妬きもちを妬いて
好きすぎて、小さな事で妬き持ち妬いて……。
そんなんじゃあ、重すぎるって頭で理解している癖に、抑えられない。
――ねえ…。
こんな僕は、君に愛想を尽かされるんじゃないかって、毎日不安で一杯なんだって知ってた…?
ティア「…………」
同盟軍内の酒場――。
若草色のバンダナを頭に巻き、赤の胴着を身に纏った細身の少年-ティアは、その光景を無言で見詰めていた。
ルック「……何?まだ何かあるの?」
露骨に歪められた石板の番人-ルック。
彼の視線の先には、女子3人組が…。
ナナミ「だ~か~らっ!昨日からお願いしてるじゃんっ!ねえ、お願いっ!!ねっ?ねっ?!」
元気一杯、同盟軍軍主の姉ナナミは、手を顔の前に合わせ必死に頼み込む。
それを冷やかに見下ろすルック。
メグ「私達も、どうしてもって頼まれちゃって…;ちゃんと断ったのよ?」
苦笑を浮かべるメグ。
彼女とは3年前からの付き合いだ。
それ故に、ルックの性格も知っているメグが、こうも困った様に自分に頼み込む。
余程の事だとは思った。
思ったが……。
ルック「答えは同じだよ」
スッパリと切り捨て、強制終了…と思いきや……
ニナ「一度だけって言ってるのにっ!何でそんなに嫌なのォッ?!」
ルック「…っ…;」
腰に手を当て、キレるニナ。
ルックは眉間にシワを寄せた。
メグやナナミが何か言う前に、ニナは続け様に喋る。
ニナ「その子だって、ルック君が好きで好きで仕方がない恋する乙女なんだからねっ?!」
ルック「だk」
ニナ「女子の気持ちは私達が一番良く判るんだもんっ!一生懸命に頼んでくる女の子の頼みを訊かない訳にはいかないじゃないっ!!!」
“だから何?”と続く筈のルックの科白は、被せられたニナの言葉に掻き消されたのだった……。
ルックは、気を取り直しもう一度口を開くが…
ルック「そn」
ニナ「彼女も一回だけで良いって言ってるのよっ?!それで諦めるって!!何て健気なの!!」
ナナミ・メグ「「…………」」
思わず黙るナナミとメグ。
ルック「………;」
二度も発言の邪魔をされ、ニナの勢いに若干、気後れするルック。
気が付けば、普段は煩く賑わっている筈の酒場が静まり返っている…。
注意深く視れば、この4人の様子を窺っている。
ニナ「ねえ、どうして駄目なの??あの子は嘘をつかないのに」
ルック「…………」
急にしおらしくなったニナ。
そんな彼女をジッと見据え、ルックは深く溜め息を溢した。それを見て、メグが漸く話に割って入って来た。
メグ「ルック君の気持ちも判るんだけど。その子ね。何度も頼みに来るのよ」
ナナミ「そうそう!ホント、健気って言うか、一途って言うかよねぇっ!」
ナナミまでも入って来たが、メグはルックからナナミへと顔を向け、一言。
メグ「ナナミちゃんは黙ってて」
キッパリと言い放った。
ニナ・ルック「…………」
ナナミ「……は、いっ…;」
いつもと違う雰囲気を醸し出すメグに、空気を読まないと評判のナナミでさえも、縮こまって返事をする。
それを呆然と見ていたニナやルック。
しかし、メグは直ぐにルックへと向き直る…。
ルック「………;」
…ぶっちゃけ、何を言われるのかと内心焦るルック。
メグ「ルック君が他の子に興味無いって事も判ってるからさ、その子にハッキリ伝えたのよね」
ルック「…何て?」
メグ「“ルック君には恋人が居るのよ”って。間違ってないでしょ?」
ニッコリと穏やかに笑うメグ。
ルック「………」
ルックは思わず口籠る…。
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