普段通りだから
ルック「…笑うことがいけないのかい?君はさっき“ 何故笑っている”って呟いたろ?」
ルックは顔色一つ変えずに、たった今引っ剥がしたセツナを後ろに投げ、ティアを見詰めながら言った。
後ろの方では投げられたセツナが「 っうがっ!!」と小さな悲鳴を洩らしてから静かになった。
ティア「……別に…何でもない…。少しばかり……考え事をしていたんだ。」
そう言うと、ティアは苦笑した。
ルック「…また昔の事でも思い出したのかい?それとも…ソウルイーターの事かい?」
ティア「…っ…そ、んなんじゃ…ないんだ。気にしないで、くれ…。」
そう言ったティアの表情は明らかに苦痛に歪んでいた。それは…誰が見ても一目瞭然だった。
ルック「そんなにあからさまに“ 辛い”顔をしてたら 誰が見たって嘘だってバレるに決まってるだろ。嘘をつく気があるなら…もう少し演技力をつけるんだね。」
ティア「…っ…」
ルックに、ティアは自身の考えを直に当てられ、その上、真実を突かれてしまい、返す言葉すらなかった。周りに居る人達は、いつもの無口・無表情・無愛想なあのルックがかなり話している事に、かなり驚き、それと同時に、ティアの心情を…僅かながら知り、口を挟む事ができなかった。
ルック「…君一人で何を抱え込んでいるのかも、何を隠そうとしているのかも…そんな事は知らない。僕は知ろうとさえ思わない。」
ティア「…………」
ルック「…君が誰にも心開けないのも、仕方がない事だとは思う事が出来る。…心を開かない君に、色んな奴が手を差し伸べて、君の為に集い、君に全てを託しながらも戦った戦友達に…君はいつまで逃げる?何処まで逃げ続ける?」
ティア「る…っく……」
ルック「怖いか?その紋章が。幾多の人間の魂を喰らう…その呪われし紋章が。逃げ惑う事しかしない君は…何故この戦争に介入した?」
ルックは鋭い瞳でティアを射抜き、続けた。
ルック「…名誉か?英雄と呼ばれたいか?赤月帝国との戦いのみでは足りないのか?…ティア…君は何の為に同盟軍に手を貸した?」
ティア「…っ…ぼ…く…は……」
苦しそうに顔を歪め、拳を握るティアの姿は、周りの人達にどう映っているのか……。
ルックはティアの右手を掴んだ。
ティア「…っ!?」
反射的に手を払いのけようとしたが、ルックは素早くかわし、ティアの右手を力強く握った。