、まだ浮気を進めるわけ?」


ごもっともな事だ。

メグは首を軽く傾げて見せた。



メグ「浮気したいの?」


ニナ「ちょっと!メグちゃん…っ」


焦るニナ。


ナナミ「えっ?えっ?えっ?;;」


状況を飲み込めないナナミ。


ルック「はあ?


素っ頓狂な声を上げるルック。


一人涼しげに微笑むメグ。

彼女が一体何を考え、何をしようとしてるのか最早、理解不能なルックは只ひたすらにメグと言う名の少女を見詰めるばかり……。


そして最初に口火を切ったのは、やはりメグだった。


メグ「ルック君。気付いて無いでしょ?」


ルック「…?」


ルックが何を?と、問う間も無く、メグが続ける。



メグ「“恋人”って関係は脆いのよ?『好きだ』『愛してる』だけじゃ、伝わらない事もあるって」


メグの言葉を黙って訊き入る態勢になったルック。


メグ「さっき言ったのは本心なんだけど。私、こう見えても、恋する人の味方なのよね。つまりね、ルック君が気付いて無い事も私は気付いてあげれちゃうのよ」


ルック「……」


――【本心】とは、ウンザリしてきたと言うのと、恋路の邪魔する様な事をする事を言っているのだろう。
だがしかし、自分に気付けず、彼女がソレに気付いた……とは、どの様な事なのだろう――…。


ルック「………」


ルックは、余計な横槍を入れず、無言で先を促す。

それが、今自分が為すべき事だと思ったからだ。

その意図を察したメグは、穏やかな口調のまま、先を滑らす…。



メグ「だからどうしても放っておけないのよね。ルック君は何でも一人で決めちゃう傾向にあるけど、それじゃあ、駄目なんだよ」


ルック「…………」


メグ「何の為の恋人なの?話し合いを蔑ろにするって事は、恋人の意思を無視する事を意味するのよ?」


言われた言葉に、沈痛な面持ちになるルック。

メグは諭す様な話し方をし、何かを訴え続けていると、ニナは思った(ナナミは除外)。



ニナ(…メグちゃん…。何だか何時もと雰囲気違う…。そうよね……。3年前を知らない私やナナミちゃんには口を挟む余地なんかないのよね…)


ナナミ(ど…どう言う意味??;;)


各々の反応を示す。



メグ「『何も言わなくても大丈夫』『通じ合ってる』って、思ってる時が一番危険なのよ!」


強い口調で断言。


ルック「……別に…思ってる訳じゃ」


メグ「“無い”とは言い切れないんじゃない?――もし、そう言い切る事が出来るなら、彼が居なくなってるの気付いてる?」


ルック「…は?居ない…?」


言われて初めて気が付いたルックは、慌てて辺りを見渡す。そして――




ルック(……居ない。いつの間に…)


メグ「今、“いつの間に”って思ったでしょ?」


ルック「………;」



指摘され、ルックは押し黙る。
それを見て、メグは呆れ返る。
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