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想いを風に託す

ティア(いっそ、このまま……。大好きなルックと……)


ティア「………」


覚悟を決めた僕は、自然の法則の様に、静かに瞼を閉じた‥‥が――。



ルック「…何考えてるのさ。僕はただ君が具合でも悪いんじゃないかと思って、熱計ろうとしただけなんだけど」


ティア「……ぇ‥?」


その科白に、僕は瞳を見開いた。そこには、驚いた表情のルックが僕を見詰めていた…。


ティア(ま、さか…っ、僕っ……。勘違い…してっ)


気付いて顔が一気に青ざめた。


ティア「…あっ…!」



ティア(バレたっ。バレたっ!バレてしまったっ!!!)


自分の失態に、血の気が失せていくのを感じた…。
嫌な汗まで吹き出て、頭の中は真っ白になる…。



ルック「…まさかとは思うけど…。僕にキスされるとでも思った?」


ティア「‥っ!!!///」


指摘され、今度は顔や全身が羞恥心で熱くなった。
そんな僕を見て、可笑しそうに笑うルック。
恥ずかしくて、僕はルックから顔を反らした…。
けれど、既に僕の目尻には涙が浮かんでいて……。


ティア(もうっ、駄目だっ!今直ぐ消えてしまいたいっ…)


泪の膜が張られた瞳は滲み、視界がボヤけている。

冗談で返せば良かったのに、本命を前にそれが出来なかった……。

ややあって、ルックが僕から少し離れた。


ルック「冗談だよ。ちょっとからかっただけ」


ティア「‥、判ってるしっ…。そんなのっ本気にする訳‥、ないじゃんっ…!」


地面を睨み付けたまま、必死に返答するけど、いつも通りとはいかなかった。
かなり不自然に途切れた。
暫く、ルックは何も云わなかった…。


気不味い沈黙が流れる――。


御互い無言のまま、時間だけが過ぎていく――。



ルック「…悪かったよ」


最初に口を開いたのはルックの方だった。


ティア「――え…?」


恐る恐る顔を上げると、どこか気不味そうに顔を顰めるルックが、視線をぎこちなく彷徨わせていた。


ルック「…さっきは、ごめん。からかったりして…」


一度も目を合わせないで謝るルックの意外な姿に、さっきまでの気落ちしていた気持ちが吹っ飛んだ。


ティア「‥‥ぷっ。ククッ……あははっ!」


…思わず爆笑してしまった。


ルック「!?な、何笑ってっ!!!」


驚き声を上げたルックは、突然笑い出した僕をギョッとした様に見る。


ティア「あははっ!だってさっ!だって…、ルックがっ、あのルックがっ!あはっ、ははっ!!」


ヒィヒィ云いながら腹を抱えた僕に、当然、ルックの額には青筋が浮かんでいて。


ティア「ははっ…?…あっ;;」


気が付いた時には、時既に遅し…。



ドサッ――!



ティア「――っ」



衝撃を背中に受け、息を飲んだ。
対した痛みを感じはしなかったが、あまりの突然の事に理解出来なかった…。

しかし、鼻腔を掠める土の香りと青草の匂い。

世界が反転し、視界一杯に広がるのは端麗な顔をしたルックの顔――。


静かな翡翠の瞳が僕を見下ろしている――…。
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