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運命を掴むまで

 今日がデイビットの番だった。召喚サークルに立ち、顔ぶれがだいぶ変わってしまったスタッフたちが計器の調整をしているのを見つめる。
 今からデイビットはサーヴァントの召喚を試みる。

 カルデアにおけるサーヴァントの召喚、使役は今の急務であり、損傷の軽い者から順に相棒たるサーヴァントを喚び出すことになっている。本来であればもっと余裕を持った仕事の筈だった。マスターは全48人。その内の優秀者を集めたAチームがすべての任務において優先されることはあれど、さしたる急務ではなかった。
 けれど、カルデアを襲った爆発事件。それがすべてを一変させた。主犯はカルデアの技師であったレフ・ライノール。彼が起こした事件は新たな特異点Fを生み出し、所長であったオルガマリーを殺し、カルデアにグランドオーダーの始まりを告げた。
 人理は一瞬にして焼けてしまったのだ。デイビットにはありありとそのことがわかった。外宇宙の視座が、紛れもない事実として焼け焦げた地球を写していた。

 始まってしまった。デイビットはその予兆を知っていた。だからこそカルデアに在籍していたのだから。
 しかし、この始まりに違和感があった。言い知れない何かの干渉と言うべきか。デイビットが準備として集めていた熱量の使い道が無くなったこともそうであるし、焼かれず沈黙している何かがあると思うはずなのに捉えられない感覚があることもだ。
 デイビットの視座はけして万能でも全能でもないが、余人よりも見落とすものは少ない筈だった。

「ヴォイドさん。計器OKです。召喚お願いします」
「ああ」

 前に残っていたスタッフが後ろに下がっていく。準備が終わったようだ。
 デイビットは外の情報が少ない時点で答えが出ないと感じる疑問について一度頭から取り払った。今は目の前のことに集中しなければいけない。

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公」

 呪文を唱えながら手を翳す。ピクリとも反応しないシステム・フェイトにそうだろうな、と既に決まりきった結末を思いながらもデイビットは儀式を続ける。観測する技術スタッフたちのざわめきが背後で聞こえるが、それは今は関係のないことだった。

「四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 意味がないと知りながらも、それでもデイビットは魔力を術式に流し込んだ。それが最低限怪しまれないためのパフォーマンスであり、もしかしたらと考えるデイビット自身の僅かながらの賭けでもあった。

「――――――Anfangセット」

 ここまで詠唱し、魔力を流しながらも反応しないそれにデイビットは諦めとともに目蓋を閉じようとする。

 しかし。しかしだ。

 何でもない諦観のために閉じられる筈だったその瞳に鋭い光が突き刺さる。予想と反してデイビットの目蓋は網膜の保護のためにその視界を暗くした。

「――――――告げる」

 それでもデイビットは機械的に詠唱を続けた。いや、普段よりは僅かばかり速く口が動いているようにも感じられる。
 本来ならば、何も喚び出せはしないのだ。デイビットはそれを知っていた。
 彼は、天使の遺物によって再構築されたその瞬間から人理に拒絶されている。故に人理の守護者たる英霊が応えることは無いはずだった。

 なのに。それなのに。

 魔力が身体から抜けていく。先程までの術式を回すためのそれではなく、明らかに指向性を持って。
 これは予兆だ。サーヴァントが現れるための前準備だ。
 デイビットの心臓がその鼓動を強くしていく。

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 ああ、本当にこれに応えてくれるものがいるのならば。デイビットは進む召喚の中で思う。
 もしかしたら、孤独ではなくなるのではないだろうか。そう考えてしまう。
 無駄な思考ではある。だが、現状は召喚の術式の真っ最中で既に覚え慣れてしまった詠唱と行動以外にすることもなかった。
 だからだろう。ツラツラと、普段は考えない泡沫が浮かび上がって消えずに燻る。

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――」

 光が弾けた。眼球を覆う皮膚すら貫く光が、一瞬にして収束していく。デイビットはまだ適応しきれていない瞳孔が眩しさに痛むのを気にせず、目を見開いた。
 光の収まった召喚陣の中に立つのは黒い姿。ツルリとした光沢のある素材で出来た全身スーツ、宇宙服にも似ているがそれよりも身体のシルエットがハッキリ出ているもの、それを身に纏った男。
 顔には黒い猫化肉食獣じみた仮面を着けており容貌と表情の判別は不可能で、ただ素肌が見える手足と頭の後頭部から覗く金髪からコーカソイドらしいことが分かった。

「召喚に応じ参上した。オレはサーヴァント・バーサーカー。黒のトラマカスキだ」

 仮面越しのくぐもった声での自己紹介と共に、目が合う。仮面に開いた穴からはアンバーの瞳が覗いていた。
 彼がこの召喚にに応えたサーヴァント。だからなのかデイビットは不思議と他者に対して感じる筈の疎外感を感じることはなかった。思わず指先が震えた。

「応えてくれて、ありがとう。オレは、デイビットだ。デイビット・ゼム・ヴォイド。よろしく、バーサーカー」

 開いた口はいつも通りに動いた。デイビットはそのことに安堵しながら、今日の使える時間にこのバーサーカーのことを入れるためにこの後の予定を考え直す。どうせ召喚出来ないと思って予定を立てていたのだ。
 しかし、そうやって穏やかに挨拶を交わしたデイビットとバーサーカーとは裏腹に観測スタッフたちが俄に騒がしくなった。

『あー、順調に自己紹介は済んだみたいだね?ちょっとそこのサーヴァントの霊器は普通じゃないみたいなんだ、話を聞きたいのだけどこっちに来てもらって良いかな?』

 スピーカーからカルデアの技術顧問であるレオナルド・ダ・ヴィンチの声が響いた。デイビットはその内容に、思わずまじまじと目の前のバーサーカーを見つめてしまう。だが、肉眼で分かる異常はなさそうだった。それに対して、バーサーカーは何の衒いもなく心当たりがある、と呟いた。

「彼らに説明するべきだろう。マスター、君も確認しておくべき内容だ。彼らの説明の際に記憶しておいてくれ」
「わかった。直ぐに管制室に向かおう」

 最低限の疎通でデイビットたちは歩き出す。互いに無言で進む廊下はそれでも不快と言うわけではなく、心地の良い沈黙だった。
 この感覚を知っている。デイビットは、自分のものではない経験の中にそれを見つけ出して知らず胸の内から湧き出る未知の感覚に瞬いた。

「……その感覚は人に近い。覚えておくといい」

 バーサーカーはどうしてかそんなデイビットの異常に気が付いたようで静かにそう告げる。画面の奥のアンバーが少しだけ細められていた。
 まだ彼に自分の存在状況を話してはいないのにまるで知られているような話し方に疑問は抱くものの、その言葉に逆らう気は起きなくてデイビットは素直に頷く。

「記憶しよう」
「ああ」

 また沈黙が降りる。やはりデイビットにとって悪い気分のものではなかった。

「彼処が管制室だ。ここまでのルートは覚えられただろうか」
「問題ない。マスター、この説明後に施設案内を予定しているなら必要がない。オレはすでにこの施設内部を把握している」
「……了解した」

 デイビットは告げられた言葉を咀嚼し、幾つかの懸念を抱くが今のところの様子を鑑みて首を縦に振った。
 真意を問い詰めるにしても今は管制室で待っているダヴィンチたちが優先だ。

「すまない、待たせただろうか」
「いや、迅速な行動ありがとうデイビット。……そして彼が君のサーヴァントだね」

 管制室に入れば、指揮を取るモニターとは別の一角、簡易な休憩スペースの椅子から出迎えたのは現在は所長代理のポストに収まっているロマニ・アーキマンだった。その横にコーヒーを淹れているダヴィンチの姿もある。

「ああ。バーサーカー、紹介は必要か」
「必要ない。それで、オレの異常についてだったな。カルデアは何処まで把握している?」
「おや、バーサーカーなのに随分理性的だね。狂化スキルは低い方ではあったけど」

 取り敢えず席に座りなよ、と促して淹れたばかりのコーヒーを勧めてくれるダヴィンチの言葉に従って二人は腰を下ろす。
 そしてデイビットは貰ったコーヒーにバーサーカーの渡してくれたスティクシュガーを3つほど追加しながら、興味深そうなダヴィンチに説明を促した。

「こちらが把握しているのは君が受肉していることだね。うち、デミサーヴァントはいるけどそういう事例は始めてなんだよね」

 ほらここ、とディスプレイに浮かび上げた霊器グラフのとある箇所を指し示すダヴィンチがバーサーカーの方へと迫る。

「それについては、オレの祭神が関係してくる」

 好奇心に満ちたダヴィンチの視線を受けながらもバーサーカーは淡々とそう告げた。その祭神と言う言葉にロマニが声を上げる。

「そう言えば、君はトラマカスキを名乗っていたっけ。なら、メソアメリカの神官なんだね。どの神に仕えているんだい?」
「オレは黒のテスカトリポカの神官だ。この器はここに召喚されるに当たって、テスカトリポカがとうもろこしを捏ねた」

 テスカトリポカ神。デイビットは僅かに眉を上げた。

「テスカトリポカ神、と言えばアステカの最高神じゃないか! えっ、君の身体って態々そんな神が作ったのかい!?」

 ロマニが驚いたように声を上げるが、この場にいるバーサーカー以外の2人が大凡その反応が間違いではないことを認めていた。神代から神秘が遠く離れた現代において神の痕跡は薄い。その中にあって、人理償却という一大事だとしても態々神話の最高神が手を貸してくるなんて想像だにしないことなのだ。

「マスターの魔術回路はそれほど量がないからな。かかる負担は少ないほうが良いだろう、とテスカトリポカが」

 バーサーカーが何でもないことのように口にする言葉にまたしても管制室の空気が固まった。

「待て。テスカトリポカ神の発案なのか」

 何故神がそこまで気を使っている。デイビットは予想外だと目を見開いた。
 神の行動であるから本質は別かも知れないが、まったく無関係の神がデイビットの負担について考えるなど、どうかしていると思われても仕方のないことだった。

「ああ。そもそも、今回の召喚でもカルデアの電力とマスター自体の魔力に余裕があるのであればテスカトリポカ本神が喚ばれるつもりだった。だが、実際にはその余裕がなかったから、まだ魔力の負担が少ないオレを送り出したわけだ」
「……どういうことだ」

 デイビットはこの時初めて、訳がわからないという人間の言葉を理解した。
 全く何の共通項も接点もない筈なのに、知覚されその心を配られている。普段であれば少し論理を整理すれば世界は分かりやすい構成をしているのに、今回ばかりは全く持って繋がりを把握できなかった。

「……デイビット、君、アステカと何か関わりでもあったのかい?それとも、聖遺物的なものでも持っている?」

 ふむ、と思案げなダヴィンチがデイビットへと向き直る。確かに普通に考えればそうなるだろう質問に、彼は首を横に振った。
 テスカトリポカ神に繋がる要素をデイビットは知覚していない。

「そうだよね。君の登録情報的に、中南米以南とは関わりは薄そうだし……血統的な要因かな?……それにしたって、最高神の恩寵となると要素としては薄すぎるけど」

 ロマニが眉を八の字に下げながら首を傾げていた。ギリシアでもないのに、とぼやく彼が見ているディスプレイにはデイビットの来歴が表示されているようだった。

「悩ませて申し訳ないが、マスターとアステカとの関わりは皆無だ。ただ、テスカトリポカが戦士を好み、今を生きるものの中で一番気に入りの戦士がデイビット・ゼム・ヴォイドであったというだけの話なんだ」
「……それは、なんとも熱烈だねえ。因みに、テスカトリポカ神にとっての戦士の条件はなにかな?」

 バーサーカーの淀ない言葉にしみじみとした声でダヴィンチが頷きながらデイビットを見据える。
 その顔は楽しげではあるが、別の思惑があるようにも見えた。

「色々あるが、一番は諦めないことだ。最期の瞬間まで戦って死ぬこと。テスカトリポカという神に魅入られたものはすべからく戦いの中で生きる」

 それは、このバーサーカーもそうなのだろうか。狂戦士としてのクラスだけで見れば似合いだが、見た目はともかく今のところの彼は理知的で論理性のいきものだった。

「君も?」
「もちろん。オレは目的のために生き、その目的の遂行のために死んだ。諦めず前に進むことをテスカトリポカは戦いと認める。まあ、アイツが一番楽しむのは血の流れる闘争であることは間違いないが」

 ダヴィンチの言葉に頷いたバーサーカーは、胸元に手を当てながら幾度か瞬いてそう告げる。
 彼自身は物理的な闘争や戦争の中にいたというよりは目的達成のための自己との闘いによる戦士の認定なのだろう。
 それにしては装束が闘いのためのそれであるように見受けられるがバーサーカーとして召喚されたためだろうか。デイビットはまた少し彼を見つめた。

「なるほどね。ところで、何だか君の話を聞いていると随分と神に対してフランクな気がするんだけど、アステカってそういう文化なの?」
「いや、普通のメヒコ人は神を敬っている。特にテスカトリポカは神の中の神だからな。意見するだけでも命を懸ける存在だ。だが、ルールに接触しなければ態度はそこまで問題にはならない」
「ルールか。一先ず確認しておくべきだよね、教えてもらえるかい」
「ああ、構わない。だが命に関わるのは、神の決定に意義を申し立てることくらいだろう。信仰者でもないものにそれ以上は求めないよ。機嫌によって生死を分けると言うこともない神だ」
「システムとしての性質が強いのかな。それにしては、デイビットを特別視している気がするけど」

 ルールに関しては記憶しておこう。ロマニとバーサーカーの話を聞きながら、デイビットは情報を整理していく。
 管制室に集まっている面子の話は要点がまとめられており整理するのが楽だった。特に、バーサーカーはそれが顕著だ。

「特別視と言うのはものの見方の問題だな。テスカトリポカは公平だ。彼から見たときにデイビットという男の状態は肩入れに値するとというだけだよ」
「あー、確か別名に……両方の敵ネコク・ヤオトルだったかい?」
「ああ。テスカトリポカは戦士の守護神。戦士であるなら平等に扱われる。それが何者であれ」

 バーサーカーは最後にふとデイビットに視線を移した。仮面の奥のアンバーは揺れることなく見据えてくる。
 それにデイビットは少し落ち着かないような心地になり、視線を外した。それが善くないことだとは自覚していた。

「なるほどねえ。因みに君は神官だけど、カルデアで何か祭祀をしなければいけない、とかある?流石に、うちで人間の心臓を用意とかは出来ないよ」
「別に必要ない。オレとマスターの戦闘を眺めることで満足する」
「それは良かった。そう言えば、君は霊体化出来るかい?肉体が作られているということは一応、生きた人間扱いでもあると思うんだけど」
「令呪を使えば霊体化は可能だが、基本的に出来ないと考えて欲しい。そして、最低限生きるための睡眠と食事は不可欠だ。因みに、この件に関してはオレの滞在費としてカカオやコーヒーなどの趣向品ととうもろこしなどの一部食品をテスカトリポカが納入してくれるようだ」

 いや、それはどういうことだ。思わずデイビットが顔を上げれば周りにいた全員がバーサーカーに視線を向けていた。
 霊体化出来ない云々は、受肉していることから想定されていたがその肉体の維持に関する経費を祭神自らが補填してくれるとは。
 供給網が無くなり、自家生産も本来の稼働スペックに満たないカルデアの現在のことを考えれば有り難い申し出ではあるのだが、それを神の側から提案されることに誰しも驚きが隠せていなかった。

「えっ、えっ? とっても有難いけど……え?」
「あまりの文化の違いにロマン君がバグったね。でも、確かにちょっと衝撃的だ」
「これは伝言なのだが……オレは活動のための最低限を選択する節があるからきちんと食事や娯楽を与えるように、と。そのための必要経費も納入分に含まれているらしい」
「……保護者かな?」

 ダヴィンチが苦笑してなるほど、と呟いた。

「悪神って聞いてたけど印象変わるなあ……」

 未だに呆然としたロマニはそう言いながら、頭を振ってデイビットの方へと顔を向ける。

「デイビット、申し訳ないけどバーサーカーと部屋を同じにしても良いかい?今はまだ掃除に手を回せないから空き部屋がなくて」

 バーサーカーもそれで大丈夫かな、と続けるロマニにデイビットとバーサーカーは揃って頭を動かした。意図せず、同じような挙動だった。

「よかった。後はバーサーカーにいくつかメディカルチェックを受けてもらえば良いかな。確認に付き合ってもらってありがとう、助かったよ」
「メディカルチェックは私が担当するから、少しの間バーサーカーは私と一緒に来てくれ。二十分ほどで終わると思うからデイビッドはその間、部屋にベッドの運び込みをしてもらってもいいかな。Aチームにさせる仕事でもないけど」

 ダヴィンチの言葉に構わない、と頷きながらデイビッドはバーサーカーを見た。相変わらず凪いだ瞳でデイビットたちの様子を見つめている姿に狂化の影は見えない。
 バーサーカーが戻ってくる前にステータスを確認しておこう、とデイビットは新たな予定を組み立てる。すると。

「マスター」

 静かにダヴィンチと会話をしていたバーサーカーが、離れる前に声をかけてくる。
 デイビットが振り返れば、後何分だ、と問いかけられた。やはり知られている。これまでの何気ない言葉の中にその片鱗はあったが明確に指し示された。
 何故知られているのかは後で聞く必要があるが、知られている分には説明の手間が必要ないと言うことでもあった。デイビットは開きかけた口を一度閉じてから残り時間を手短に告げた。

「……2分だ」
「了解した。オレのために1分は残しておいてくれ」

 それだけを告げると突然の時間の話に困惑した顔のダヴィンチを連れたってバーサーカーは医務室の方へと歩いていった。此処まで来るのと同様にその足は慣れた方向に向かうように自然に進んでいく。
 その姿を見つめながら、急速にデイビットの中である仮説が組み立っていった。もしかすると。
 あり得ない、と思ってしまうがそもそもの話デイビットにサーヴァントが喚び出せる事自体が夢のような事実なのだ。であるならば、この出鱈目な仮説にも一定の論理は働く。

「……ドクター、オレも自室に向かわせてもらう」
「あ、うん。ベッドは予備倉庫から持ち出してくれるかい」
「わかった。それじゃあ」

 ベッドの運び込み、それからステータスの確認、そしてバーサーカーとの対話。
 この後のことを考えながらデイビットも管制室を後にした。
 無機質な廊下を進みながら、バーサーカーのことを考える。仮定が事実だとすればあの彼はどのような道筋を辿って神官になっているのだろうか。
 自分よりも圧倒的に人の機微を感じられている姿を思いながら、デイビットは少しだけ眉間を寄せた。

「……急ごう」

 デイビットは何時ものような早歩きで廊下を進んでいった。
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