腐れ縁
……このまま、時が止まればいいのに――…。
ルック「なぁんて思わないけどね。絶対に。コイツとだけは嫌だ」
眉間にシワ数百倍位の勢いで寄せ、顔を歪ませそうハッキリと断言した。
甘い雰囲気を求める事事態が間違いなのだ。
ルックはベッドから離れ、元座っていた椅子に戻ると、読みかけの本を読み始めた。
そんな時だった。
ドアがゆっくり開き、目立つ金髪がそこから覗いた。
ルック「あった?無糖」
シーナ「だからねぇっつーの」
苦虫を噛み潰した顔でそう答えながら、テーブルの上に人数分のプリンとケーキ、それとクッキーを置いて椅子に腰掛けた。
ルック「ないのか…」
心底残念そうなルックを、シーナは溜め息一つで受け流した。
シーナ「何、ティアの奴寝ちまったのかよ…」
ルック「いつの間にか、ね。あー…無糖じゃないから胸焼けする……」
シーナ「……。折角、リクエストの奴買って来たのによぉ;」
ルック「お腹一杯で眠くなったんじゃない?…つか、僕のリクエストした奴買ってくれないとか…」
シーナ「……。俺達と同い年の癖に、そういうトコはまだまだお子様だよな!」
ニッと笑ったシーナを見ずに、本の文字列を辿るルックは肩を竦めた。
ルック「昔からちっとも変わってないよね。もう少し成長してると………思っても期待してもなかったけど。……あー、無糖が恋しい……」
シーナ「……………。そこまで言わないでいてやれよ;;コイツの味覚からしてお子様だけどよ、中身は少し成長してる筈だって…」
ルック「君、絶対フォローいれる気ないだろ?…あー無糖が」
――バンッ!!!
シーナ「無糖無糖無糖うっさいわっ!!!…お前、さっきから何なんだよっ?!俺が悪いのか!俺なのかっ!?」
テーブルを強く叩き、爆発したシーナにも動じないルックは、優雅に紅茶を飲む。
ルック「無糖無糖言ってたっけ?」
シラを切るルック。
シーナの額には青筋が綺麗に浮かぶ。
シーナ「っ…言ってたわっ!!シラァ切る気かっ?!切る気なのかっ!!!」
ルック「覚えてないんだから仕方ないだろ」
シーナ「その歳でボケんなっ!!さっきからチクチクチクチクッ…俺の精神を攻撃しやがって!!」
ルック「攻撃?してないけど…。僕の攻撃は切り裂く方な」
シーナ「そっちの攻撃じゃねぇわっっっ!!!!!」
ルック「……さっきから何喚いてるのさ…。煩すぎてティアが起きるじゃん」
漸く顔を上げたルックは、シーナへと冷やかな視線を投げた…。
それを受け止めたくはなかったが受ける羽目になったシーナは、頭を抱えた。
シーナ「おまっ…だっ…!だあーーーーっ!!!!」
忌々しげに叫んだシーナ。
ルックは一人、涼しげに紅茶を啜るのだった――。
ルック「てかさ、こんなに騒いでても起きないコイツの神経が凄いよね」
やや呆れ顔のルックの見詰める先を、シーナも追う。
シーナ「……騒がしてんのはお前が原因だけどな。まあ…、コイツの心臓は毛が生えてんだよ。じゃなきゃ、普通は飛び起きんだろ…」
漸く落ち着いたシーナも、呆れながらそう返す。
二人は暫く眠るティアを見詰め、どちらともなく溜め息を吐き出し、一人は読書。もう一人はボンヤリとしてその日を過ごしたのだった――。
開け放たれた窓からは、柔らかく心地好い風が吹き込み、3人の身体を掠めたのだった――。