ザ・バトルッ!!
ムギュッムギュッvV抱き締め合うササライとティアに、道行く人は苦笑を浮かべ、通り過ぎるのだった。
ティア「………(にしても…長時間この状態は流石に恥ずかしいんだけど…)」
ササライには気付かれない様、細心の注意を払いつつ真顔で思う。
だがしかし、恋人関係にある時点で、これはまあ当たり前の触れ合い…。
しかしながら……。
自称、常識人と自負しているティアにとっては、拭いきれない羞恥心があるのもまた事実。
ササ「ティ~アァッvV」
ティア「……………」
ティア(…うん。この状況はね…。何っつーか…。もう少し何か無いんだろうか…)
正直に云えば、この状況に飽きたの一言。
ただ抱き締め合うだけでは物足りず、普通にデートコースがあるだろう…と思ったり。
ティア「あ~のさぁ…。このままココに居るっていうのもどうかと思うんだよね」
そう切り出せば、自分を抱擁し続けていたササライが顔を近付け、首を傾げて見せる。
ササ「うん?…と、いうとつまり??」
ティア「…………」
本気で判っていないんだろうか…と思ってしまう。
しかし、このまま無言で見詰め合っていても埒が明かない。と、いう事で……
ティア「んー…。僕はね?ササライが大好きだからコレはコレで嬉しいけd」
ササ「だったら問題なっしんぐだねっ!」
瞳を輝かせるササライ。
ティア「人の話は最後まで聞け」
輝く瞳も顔も一切に気に留めず、ツッコんだ。
ササ「……………」
一瞬でしゅんとなる。
ティア「僕が言いたいのは、ココで1日を過ごすよりももっと他に無いのかって言いたいんだよ」
早口に言うと、さっきまでのしゅんはそのままに、不思議そうに見詰める二つの瞳…。
ティア「……僕は、君と一緒に過せるのも倖せd」
ササ「ヤッパリ問題ないじゃないかっvV」
ガッ!!
ティア「…聞けよ。マジで」
ササ「………;;」
胸ぐらを掴まれ、真顔で詰め寄るティア。
ティア「まだ最後まで言ってないだろ。何一人で自己解決してんだ、コラ」
ササ「……っ;;」
伊達にゴロツキ供を纏めていた訳じゃないと、妙に納得。
少し落ち着いて欲しいと切実に願うが、恐ろしさで声が出ない…。なので、瞳で語る……。
ササ「~~~~;」
…通じるかは謎。
ティア「…………」
無言で睨み付けてくるティアに、冷や汗が背中を伝う。
ササ「~~~~っ…;」
不安(必死)な眼。
ティア「……。兎に角ね」
はぁ…と小さく溜め息を溢し、胸ぐらを掴んでいた手を離す。
ホッと安堵の息を吐いたササライを視界に捉えつつ、さっきの話題に戻す。
ティア「僕は、君がこうして敵地の中に赴いて、逢いに来てくれたのは凄く嬉しいんだ」
ササ「っ!!」
ティアの言葉にキラキラお目々が輝きに満ちた。
ティア「嬉しいけど」
嫌に強調する。
これには流石の天然記念物並のササライも、大人しく続きを待つ…。
ティア「贅沢は言わないし、思ってもいないから。だけど、せめて散歩に出掛けるとか、食事に行くとか何かあるだろ?」
”ある“前提の会話。
ササライは漸く気付いたらしく、深く頷いた。
ササ「ああ!そういう事だったのかっ!!全くこれっぽっちも頭に無かった…;;」
言ってションボリ……。
その様子に、ティアは頬を掻く。
ティア「……;まあ、別に…ね。責めてる訳じゃないから;」
ササ「…ぅん…;」
ティア「……………;」
中々、元気を取り戻さないササライに、言い過ぎたかも…と妙に焦ってしまう。
ティア「…そういえば、今日は何れ位一緒に居られるの?!;」
不自然に引き攣ってしまった笑顔。ササライは顔を上げ、ティアに柔らかく笑い掛けた。
ティア(…ぁ、機嫌治ったのかな…;)
ササ「移転魔法が使えるから帰りは何時でも大丈夫だよvV」
嬉々と応えるササライを見て、ティアは漸く穏やかに微笑み返した。