腐れ縁
「……………」
石板の守り人は、読んでいた分厚い魔道書から顔を上げ、露骨に嫌そうな顔をした。
「そんなに嫌がらなくても…。なんか傷付くなぁ…」
「…実際、嫌なんだから仕方ないだろ。――で?何しに来たわけ?」
言葉を濁す事もなく、素直に率直に言う守り人に苦笑を浮かべた。
「何しに…って程の事じゃないんだけど。ただ、暇だったから遊びに来たんだよねぇ♪」
「…あっそ。暇人ならさっさと放浪旅にでも行けばいいだろ」
「あー…。ルック酷い。そんなに僕を邪険に扱わなくてもいいじゃん!僕と君の仲なんだからさっ!」
不服に口を尖らせた彼に、守り人-ルックは眉間に皺を寄せキツイ視線を向けた。
ルック「どんな仲だよっ!君とは最悪な縁だけなんだよっ!!」
「えー。最悪な縁ン??なんだよソレェ!」
ケラケラ笑うこの少年に、ルックのこめかみには無数の青筋が浮かび上がる…。
若干、この二人の居る場所の空気が一気に下がった。突然の寒さに、運の悪い無関係の数人の老若男女は身体を震わせていた。
しかし、そんな事にはまっったく興味を示さない二人は続ける。
ルック「っ…!君と関わるとろくな事がないんだよ!分かったらとっとと、僕以外の奴の所に行けっっ!!」
「えー。ルックともっと遊びたいしぃ」
可愛く唇を尖らせ、不服に顔をしかめた。
ルック「君がやっても可愛くないんだよっ!!キモいからやめれっ!」
「……酷すぎ。何もキモいまで言わなくてもいいじゃん!」
ルック「キモいものをキモいって言って何が悪い?!本当の事なんだから仕方ないだろ?」
「そこは少しオブラートに」
ルック「包むものがないんだからしょうがないんだよ。無理難題を言うならさっさと放浪に出ろ」
少年の言葉を最後まで聞かず、先に言い捨ててしまったルックを暫く見詰め。
ややあって、あからさまに溜め息を吐いてこの話に区切りをつけた。
「…まあ、暇なのは事実なんだけど…」
ルック「…何さ?」
さっきとうって変わって、真剣とまではいかないにしろ、纏う雰囲気が一変したのに気付いたルックも、少々態度を変え、先を促した。
「…今はまだ旅に出たくないってゆうか、なんと言いますか…」
言葉を濁している様だが、最初の部分で彼が何を言いたいのかを分かったルックは、呆れた視線を送る。
ルック「…要するに、寂しいんだろ?」
スッパリキッパリがモットーな彼に、少年は目を見開き、赤面した。
「――っ!そっ…、そんなんじゃないやいっ!!!さ、寂しくなんかないんだからっ!!ルックの馬鹿ぁっ!!」
ルック「はあっ?僕が馬鹿だって?馬鹿はティア、君だよ」
少年-ティアはキッと、ルックをきつく睨みつくた。
ティア「僕が馬鹿ならルックも馬鹿だぁっ!」
ルック「何でだよっ?!」
ティア「僕とルックは腐れ縁なのっ!!だからルックも馬鹿なのぉっ!!」
ルック「意味分かんないからっ!何でも腐れ縁で片付けるなっ!馬鹿は君だけで十分なんだよっ!」
ティア「何で僕だけで十分なんだよっ?!ズルいじゃん!」
ルック「…ズルくないし。何でも腐れ縁で片付ける辺りが馬鹿丸出しじゃないか?」
声を静め、いつもの冷たい声色に呆れを含めて言った。ティアは、プクゥ~と頬を膨らませ、恨まがしい視線を送る。
ティア「…ルック。何か冷たくない?」
ルック「別に。気の所為だよ。気にし過ぎるとハゲるのが早くるよ」
ティア「~~っ!!ヤッパ、ルックは馬鹿だぁっ!!」
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