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腐れ縁

シーナ「お前は?」


そう訊ねると、ルックはカップを口元から離しシーナを見ずに答える。




ルック「無糖のクッキー」


シーナ「ねぇよ。そんなもん



一瞬で終わった会話。

ルックはまた一口紅茶を飲むと…、



ルック「ケーキ、無糖の」


シーナ「だからねぇって。無糖に拘んな。変な区切り方もすんな」


ルック「注文の多い男だね…」


シーナ「お前がな


ティア「………(やっぱり仲良しじゃん…)」


二人のやり取りをボンヤリと見ていたティアは、内心そうごちる。

シーナはややあってからその金髪を掻き、適当に買ってくると言い残し部屋を出て行った。



一方、残っているルックは読み掛けの魔道書を読み始めていた。

ティアはそれを黙って見守っていると、不意にルックと目が合う……。


ティア「…っ!」(ドキッ)

胸が一瞬、高鳴り頬に熱が集まる感覚に戸惑いを感じた。


ルック「――なに?」



柔らかな口調のルックが、ジッと見詰めている。

ティアはユルユルと首を横に振り、何でもない…と小さく呟いた。

ルックは少しだけ見ていたが、直ぐに視線を元の本へと戻してしまう…。


それに少しだけ、寂しさを感じたティアはベッドに倒れる様に横倒った。



ティア(…あ、ルックの匂いがする…)


フワリと香る優しい匂いに、ティアはソッと目を閉じた――。







ルック「…………」


やけに静かで、ルックは顔を上げた。



ルック(……寝てるし)


ベッドの上では、穏やかな寝息をたて眠っているティアがいた。

ルックは呆れながら立ち上がり、ベッドへ近付いた。

ルック「…デザート、いらないのかい?」


そう声を掛けるが、当たり前だが返事は返って来ない。


ルックは深く溜め息を吐き、ティアの靴を脱がせた。そして、布団の中へ入れてあげると、ベッドの縁に浅く腰掛け、ティアの頬を優しい手付きで撫でた。



ルック(…手のかかる奴)


と、悪態を垂れるもその表情は安らぎと穏やかなそのもので、言葉と矛盾を見せた……。

しかし、それを黙認する人がいないが為、ルックの想いに気付く者がいないのだった。
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